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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計4⃣9⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第2章:王国編:知識争奪戦とトライアドの崩壊

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33/55

第29話:【開戦】逆転のシンフォニー、幕開け

 タイムリミットまで、残り12時間。

 地下実験室のハッチが凄まじい蒸気と共に開放され、アークの甲板へと新生シスターズが運び出された。


 朝日の下で整列した彼女たちは、以前とは明らかに違う、空間を圧迫するような「重い」マナを纏っている。ヴォルフが肉盛りした武骨なチタン合金の強靭さと、リディアが磨き上げた黄金の超高速演算回路。その継ぎ目には、物理と魔法の融合を象徴する黄金のラインが、彼女たちの心拍――魔性石の鼓動に合わせて血管のように明滅していた。


「……母様、ご心配なく。私たちは今、一つに繋がっています。……父様の音色も、はっきりと聴こえますわ」


 長女チェロが黄金の巨盾を構え、力強く微笑む。私はタクトを握る手が緊張で震えていたが、リディアが背後からそっと私の肩を叩いた。


「自信を持ちなさいよ。私が書いたコードは完璧なんだから」

「……リディア。あんた、たまにはいいこと言うじゃない」

「あら? 今更ですわね。おほほほほほ!」


 その時、地を這うような不吉な咆哮が平原を震わせた。「カオス・ゾーン」の深淵から湧き出した変異体キメラの群れだ。新生シスターズが放つ、あまりに強大で純粋なエネルギーが、エリア内の「不条理な捕食者」たちの飢餓感を刺激したのだ。数千、数万の異形の獣たちが、黒い津波となってアークへと押し寄せる。


「ちょうどいいわ。……新生シスターズ、第一楽章――開始プレリュード!!」


 私のタクトが鋭く空を切り裂いた。


 7人のシスターズが即座にアークの甲板から飛び出し、空中での布陣を開始する。これまでの彼女たちは個の連携だったが、今はAdmin権限の一部を自律行使可能な『交響楽団シンフォニー』だ。


「姉妹たち、私を中心に! フォーメーション・『アルテミシア』、展開!!」


 チェロの号令がMNWマナ・ネットワークを駆け巡る。

 まず中心となるチェロが黄金の重力壁を展開し、そこへ次女オルガが「分解ディスインテグレート」の位相を重ねる。


「……二重重力障壁ダブル・レイヤー、展開! どんな不純物も通しませんわ!!」


 チェロの絶対防御に、オルガの分解能力が組み合わさった「触れるだけで塵に還す盾」。数千のキメラが激突した瞬間、それらは衝撃波を上げる間もなく、霧のように消滅していく。


 魔法陣の余熱もオゾンの匂いも伴わない。ただ「そこに物質が存在するための定義」を物理的にデリートされた結果、魔物の群れは一瞬で無機質な灰へと変わった。


「コルネ(三女)、ユーフィ(五女)、援護射撃を開始してください!」


 チェロの指揮により、前衛組のコルネとユーフィが動く。本来は近接専門の二人だが、リディアの最適化により「魔導熱量カロリー」を高圧縮したブラスターによる遠距離攻撃を習得していた。

 二人は空中で慣性を掌握したまま座標を書き換えるように移動し、腰のブラスターから「加速の予兆ラグ」を一切見せない弾幕を放つ。


「いくよ、ユーフィ。ほらほら、燃えちゃえぇぇ!!」

「オケ、コルテちゃん! あーしも、いっくよぉぉぉおおおおお!!」


 コルネの火炎弾と、ユーフィの真空衝撃波が、オルガの計算による「収束経路」を通ってキメラの群れを長距離から正確に狙い撃つ。一撃。ただの一撃で、空と地を覆っていた魔物の群れが、分子レベルで粉砕され、跡形もなく消滅した。


「……及第点以上かしらね。さあ、本当の『不協和音』の大元を片付けにいくわよ」

「「「イエス、マム!!!」」」





 リディアの言葉を合図に、旗艦『レキシントン』が廃城の深部へと急降下を開始した。


 城の庭でリュウガの黄金に封じられていたセフィラが、カチリ、と目を覚ます。破壊兵器としての優先順位が更新され、真紅の瞳がかつてない輝きを放つ。


「……未登録の、強力なノイズを確認。……最優先消去対象に更新。……管理者(Admin)の奪還を、再開します」


 セフィラが黄金の檻を内側から食い破り、銀の牙を剥く。背後から伸びるアンビリカルケーブルが激しく脈打ち、廃城の動力を限界まで吸い上げる。彼女の周囲数キロメートルに、物理法則を否定する「絶対真空の拒絶領域」が再展開された。


『……全機、突撃しろ。……リディア、ドローン群による全周方位視界攪乱。……ヴォルフ、物理センサーで弱点を特定しろ。……シスターズ、お前たちの『共有知能』で、あいつを凌駕しろ』


 通信越しにリュウガの冷静な指揮が飛ぶ。

 ヴォルフはサイドカー付きの大型バイクに飛び乗り、エンジンの咆哮を上げながらアークから飛び出した。


「待ってろ、セフィラ! 今、そのクソったれな鎖から解き放ってやるからな!!」


 上空ではリディアの私兵ドローン数万機が黒雲のように展開。セフィラが銀の刃を振るい、かつてシスターズを紙屑のように解体した「超高周波振動」を全方位へ放つ。


 ――だが、新生シスターズの陣形は揺るがない。


「……わがままな妹ですわね。お姉様たちが、規律を教えて差し上げますわ!」


 チェロが重力斧を構え、セフィラの超高周波を真正面から受け止めた。ヴォルフが補強したチタンの装甲が火花を散らすが、リディアの防御プログラムが瞬時に応力を分散させる。


「『アルテミシア』、第二楽章! ヴィオラ、クララ、位相相殺を開始ですわ!!」


 セフィラの振動が到達する直前、後衛の二人が放つマナ波形が、0.001秒の遅滞なく「逆相関」を描いて衝突した。破壊の波を、調和の波が物理的に中和し、虚無に帰す。


「……振動の、相殺を確認? ……非論理的。……出力を最大へ。再演算を開始」


 初めてセフィラの瞳に、当惑に似たノイズが走った。

 

「そんな寂しい数式、ボクたちが焼き切ってあげるよ!」

「あはは! もっと元気に遊びなよ、セフィラちゃん!」


 コルネとユーフィが「慣性無視」の突進でセフィラの懐に飛び込む。二人は双剣を振るう一瞬の間に腰のブラスターへ武装を切り替え(スイッチ)、超至近距離からの飽和攻撃を叩き込む。


 セフィラが防御に回った瞬間、影に潜んでいたルーテが「加速空間」をデリートして背後からケーブルの基部を狙う。


「……遅い。……甘えん坊には、お仕置きが必要」


 新生シスターズのMNWは、今や7人分の経験と感覚を瞬時に統合している。セフィラが放った最初の一撃を、7人全員が「自分の経験」として一瞬で学習。セフィラの攻撃パターンを、一体のセフィラ自身が想定する7倍の速度で解析し、対策を練り上げていく。


 前衛、後衛、防御のフォーメーションがコンマ数秒単位で入れ替わり、セフィラの『物理共鳴』を一つの旋律として完全に支配コントロールしていた。


「チェロ、耐えなさい! ルーテ、加速準備!!」


 セフィラが地を蹴り、白銀の閃光となって肉薄する。新生チェロとオルガが黄金の盾を重ねて構え、その衝撃を真正面から受け止めた。


「……重い、ですわ……! でも、今の私たちなら、お父様の言う『交響曲』を奏でられます!!」

「全機、第三楽章へ!! 彼女を……あの寂しい檻から連れ戻しなさい!!」


 私のタクトが導く先、銀の獣と黄金の交響楽団が、ついに真正面から衝突した。


『【解析】エリー様、戦闘の昂ぶりによりヤンデレ指数が「愛の守護神」へと昇華中。……なお、檻の中のリュウガ様は「……エリー、タクトを振る姿が少しだけ、美しくなったな」と無自覚なデッドボール(告白)を投げましたわ(・∀・)』


「リュ、リュック!? 今そんなこと言うタイミングじゃーーー!!(顔真っ赤)」


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