七夕の星空と、屋上で交わす永遠の誓い
七月七日、七夕の夜。
昼間の蒸し暑さが少し和らぎ、澄み渡った夏の夜空には、今にもこぼれ落ちそうなほどの満天の星が広がっていた。
放課後の校舎の中庭には、生徒たちがそれぞれの願い事を書いた色とりどりの短冊が笹の葉に結び付けられ、夜風に揺れてサラサラと涼しげな音を立てていた。
「――いつま、こっちこっち!」
誰もいなくなった放課後の校舎で、俺――真名依真の手を引いて階段を駆け上がっていくのは、藍庭鷗賀だった。
今日の彼女は、薄手の中学校制服の夏服姿で、ポニーテールに結んだ黒髪が走るたびに軽やかに揺れていた。
突き当たりの扉の鍵を俺が手慣れた手つきで解除し、重い鉄扉を押して外に出る。
そこは、普段は生徒の立ち入りが禁止されている学校の屋上だった。
「わあぁぁ……すごい……! 星がこんなに近くに見えるよ……!」
フェンスに駆け寄り、夜空を見上げる鷗賀の顔が、月光と星の輝きに照らされて幻想的に浮かび上がる。
夏風が彼女のスカートを優しく揺らし、ほんのりと甘いシャンプーの香りが俺の鼻腔をくすぐった。
「誰も来ない二人だけの特等席だ。どうだ、気に入ったか?」
「うん! すごく綺麗……! いつま、こんな素敵な場所に連れてきてくれてありがとう」
鷗賀は振り返り、碧緑色の瞳を潤ませながら、太陽のような笑みを俺に向けてきた。
「そういえば、いつま。中庭の笹の葉、短冊書いた?」
「俺がそんな乙女チックなことするわけないだろ。願い事なんて、自分の手で叶えればいい」
「もうっ、いつまらしいなぁ……。でもね、私……実は内緒で短冊書いたんだよ?」
そう言って、鷗賀は制服のポケットから一枚の折りたたまれたピンク色の短冊を取り出した。
彼女は恥ずかしそうに頬を茜色に染めながら、小さく息を吐いてその短冊を俺に見せてきた。
そこには、彼女の少し丸っこく愛らしい文字で、はっきりとこう書かれていた。
『ずっとずっと、いつまの隣にいられますように。そして将来、いつまのお嫁さんになれますように―― 鷗賀』
「……お嫁さん、ね」
俺がその文字を低く読み上げると、鷗賀の顔は一瞬で熟したイチゴのように真っ赤になった。
「ひゃうんっ!? 声に出して読まないでよぅ……っ! は、恥ずかしいじゃん……っ!」
短冊を胸元にぎゅっと抱え込み、胸を激しく上下させる鷗賀。
「これね……中庭の笹に結ぶの、恥ずかしくてできなかったの……。だって、こんなのクラスのみんなに見られたら……っ」
「見られなくても関係ない。お前のその願い、笹の葉じゃなくて俺が今すぐ叶えてやる」
俺は彼女の手首を強引に引き寄せ、そのままフェンスへと押し付けた。
「きゃっ……!? ――い、いつま……っ!?」
「逃がさないと言ったろ。お前は俺の檻から逃げられないし、俺もお前を誰にも渡す気はない。……一生な」
俺は冷酷で、だけど底知れぬ愛を込めて彼女の顎を指先で掬い上げると、夏夜の星空の下で、その熟した唇へと深く自分の唇を重ねた。
「んむ……っ!? ――ん、はぁ……んぅ……っ!」
夏の夜風が二人の髪を揺らし、天の川の光が二人を優しく包み込んでいく。
最初は驚いて目を見開いていた鷗賀だったが、すぐに愛おしそうに目を閉じると、背伸びをして俺の首に腕を回し、狂おしいほどの返しのキスを深めてきた。
「んぅ……っ、いつ……ま……っ! 大好き……大好きだよ、いつま……っ!」
「あぁ、知ってるよ。お前の未来も、心も、甘い身体も……全部俺が永久に引き取ってやる」
七夕の星空の下、二人は世界で一番甘く、解けることのない永遠の誓いを交わし続けるのだった。




