↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥まみれの英雄たち  作者: 時雨
第一部 神童と喪失/第三章 破滅の吹雪と凡人の歩み
PR
34/46

第34話 小さな仕事

 十四歳の秋、北の見張り台へ薪を届ける計画を手伝うことになった。

 去年から調べていた小屋は、村の人たちと兵士が屋根を直してくれた。僕はそこで荷を積み替える順番を考え、帳面に書いた。

 最初の朝、予定していた荷車の一台が壊れた。


「どうする?」


 運搬を任された兵士が僕へ尋ねた。

 僕は慌てて帳面を見た。

 予定通り全部を運ぶのは無理だった。


「まず見張り台の薪を優先して、診療所の分は明日にできるかな」

「明日は雨だぞ」


 兵士が言った。

 僕は地図を広げ、雨でも通れる道を指した。


「こっちなら遠回りだけど、ぬかるみにくい」

「時間がかかる」

「うん。それでも荷車が通れなくなるよりは」


 兵士はしばらく地図を見ていた。


「分かった。村の人にも知らせておく」


 その日は、予定した量の半分しか運べなかった。

 僕は落ち込んだ。

 でも夕方、見張り台から使いが戻り、必要な分は届いたと教えてくれた。


「足りない分は明日でいいそうだ」


 兵士はそう言い、僕の帳面を指した。


「次からは、荷車が一台使えなくなったときの案も書いておけ」

「……うん」

「今日はよく動いた」


 僕はその言葉が嬉しかった。

 仕事を終えると、父さまが倉庫へ来て、その日の輸送記録を見せるように言った。


「予定通りには運べなかったんだろう」

「うん。でも見張り台の必要な分は届いたよ」

「そうか。なぜ予定を変えたかも書いておけ」


 父さまは僕の帳面を長く読み、途中で僕が書き直した箇所に指を止めた。


「失敗した方も消すな」


 そう言うと、何枚かをマルタに写させた。

 僕には、父さまがようやく僕の仕事に興味を持ってくれたように思えた。

 失敗したところもある。運べなかった荷も残っている。

 それでも、明日やることが分かっていた。

 帰り道、ゴードン爺さんが言った。


「坊ちゃん、ずいぶん大きくなられましたな」

「そうかな」

「ええ。前は水を動かすことばかり考えておられた」


 僕は笑った。


「今は荷車を動かすことばっかりだね」


 爺さんも笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。