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ぼっち勇者『ああああ』は、今日も誤爆で彼女が増える ~イチャイチャ必須の異世界で、俺の財布だけが死んでいく~  作者: あいうえお


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【第6話③】継続調査費

 翌日は、街外れの孤児院の屋根修理だった。


 報酬は雀の涙だが、目立たないという一点において、俺向きの仕事である。板の合わせ方、釘の打ち方、雨漏りの元の見つけ方。以前、大工の親方の仕事を一度見て覚えた手順だ。


 力任せに済ませれば勇者スペックがバレる。地味に、手順どおり。それが、いちばん目立たない。


 半日かけて屋根を直し終えて降りると、子どもたちに「また猪のお肉、持ってきて!」とせがまれた。


 少し前、山の依頼のついでに、畑を荒らしていた普通の大猪を一頭仕留め、肉が余って置き場に困ったので、何度かここへ分けたことがある。それだけで、俺はどうやら「肉の人」になったらしい。


 帰り際、いちばん小さいのが、木の実と色糸で編んだ小さなお守りを押しつけてきた。断れる目では、なかった。


 石ころの隣に、お守り。


 ……財布は死んでいるのに、金にならないものばかりが、着実に増えていく。



 夕方前、日雇いの精算と中間報告を兼ねて、ギルドへ戻った。


 受付には、黄金鎧のカリンさん。


「あっ、ああああさん! お、お疲れさまです!」


「ギルドマスターに中間報告を」


「ほ、報告! りょ、了解です!」


 カリンさんが中間報告書を受け取った瞬間、その端が、ぼっ、と小さく燃えた。


「だ、大丈夫です! これはその、受付あるあるですので!」


 ないと思う。少なくとも、この受付以外で見たことがない。


 奥から顔を出した親父に、俺は、拾った断片を順番に並べた。


 倒れた場所はバラバラだが、どの被害者も傷はなく、財布は無事であること。倒れる前、妙にぼーっとしていたという目撃談。そして――少なくとも一人は、いこい亭の帰りだったかもしれないという噂。


「――こいつは、普通じゃねぇな」


 親父は机の引き出しから革袋を取り出し、中身をきっちり数えてから、カウンターに置いた。


「四百ゼクク。第一報ぶんの報酬兼、継続調査費だ。経費処理はこっちでやっとく。ただし、依頼は『継続』だ。逃げんなよ?」


「調査費を渡すついでに、逃げ道を塞がないでください」


「がっはっは! いいねぇ、責任感のある男は! なあ、カリン!」


「お、おとーさん!?」



 夕暮れの広場。当然のように、噴水のそばにメロンが復活していた。


「……労働が終わった瞬間に湧いてくるな」


「彼女だからな。……ん? 今日は懐が膨らんでるじゃねぇか」


「たかる気満々の鼻を利かせるな。調査費だ。ギルドから預かった経費だぞ」


「へえ? じゃあ行くか、いこい亭」


 脳内に、いつものウィンドウが浮かんだ。


【選択肢】

 ▶いこい亭

  休む


 今日は、迷わなかった。


 懐に調査費がある。隣にメロンがいる。街で拾える噂は、もう出がらしだ。ならば次は、店の中で聞くしかない。


「……ああ。行こう」


 そう答えた瞬間、ウィンドウの端が、ほんの少しだけ明るくなった気がした。


 ……褒められた、か?


 ウィンドウは何も言わず、なぜか満足げな気配だけ残して、すっ、と閉じた。



 表通りの一角。藍色ののれんに、白く『いこい亭』。軒先の行灯に、ぽつ、ぽつと火が入りはじめる時間。


「ほら行くぞ、ヘタレ。アタシが、入口まで付き合ってやる」


「……ああ」


 俺は懐から、例の油じみた紹介状を取り出した。しわを伸ばし、覚悟を決め、のれんをくぐる。


 からん、と扉の鈴が鳴った。


 汚染値の安全弁と、衰弱事件の噂の出どころ。その両方が、この一枚の布の向こうで待っている。


 ――石橋は、もう叩き終えた。


 あとは、渡るだけだ。

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