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文化祭当日、後夜祭の喧騒と体育館裏の密かな告白

十一月上旬。秋晴れの空の下、盛大に開催された文化祭は熱狂の最高潮を迎え、夕暮れ時とともに後夜祭へと移行していた。


グラウンドの中央には大きなキャンプファイヤーが焚かれ、爆音のJ-POPと全校生徒の歓声が夜空へと溶け込んでいく。誰もが祭りの高揚感に酔いしれ、意中の相手に想いを伝える『後夜祭のジンクス』に心を躍らせていた。


だが、その光眩しい熱狂から遠く離れた場所――校舎の最奥、夜の静寂に沈む体育館の裏手。大きなスチール製の用具倉庫と校舎の壁に挟まれた極小の死角に、二つの影が潜んでいた。


俺――真名依真まな いつまは、後夜祭の有志ダンスステージを終えたばかりの藍庭鷗賀あいにわ おうかの手首を固く掴み、冷たいコンクリートの壁へと力任せに押し付けていた。


「ひゃうんっ……!? ――い、いつま……っ! ダメだよ、後夜祭の最中なのに……っ! すぐそこまでみんなの声が聞こえるよ……っ!」


鷗賀は息を荒らげながら、碧緑色の瞳を焦燥と緊張で揺らしていた。ステージ衣装の薄手のセーラー風衣装からは、鍛え上げられたしなやかな太ももと華奢な肩が露出し、秋の夜風に寒そうに打ち震えている。


だが、彼女が震えている理由は寒さだけではない。すぐ数十メートル先でグラウンドの歓声が響く中、見つかれば一発で大騒ぎになるという極限の背徳感が、彼女の全身の神経を異常なまでに研ぎ澄ませていた。


「お前のその綺麗な足も、躍動する身体も……さっきから全校生徒の男どもが涎を垂らして見つめていたぞ、おうか」


俺の声はどこまでも低く、夜の冷気よりも冷酷に彼女の耳腔を掠めた。俺の手が彼女の短いスカートの裾を無造作に押し上げ、冷え切った太ももの柔らかい肌へと直接触れる。


「んんっ……っ!? ――や、いつま……手、冷たいよ……っ! 違うの、ダンスは部活の先輩に頼まれて断れなくて……っ! 私、誰の視線も嬉しくなんてなかったよ……っ!」


「嘘をつくな。ステージの上で笑顔を振りまいていた癖に。……お前は、誰の許可を得てそんな姿で踊っていたんだ?」


俺は彼女の華奢な腰を掴み寄せる。コンクリートの壁と俺の身体の間に挟まれた彼女は、逃げ場を完全に失い、俺の胸元に顔を埋めるようにして喘ぎ始めた。


「いつま……いつまの許可がなかったから……ずっと怖かったよぅ……っ。探してたんだよ、客席の中で、いつまの顔だけを……っ!」


涙目で縋りついてくる我が小鳥。全校生徒が憧れる走高跳のチャンピオンであり、文化祭のアイドルでもある彼女が、この暗闇の中ではただ俺の所有物として、俺の機嫌を伺うためだけに息をしている。


「後夜祭の終わりに、焚き火の前で告白されたヤツは永遠に結ばれる……そんな下らない都市伝説を信じている連中が、グラウンドで浮かれている。……だが、おうか。お前を永遠に縛る誓いは、そんな綺麗な場所じゃない」


俺は彼女の薄い衣類の隙間から、その首筋へと容赦なく指先を食い込ませ、先日刻んだ歯立ての痕を上から強く圧迫した。


「あぁぁっ……っ! 痛いっ……いつま……っ! でも……私を縛って……っ! いつまの鎖で、もっと強く……っ!」


「お前の告白も、愛も、身体も……この暗闇の死角でしか存在を許さない。一生、俺の陰から抜け出せると思うな」


俺の狂気的な言葉に、鷗賀の身体が歓喜の快感でビクビクと跳ね上がった。彼女の心はすでに、正論や倫理など疾風に吹き飛ばされ、俺の支配下でしか生きられないように作り変えられているのだ。


「うん……っ! 私、光の当たる場所なんていらない……っ! いつまの陰の中で、一生いつまの人形として愛されたい……っ! だから……キスして……後夜祭の音に紛れて、壊れるくらい強く……っ!」


自ら降伏の愛を叫ぶ小鳥の顎を強引に引き上げ、俺はグラウンドから響く後夜祭のカウントダウンと大歓声にかき消されるようにして、彼女の甘く熱い唇を狂暴なまでの独占欲で深く、深く貪り尽くした。


「んむ……っ!? ――ん、はぁ……んぅ……っ! んっ……いつ……ま……っ!」


夜空に打ち上がる文化祭終了のフィナーレの花火。その光がほんの瞬きほどに体育館裏を照らし出した時、そこに映し出されたのは、他人の目を盗んで激しく唇を重ね合い、互いの存在を貪り合う二人の背徳的なシルエットだけだった。



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