初任務にて
僕は筆が遅いです。
1話の方は情報量多くなってすいません。
アンモノリスには、誰が引き受けてもいい任務がある。ゲームやアニメで言う”クエストボード”のようなものに、依頼が貼られている。
ある程度の任務を成功させれば指名で依頼がくると言うシステムだ。
手始めに、軽めの依頼を5つほど成功させる。
最初に取り掛かるのは、セクター4-3の下水管を故障に見せかけて破壊する任務だ。
下水管に問題がおこると、必然的にモノリス地方支部の役員が動かざるを得なくなる。
セクター4−3の支部は中程度の規模なので、中央司令部の40%ほどの資料にアクセスできる端末がある。
これを利用してモノリスセクター4−3支部が手薄なうちに少しでも資料の内容を盗み見る予定なのだ。
しかしこの任務は重要性が低い。というのも、モノリスの資料は15%ほどが市民でも閲覧可能であり、中規模の支部に与える情報に極秘のものがあるわけがないためだ。
「はぁ。」
誰もいない電車内で小さく一つため息をつく。
この薄暗くカビ臭い地下都市ではいつもほとんどの時間を乗客のいない電車の中で過ごすことになる。少なくとも、これからは。
腰に大きな刀をかけたまま座るわけにもいかず、渋々座席の上に荷物を置いて電車に揺られている。
この電車は4両編成の小型車両だ。
監視カメラこそあるが、一目はなく、気が滅入る。
『セクター 4−3 セクター 4−3 お降りのお客様は、お忘れ物のないよう ご注意ください』
重い腰を上げ、荷物を取り、電車を降りる。
目標の下水管はこの線路に沿って2kmほど歩くと見えてくる。
下水管を破壊したのち、支給された酸化剤を塗りたくり、酸化による劣化を偽装する。
問題は等間隔に設置された住民の識別装置である。
どうにかして個人の特定を防いだとしても、何者かが入った痕跡まではどうやって消せばいいのか。
いきなりスマートフォンが大きなバイブレーションを一つ。
アンモノリスからの暗号通信である。
耳につけた通信端末を起動する。
ジジッ...
「聞こえていますか、これは任務に関する通信です、あまり不自然な返事はしないように。」
「聞こえています。何か問題が発生しましたか?」
「いいえ。住民識別装置に関することです。」
「なるほど。そちらをあなたがなんとかしていただけるんですか?」
「はい。こちらが通知してからおよそ4分30秒ほど識別装置に誤った情報を書き込みます。
その間は何も心配せずに動いて頂いて構いません。」
「わかった、なるべく早く済まそう。」
心配はいらなかったようだ。簡単な任務、問題一つなく解決させよう。
今後のためにも。
暗いトンネル内を駆けていく。人工惑星を作れるだけあって、技術は優れているものである。
微弱な磁場を利用して少しだけ身体にかかる負担と摩擦を減らす機構により、生身ではあり得ない速度での歩行、および走行が可能になっている。
ただトンネル内を走り続ける味気のない時間も、6分ほどで終わりを告げる。
分厚い壁一枚を挟んだ向こう側には下水管がある。
線路横にある重たい鉄の扉を開けると、とたんに不潔で不健康な排泄物の臭いがしてくる。
ジジッ...
「どうだ?識別装置の妨害はいつ頃できそうだ?」
「す.....かいせ.....が...不安定...が....2時に....かい...しする....」
2時...というと、あと1分42…41…40…
しかし不安定な回線で本当に大丈夫なのか?不安が残る部分もあるが、ここまできてしまってはしかたがない。
信じて行くしかない。
……2時。
ジジッ...
「突入する。」
目の前に広がる大きな下水道のどこを破壊すれば良いだろうか。
真っ先に目に止まったのはおおきなバルブだ。
おそらくここで排出される下水の量を調節しているのだろう。
「それにしても、臭いがひどいな。」
昔から使われ続けてきた信頼のあるプラスチック爆弾を3つほど設置し、かなり離れてから爆破。そして大破したパイプに上から支給品の酸化剤をぶちまけ、少し時間はかかるが酸化を演出。
仕事は終わった。時間も1分ほど余っている。
落ち着いて下水道を出て、帰りの電車を待つ。
驚くほど落ち着きを持って任務を終えることができた。及第点だろう。
ジジッ...
「聞こえていますか?無事、終わりました。問題はありませんか?」
「聞こえている。先ほどはすまなかった通信が不安定だったが、情報伝達は上手く言っていたようで何よりだ。こちらも問題はない。」
「わかりました。これからそちらに戻ります。」
「了解。初めてにしてはいい働きだ。おつかれ。ああ、俺のことはレインと呼んでほしい。基本的に俺が通信でサポートをすることになるから、よろしく頼むぞ、ノクス。」
「ああ、よろしく。」
彼は仕事とプライベートをしっかり切り分けるタイプなのだろう。
彼と話していて、悪い気分にはならなかった。仲間が増えるのはありがたいことだ、任務では頼らせてもらおう。
ガタン ガタン ガタン ガタン
帰りの電車が近づいてくる。
「...」
「...少し、臭いがついたかな。」
静かな電車に乗り込んで、緊張した身体をだらんと座席に任せて眠りに着いた。




