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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計4⃣9⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第2章:王国編:知識争奪戦とトライアドの崩壊

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第28話:【再編】禁忌の改造、シンフォニーの産声

 地下実験室に、重厚な金属音と激しい怒号が響き渡る。


 リュウガが自らを「クサビ」としてセフィラを止めてから、2日半――60時間が経過していた。


「だから言ってるでしょ! このフリルはただの飾りじゃないの! 超高周波振動による摩擦熱を外部へ逃がすための、ナノカーボン製放熱板ヒートシンクよ! 削ったらマッハ超えの加速時にオーバーヒートで娘たちの回路が焼けて死んじゃうわ!!」

「ハッ! そんなペラペラな布切れで何が防げるってんだ! 物理定数が死滅し、ナノマシンが沈黙した領域じゃ、最後に頼れるのは肉厚のチタン合金という質量だけだ! 四の五の言わずに、このフレームに肉盛りさせろ!! 剛性こそが唯一の正義なんだよ!!」


 私とヴォルフは、バラバラになったチェロの素体を挟んで、スパナと溶接機を振り回しながら応戦していた。


 不眠不休の作業。意識は朦朧としているけれど、ぶっちゃけ、この男とは一生分かり合えない気がする。でも、彼が持ち込んだ「物理工学」のデータは、私の魔導回路の脆弱性を恐ろしい精度で補完していく。教団の『奇跡』という名の非効率なバグを、純粋な力学という名の論理ロジックで上書きしていく作業。


 そこへ、背後の重厚なハッチが開き、カイルの先導と共に凛とした空気が流れ込んだ。


「……あら。随分と熱心な『共同作業』ですこと」


 現れたのは、セラフィーナ・アストレイド公爵令嬢だった。


 普段の豪奢なドレスを脱ぎ捨て、動きやすい活動服に身を包んでいても、その場を支配する「格」は別格だ。リディアも、そして豪放なヴォルフでさえも、彼女の姿を見て一瞬で背筋を伸ばした。


 私は作業の手を止め、現状をまくし立てた。教団の暴挙、リディアのドローン部隊の全滅、そしてリュウガが今この瞬間も自分を削って時間を稼いでいることを。


 セーラは静かに、しかし冷徹な眼差しでモニターに映る「塵と化した騎士団」の跡を見つめ、リディアへ視線を向けた。


「リディア様。貴方の組織は、我が公爵領の主権を完全に無視した。……もはや、この地において既存のルールなんてなしよ。宣戦布告と受け取って構わないわ」

「……セーラ、私は……。技術院の暴走を止められなかった。謝罪して済むことではないけれど……」

「ええ、謝罪なんて不要よ。その分、貴方の持つ技術院の極秘コード、すべて無償で提供していただくから。私の領地の代償……その最高の知能で、私の友人と、リュウガ閣下を救いなさい。それが私の『判決』よ」


 セーラの凛とした言葉に、リディアは不器用に、しかし力強く頷いた。


「……ふふ。二人とも、見なさい。技術者なら言葉ではなく、演算で語りなさいな」


 リディアが、徹夜明けとは思えない優雅な動作で、キーボードを叩き始めた。彼女の周囲には、技術院の「極秘コンパイラ」が展開した無数のホログラムウィンドウが浮かび、シスターズの基本OSを驚異的な速度で書き換えていく。魔法発動までの1.2秒のラグを、彼女の論理回路がコンマ数ミリ秒単位までデリートしていく。


「リディア、あんたこそ少しは休みなさいよ。……って、そのプログラム、私の制御核コアと完全に同期してるじゃない。あんた、まさか私の設計を……」

「ええ。貴女の人形への執念、少しだけ尊敬してあげるわ。……だからこそ、私のコンパイラで『完璧な最適化』を施してあげたの。私の記述コードが、ヴォルフの『質量』と貴女の『美学』を繋ぐ架け橋になる。感謝しなさい、お子様令嬢」


 リディアの不器用な、けれど確かな信頼の微笑み。

 三勢力の天才たちの技術が、衝突し合いながらも、かつてない強固な「形」を成していく。


『……波形同期。……物理定数との整合性、99.8%。……いけるぞ、エリー』


 アークの端子から、実体を失いかけているリュウガの声が響く。檻の中でセフィラを抑え込み続けている彼のAdmin権限が、私たちの作業をバックアップしていた。


「リュック……! あと少しよ、今助けにいくから!」

『……ああ。これまでのシスターズは、どちらかと言えば独奏ソロだった。……だが、これからは一つの旋律を共有する「交響楽団シンフォニー」になる。……システム、最終統合を開始しろ』


 リュウガの号令と共に、地下のプレス機が咆哮を上げた。


 アークのデータベースに残された、あの残酷な破壊の10秒前までの記憶。それを、ヴォルフが鍛え上げたチタン合金の「器」に流し込み、リディアのプログラムで強固に束ねる。ナノマシンの即時修復プロセスを物理装甲の結合に限定適用し、セフィラの「分解共鳴」を逆に吸収してエネルギーへ置換する、禁忌のハイブリッド・ビルド。


 装甲に黄金のラインを走らせた娘たちが、一人、また一人と重厚な産声を上げた。

 一体では勝てなくても、新生シスターズなら。五体でセフィラを制圧し、七体揃えば圧倒するはずだ。慣性をデリートし、座標を書き換えるそのステップは、今や物理法則のバグを修正する「世界の理」そのものへと昇華されていた。


「……できた。私たちの、最高傑作の始まりね……」


 私は、隣に立つリディアと初めて視線を合わせて頷いた。


『【解析】暫定同盟:カルテット・エンジニア、人類史上最も不合理で強力なバグ(新生シスターズ)を産み落としました。……父様のタイムリミットまで、あと12時間。……てぇてぇの極致、でございますわ(・∀・)』


 ファーファの実況が、張り詰めた空気を不謹慎に緩める。


『【速報】なお、ヴォルフ氏、徹夜のハイテンションでリディア様の隣で寝落ちし、「リディア様……」と寝言を言った瞬間にセーラ様の冷徹な「つま先」を受けて逮捕されました。……合掌( ゜д゜ )』

「ガハハハ! セーラ様の蹴り、物理的に隙がねえ……! 物理定数が滾るぅぅ!!」

「死になさい、この野蛮人!!」


 ラボ内に爆笑と怒号が響く。リュウガが命を懸けて繋いだ72時間。

 絶望の底で、私たちは最強の武器と、奇妙な連帯感、そして「負けるはずがない」という確信を手に入れていた。


「さあ……反撃の時間よ。リュックを迎えにいって、あの生意気なセフィラを……お尻ぺんぺんしてあげるんだから!!」


 新生シスターズの瞳に、黄金の光が灯る。

 地獄のシンフォニーの、第3楽章がいま始まろうとしていた。


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