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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計4⃣9⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第1章:覚醒編:工房の密室と7つの音色

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第17話:【突破】極光の壁、城門強行

 王都の巨大な城門が、背後で光の塵となって崩壊していく。

 脱出まであと一歩。だが、勝利を確信した私たちの前に、天を裂くような不吉な「音」が響いた。


「……検知。王都上空、超高出力のマナ収束反応。これは……」


 ハンドルを握るリュウガの顔が、初めて驚愕に歪んだ。


「逃げなさい、エリアーナ! それは技術院が禁忌として封印した『次元崩壊弾』よ!」


 リディアの飛行船からも、悲鳴のような通信が混じる。彼女さえも、自軍の上層部がこれほどの狂気を解き放つとは思っていなかったのだ。


 発動までに数十秒ものラグを要し、周囲の大気を無駄に焼き、焦げ付いたオゾンの匂いを数キロ先まで撒き散らす欠陥兵器。だが、その凄まじい「物量」だけは、今の私たちの論理さえも押し潰しかねない圧倒的な暴力となって降り注ぐ。


 上空から降り注ぐのは、光ではなく「無」。

 触れたものすべての存在定義を抹消し、空間ごと虚無へ還す漆黒の弾丸。


「……全Admin権限を、存在保護領域シールドへ回す。エリー、俺から離れるな」


 リュウガが黄金の瞳を限界まで輝かせ、バギーを包む巨大な結界を展開した。


 教団の結界魔法のように光の紋章が明滅することはない。ただ、そこにある物理法則を Adminが「保護プロテクト」という属性で上書きし、虚無の侵食をミリ単位の演算で食い止める、静かなる理論の防壁だ。


「母様、防衛ラインを多重展開しますわ! 姉様方、力を合わせて!」


 六女ヴィオラの叫びに合わせ、シスターズたちがバギーの周囲で円陣を組む。


「『Op. グラビティ・オーバーロード』! 虚無だろうが何だろうが、母様には指一本触れさせませんわ!」


 長女チェロが巨大斧を突き立て、局所重力を限界まで引き上げる。漆黒の弾丸を重力の歪みで無理やり逸らそうとするが、衝撃波だけでバギーが激しく軋む。


「あーしの火属性でも止められないっしょ!? 何なのこれ、熱量さえも吸い込まれてるよぉ!」


 五女ユーフィが悲鳴を上げ、三女コルネが歯を食いしばって大剣を構える。コルネが「慣性無視」の突撃で虚無の余波を切り裂こうとするが、分子運動そのものを停止デリートさせる暗黒の熱波が彼女たちのナノマシン装甲を侵食していく。


「泣き言言わない! 燃え尽きる前にボクたちが焼き切ってやるんだから!」


 だが、代償はあまりにも大きかった。崩壊弾の直撃を受け続け、結界を維持するリュウガの身体に異変が起きる。


「……リュック? ちょっと、あんたの身体、どうしたの……!?」


 私の隣で、リュウガの腕が、肩が、透き通るような光の粒子となって崩れ始めていた。 Admin権限の過負荷オーバーロードにより、この世界における彼の「実体」が維持できなくなっている。Admin権限の過負荷オーバーロードにより、この世界における彼の「実体」が維持できなくなっているのだ。論理が、圧倒的な「不合理な暴力」の前に屈しようとしていた。やばいっ!!


『【警告】Adminデータの消失を確認。……母様、母様! 早く、早くリュウガ様を「上書き」してください! このままでは彼が、ただの電子の藻屑に……!』


 ファーファのスピーカーから、かつてないほど激しいノイズと、悲痛なバグ混じりの叫びが響く。


「嫌よ……そんなの、絶対に嫌!!」


 私は、消えゆくリュウガの身体に、なりふり構わずしがみついた。


「行かないで、リュウガ! 私の隣で、不味そうにコーヒーを飲むのがあんたの仕事でしょ!! 助けなさいよ、Adminなんでしょ!? 私を一人にしないで、このバカぁぁぁ!!」


 私は工具箱から太いジャンパーケーブルを引き抜くと、消えゆく彼の腕と自分の腕に強引に巻きつけた。


「私の心拍バイタルと魔力回路をアンカーにしなさい! あんたの存在定義、私が物理的にハンダ付けしてやるんだから!!」






 私の絶叫に、MNWマナ・ネットワークがかつてない共鳴シンクロを見せた。


「お母様の想い……受信しましたわ。皆様、リンクを最大に! 母様の『愛』という名のパッチを、お父様の回路に直接ねじ込みますわよ!」


 次女オルガの瞳が青く燃え上がり、全シスターズの演算能力が私の「情動」を核にして一つに統合される。それはもはや、既存の物理法則にも魔法プロトコルにも存在しない、不合理が生み出した未知の「最適解」だった。


「四女ルーテ、加速路ロードを固定! 父様のデータを繋ぎ止めます!」

「七女クララ、環境偽装を愛の極光へ変換。……世界一の『てぇてぇ』を、物理的に顕現させますわ」


 魂を削り取るような、私の「正妻の咆哮」。

 その瞬間、私が握りしめていた指揮棒タクトから、七色のマナが溢れ出した。


『【緊急事態】エリー様の不合理な愛の波動が、Adminの論理回路を強制上書き(パッチ)しました! シスターズの波形、完全統合……物理固定シーケンス、開始ですわ!!』


 MNWに、ファーファが描き出す巨大な「【愛】」のアスキーアートが浮かび上がる。

 

「マスターが消えちゃうなんて、あーしが許さないっしょ!」

「お父様を返してください、この泥棒猫(世界)め!」


 シスターズたちが七色のマナを一つに束ね、消えゆくリュウガの存在を、この世界に強引に繋ぎ止める。ナノマシンが原子配列を強制的に固定し、消えかけていたリュウガという「定義」が、エリーの情動というノイズによって物理的に再構築されていく。よ、よかったぁ!!


「……不合理だ。……だが、悪くない」


 消えかけていたリュウガの身体が、再び確かな質量を持って私の腕の中に戻ってくる。


「計算外だ、エリー。……お前の愛が、俺のシステムを再定義した」



 ドォォォォォン!!



 凄まじい衝撃波と共に、バギーは王都の結界を強行突破した。

 背後では、崩壊弾の余波で王都の一部が巨大なクレーターと化し、光の渦に飲み込まれていく。


「やった……やったわ! 私たち、生きてる!」


 私はリュウガの胸に顔を埋めて泣いた。


「「「父様が戻ったぁぁ!! 母様、最高ですわーーー!」」」


 MNWに、娘たちの泣き笑いの声が爆音で響き渡る。

 

 地平線の彼方。リディアは、空中に散ったリュウガのデータの残滓(わずかな光の欠片)を回収し、歪んだ笑みを浮かべて戦場を去った。


 ついに死地を脱した私たちを、静寂が支配する北の荒野が迎え入れる。

 

「……ハァ、ハァ……。もう、本当に死ぬかと思ったわよ……」

「……ああ。だが、これでお前との契約パートナーシップは、物理法則を超えて永続化された。……覚悟しろ、エリー」


『【解析】エリー様、ドサクサに紛れて「あんたの仕事は私の隣にいること」と宣言。実質的なプロポーズ成功おめでとうございます(・∀・)』

「ファーファ……! そのログ、今すぐデリートしてぇぇぇ!! 恥ずか死ぬからぁぁぁああああ!!!」


『無駄ですわ、母様。ファーファからデータをデリートしても、私たちのメインプロセッサに分散保管ミラーリング済みですわ。……「正妻の咆哮」として永久保存完了です』

『あーしもバックアップ取ったっしょ! 父様と母様の愛の誓い、あーしたちのストレージの中にガッツリ刻まれてるよぉ!』

『……削除、不可。……母様、諦めてください。……てぇてぇ、は不滅ですわ』


「あんたたちぃぃ!! まとめて強制フォーマットしてやるから待ってなさいよぉぉ!!」


 冷たい夜風が吹き抜ける、暗闇の荒野。

 私たちは燃え盛る王都を背に、リュウガの温もりを噛み締めながら、果てしない逃避行へと滑り出した。


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