湯気と水蒸気の境界、赤く滲む刻印と過剰な愛撫
玄関での激しい洗礼を終え、二人はそのまま浴室へと向かった。脱衣所の冷気に震える暇もなく、真名依真の手によって服を一枚ずつ剥ぎ取られていく。熱い湯気が立ち込める脱衣所兼浴室のドアが開くと、白く煙る空間が二人を優しく包み込んだ。
「ん……あっ……いつま、温かい……っ」
藍庭鷗賀は、シャワーから噴き出す温水が床を叩く音を聞きながら、脱衣所の鏡の前に立たされていた。鏡に映る自分の姿——そこには、首筋から鎖骨にかけて痛々しく、しかし鮮烈な赤紫色に腫れ上がった幾重もの咬み痕が刻まれている。シャワーの温水がその傷痕に触れた瞬間、ピリッとした鋭い刺激が走り、鷗賀は小さく身をよじらせた。
「ひぅっ……!? し、しみ……痛いよぉ……っ」
「動くな。冷えた体を急に温めるから血行が良くなって痛むんだ。……だが、それもお前への報いだ」
依真は後ろから彼女の腰をしっかりと抱き寄せ、シャワーヘッドを手に取ると、首筋の痛々しい刻印に向かって優しく、しかし容赦なく温水を浴びせかけた。湯気の中に香る石鹸の匂いと、依真の肌から伝わる熱。彼の指先が、濡れて貼りついた髪の毛を丁寧にかき分け、傷口の周りをなぞるように滑っていく。
「あ……ふぁ……指が……傷口にあたって……っ」
「お前が今日、どれだけ俺を苛立たせたか分かっているのか? 部室でも、グラウンドでも……お前は自分の体がどれほど魅惑的に変化したかを理解していない」
「んぁ……人形……だったのに……?」
「そうだ。元は冷たく無機質だったはずのお前が、今では俺の指一本でこんなに熱を帯び、脈打ち、声を漏らしている。……お前を人間に変えたのは俺だ。だから、お前の血の一滴、皮膚の肉片一つまで俺の所有物なんだよ」
依真の低い声が耳元で響くたびに、鷗賀の心臓は跳ね上がる。彼の指先が、首筋の咬み痕から胸元へ、沸き立つ石鹸の泡とともにゆっくりと滑り降りていく。痛みが熱へと変わり、熱が甘い痺れへと変貌を遂げていく感覚。水蒸気の中で視界が白く濁るように、鷗賀の意識もまた、依真という圧倒的な存在の前に溶け去りそうになっていた。
「いつま……っ、私……もういつまの指がないと……生きていけないよぉ……っ」
「なら、一生離れるな。俺の刻印をその身に刻んだまま、死ぬまで俺の掌の上で狂い続けろ」
シャワーの音が静かに響き続ける浴室で、ふたりの影は濃密な湯気の中に溶け合い、どこまでも深く、解けない結び目を固く結び直していくのだった——。




