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湯けむりの箱根と、浴衣を解く熱い夜

五月のゴールデンウィーク。初夏の青々とした新緑が箱根の山々を鮮やかに彩り、爽やかな風が吹き抜ける季節。俺――真名依真まな いつま藍庭鷗賀あいにわ おうかは、学校や部活の喧騒、そして他人の視線から完全に遮断された、箱根の奥深くに佇む高級温泉旅館にいた。


お互いの両親には「部活のGW強化合宿」と少しの罪悪感とともに嘘の理由を告げ、二人だけで数ヶ月前から入念に計画してきた、初めての秘密の二人旅。

俺が予約したのは、すべての客室に源泉掛け流しの専用露天風呂が併設された、完全なプライベート空間を約束する離れの部屋だった。


「――ふあぁぁ……すごーい! いつま、見て見て! お部屋の中に、本当にお風呂がついてるよ!」


仲居さんに案内されて畳の清々しい匂いが漂う広い和室に足を踏み入れるなり、鷗賀は子供のように碧緑色の瞳を輝かせ、吸い寄せられるようにベランダへと駆け寄っていった。


木枠で整然と囲まれた露天風呂からは、白い湯けむりがゆらゆらと優美に立ち上り、その向こうには夕日に照らされた箱根の雄大な山並みが広がっている。立ち上る硫黄の甘い香りと、樹々のざわめきだけが空間を支配していた。


「静かでいい場所だろ。ここなら、学校の鬱陶しい奴らも、お前に群がる他校の男子どもも誰もいない」

俺は部屋の重い木製ドアを閉めると、カチャリと音を立てて施錠した。


「もうっ、いつまは旅行に来てまでそんなこと言ってるの……? でも……ふふ、本当に二人きりだね」

鷗賀はふと足を止め、照れくさそうに頬をほのかに赤らめながら、俺の顔を上目遣いで覗き込んできた。ポニーテールに結ばれた黒髪が、夕暮れの光を受けて揺れている。


一階の個室食事処で、旬の食材が美しく盛り付けられた豪華な懐石料理を堪能した後、夜の帳がしんしんと降りる頃には、二人は旅館から用意されたお揃いの薄紫色の温泉浴衣に着替えていた。


「……いつま、私、お風呂に入ってくるね。先に入ってていいよ?」

「いや、二人で入るに決まってるだろ」

「えっ……!? い、一緒に入るの……!? いくら客室風呂だからって……っ!」


脱衣所で着物を脱ぎ捨てる前に、鷗賀の顔が熟したイチゴのように真っ赤に染まり上がる。

だが、断る隙すら与えず、俺は彼女の細い手首を掴んで露天風呂のベランダへと連れ出した。


夜風が少し冷たく肌を刺すが、目の前の湯船からは熱い湯気が立ち上り、二人の身体を優しく包み込んでいく。


「ひゃうんっ……! い、いつま……っ! やっぱり恥ずかしいよぅ……っ!」


お湯の中に肩まで逃げるように浸かった鷗賀。

ポニーテールを解いた彼女の黒髪が濡れて首筋に美しく張り付き、温泉の熱のせいで、彼女の白く滑らかな肌は全身が綺麗な桜色へと染まり上がっていた。華奢な鎖骨、そしてお湯の下で揺れる豊かな身体のラインが、湯気越しに妖艶な光を放っている。


「恥ずかしがる必要なんてないだろ。お前の身体は、頭の先から足の爪先まで、全部俺のものなんだからな」


俺はお湯を滑らかに掻き分け、逃げようとする彼女の細い腰を強引に引き寄せると、背後から俺の熱い胸板へと力強く抱き寄せた。


「あぐっ……っ、いつま……っ! お湯の中で抱きつかないで……あつ、熱いよ……っ!」


「お湯が熱いのか? それとも、俺に触られてるお前の身体が熱いのか?」


俺は彼女のうなじに濡れた唇を寄せ、重く熱い吐息を直接滑り込ませた。

お湯の中で、俺の手のひらが彼女のしなやかで引き締まった太もも、そして滑らかなお腹のラインをゆっくりと撫で上げていく。陸上部として鍛え上げられた無駄のない肉体が、温泉の浮力と熱によって異常なほど敏感に蠢いていた。


「んあ……っ!? ――や、いつま……そこ、だめぇ……っ! お湯の中で触られたら、変になっちゃう……っ!」


鷗賀は湯船の木枠を強く握りしめ、背中を俺の胸に強く押し付けたまま、甘く切ない喘ぎ声を箱根の夜空へと漏らした。


「変になっていいんだよ。お前は一生、俺の手から逃げられないんだ。学校でも、陸上のピットでも、こんな旅先の温泉の中でもな」


「んぅ……っ、逃げない……逃げないよぉ……っ! 私の全部……いつまにあげるから……っ!」


俺は彼女の顔を横に向けさせると、湯けむりが舞い散る夜空の下で、その濡れた熟熟の唇へと深く、激しく自分の唇を重ねた。


「んむ……っ!? ――ん、はぁ……んぅ……っ!」


お互いの舌が熱く、濃厚に絡み合い、激しい唾液の音が温泉のせせらぎの音に溶けて消えていく。

鷗賀は俺の首に必死にしがみつき、湯船の中で俺の全身に自分の身体を擦り付けながら、狂おしいほどの情熱でキスを返し始めてきた。


やがて、すっかり身体が温まり、お風呂から上がった後。

部屋の中央に敷かれた二つの布団の上で、俺たちは再び重なり合っていた。


薄い浴衣の帯は容易く解かれ、はだけた胸元から覗く白い肌に、俺は容赦なく自分の痕跡キスマークを刻み込んでいく。


「んあ……っ、いつま……そこに痕がついたら、部活の時にみんなに見られちゃう……っ」

「見られればいい。お前が俺の所有物だってことを、全校生徒に誇示してやるんだ」


「ふふ……っ、ほんとに……いつまのいじわる……。でもね、私……すごく幸せだよ……っ」


鷗賀は潤んだ碧緑色の瞳で俺を見つめ、俺の頬を優しく撫でてきた。


「いつまの愛が激しすぎて……時々壊されそうになるけど……私、いつまにならどうにされてもいい。一生、いつまの檻の中で……いつまだけを愛し続けるって、決めたから……っ」


夜空には満天の星が輝き、箱根の深い山々が静かに二人を見守っていた。

外界のどんな雑音も届かないこの密室で、俺たちは夜が明けるまで、お互いの存在をどこまでも深く、永遠に刻み込み続けるのだった。

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