【第2話③】衰弱事件と広場の情報屋
「……病気か何かですか」
「それがな、医者が診ても、はっきりした原因が分からねぇんだとよ。急にげっそり痩せて、ひどい奴は、呼びかけにもまともに反応しなくなる」
背筋が、うっすらと寒くなった。
原因の分かる病気なら、まだ対処のしようがある。怖いのはいつだって、「説明のつかないやつ」だ。
「物盗りとか、そういうのでは」
「財布はそのまま。傷もなし。ただ、中身がすっぽ抜けたみてぇに、ぼーっとしてるんだとよ。倒れてる場所はバラバラだが……なんとなく、街の外側のほうに寄ってる気がする」
傷もない。財布も無事。なのに痩せ細って、起き上がる力さえ残っていない。
まるで、体を動かすための大事な何かだけを、ごっそり抜かれたような話だ。
……考えすぎか。
考えすぎだと、思いたい。
だが、指を折って条件を数えてしまう。若い男。雑用依頼で街の外を歩き回る。医者にかかれない、原因不明の不調。
――全部、俺に当てはまる。
あの立ちくらみと、わけもなく体が重い日。俺はあれを、勇者の力の反動だろうと見当をつけている。だが、その見当を支える証拠は一つもない。そして「若い男ばかり」と聞いた今、無関係だと言い切れる根拠も、一つもない。
「お前向けに、ちょうどいい依頼がある」
「……依頼?」
「大げさに構えんな。正式な討伐じゃねぇ、情報集めだ。街や周辺で聞き込みをして、倒れた連中の共通点やら、変な噂やらを拾ってくる。それだけの簡単な依頼だ」
「……たしかに、内容だけ聞けば簡単ですね。報酬は?」
「四百ゼクク」
「受けます」
即答だった。
戦闘なし。討伐なし。話を聞いて回るだけで、四百ゼクク。銅貨数枚で生きているEランクには破格である。おまけに、調べる対象は、俺自身に降りかかっているかもしれない何かだ。金を受け取りながら自分の命の心配ができる。これほど効率のいい依頼は、そうない。
「お前、こういう時だけ返事が早ぇな」
「生活がかかってるので」
命のほうもかかっているかもしれない件は、黙っておいた。口に出すと、確定しそうな気がしたからだ。
「なら、まずは広場の『メロン』を訪ねな。この街のことなら、あいつが一番の情報通だ。……まあ、タダじゃ教えちゃくれねぇがな」
メロン。
その名前に、俺は思わず顔をしかめた。
「……あいつですか」
「なんだ。まだメロンに財布を削られてんのか」
「腐れ縁、ってやつです。主に、俺の財布と」
この世界に放り込まれたばかりの俺を拾って、ギルドを紹介したのも、あいつだった。情報の精度は信用している。請求は、信用したくない。
それでも、体と命は、削れたら簡単には戻らない。財布の中身なら、日雇いでまた稼ぎ直せばいい。
ゴブリン三体分の報酬を受け取っても、財布は羽のように軽いままだった。俺はそれを握りしめ、中央広場へ足を向けた。
――そこには、情報より先に財布を吸い尽くす情報屋が、待っていた。




