表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち勇者『ああああ』は、今日も誤爆で彼女が増える ~イチャイチャ必須の異世界で、俺の財布だけが死んでいく~  作者: あいうえお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/29

【第8話①】鉄の作戦

 いこい亭への再挑戦には、また数日かかった。


 所持金ゼロでは、のれんをくぐった瞬間に前回の二の舞である。俺は日雇いで最低限の資金を作り、その合間に聞き込みも続けた。


 だが、街で拾える噂は、もう出がらしだった。新しい糸口は、あの藍色ののれんの内側にしかない。


 かくして、どうにか財布を復活させた俺は、夕暮れの表通りに立っていた。


 目の前には、藍色ののれん。『いこい亭』。


 今回の俺には、前回の敗北から導き出した、鉄の作戦がある。


 一、酒は飲まない。

 二、女将と目を合わせない。

 三、選択肢が出たら、考える前に正解を口に出す。


 完璧だ。あの夜と同じ轍は踏まない。


 ……それはそれとして。


「そういえば俺、ここでまだ何も食べてないな」


 前回は酒ばかりで、料理の記憶がほとんどない。だが、のれんの奥からふわりと漂ってくる出汁の香りは、空きっ腹に容赦なく突き刺さってくる。


 調査は、腹ごしらえをしてからでも遅くない。


 俺はのれんをくぐった。からん、と鈴が鳴る。


「あら、いらっしゃい」


 カウンターの内側で、女将キリカが帳面を片手に微笑んだ。


「この前の坊や。よく来たね。てっきり、しばらく顔を見せないかと思ってたよ」


「……どうも」


 目を合わせない。作戦その二である。俺はキリカの手元の帳面のあたりに視線を固定した。


「ふふ。警戒しちゃって。今日は何にするんだい?」


 来た。


 脳内に、運命の選択肢ウィンドウが浮かぶ。


【選択肢】どうする?

  食事を頼む

  情報を聞く

  女の子を紹介してもらう


              女将


 今回は読まない。上から順に目で追ったりしない。下の二つなど、視界にも入れない。


 作戦その三、考える前に正解を叫ぶ!


「食事を頼む!」


「はいよ。いい返事だ」


「酒は結構です」


「あら、つれないねぇ」


 よし。言えた。事故らずに言えた。作戦一と三、同時達成である。


 ウィンドウが、心なしか拍手でもするように、ぱたんと閉じた。俺は今、確実に成長している。


「なら、奥の座敷へどうぞ。……うちの自慢の料理人を、つけてあげるよ」


 キリカはそう言って、障子で仕切られた座敷へと俺を案内した。


 その口元に、何やら含みのある笑みが浮かんでいたことに、この時の俺は気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ