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第36話 馬。

6日目。

本人の特技の披露。

まあ、おおよその貴族令嬢の特技と言えば、詩とか楽器とか、刺繍とか?


「さすがに…殿下の前ではご披露できかねます」


椅子を持ち出して、もう足を組んで座って待っていた殿下。

モニカがそう言うのは…どうも特技は剣舞らしい。しかも真剣を使うらしいので、王族の前で剣を抜けない騎士は(まあ、誰でも抜いちゃいけないな)できかねない技だ。


なるほど。


かつて、東洋では…踊り子が剣舞を披露して、高貴な方に切りつけた事件もあった。この子の判断は正しいな。


「それはさすがに無理ですね…」

俺がそう言うと、殿下がむくれた。


「じゃあ、趣味は?なんかないのか?刺繍とか?」

「趣味、ですか?馬に乗ることですかね?」

「馬、か…じゃあ、フリッツ、馬を用意しろ」

相変わらず不機嫌そうに俺に言ってくる殿下。


「げっ、今、ですか?」

「明日、離宮の馬場まで行くか?」


殿下の提案に、モニカが反論している。

「明日は日曜日ですよ?」

「…ちょうどいいだろう。」

「明日は私は用事があって出かける予定なんです!」

「どこにだ?」

「…街に…」

「じゃあ、帰りに寄ればいいだろう?な?フリッツ」

「……」


俺は…長年エリーアス殿下に仕えたが、この方が一人の女の子にこんなに固執するのは初めて見た。喜ばしいこと、だが…。まあ、知っていたけど。ま、いいか。


モニカは身分も申し分ない。知識も度胸も一級品だ。なにより…あの殿下を手なずけてしまわれた。


翌日、押し切られた形で、離宮の馬場に出向いた。

馬番が馬を二頭引き出してくる。

「なんだ?お前も乗るのか?」

俺を見て、殿下がそう言うので…首をかしげることになる。

「?」

殿下はさっさと馬に乗ったモニカの後ろに乗り込んだ。休日なので、二人とも普段着だ。

「しっかりつかまっていてくださいね?」

「ああ。いいぞ」

殿下がモニカに覆いかぶさるようにして両手を彼女の腰に回している。


おいおい。一人でも乗れるくせに…。

しかもモニカ…これがテストだと…思っているかもしれないな?


仕方がないので、フリッツは殿下の護衛のカミルと一緒に馬に乗って後を追う。



***


二人は馬場を抜けて、森に入っていった。

フリッツは見失わないようにカミルに指示して、カミルの腰にしがみつく。


離宮の森だけど、あまり自由にされても困る。


しばらく駆けて、昨年アシルが爆破させた石積みの場所で降りたようだ。

二人が言い合いをしているので、カミルと木陰に潜んで息を殺す。

話の内容までは聞こえないが…痴話げんかかな?


今回の婚約者選びは、王太后陛下の御命令で始まった。事後承諾だった殿下がそれからずっと機嫌が悪いのは知っていた。


殿下の気持ちもわかる。まずは…フルール国内が落ち着くのを待って、外敵を排除したと、女王陛下と王配陛下を塔から出す気だったのだろう。

だが、王太后陛下は、塔にこもってしまったお二人をお許しにならなかった。殿下の戴冠式が終わり次第、あのお二人を南部の別荘に送るつもりらしい。


…国民より、愛しい人を取った。


まあ、王家としては許せない事実だったのだろう。

確かにそれからのブリア国はいろいろと大変だった。でも、乗り越えてきた。

いつも…殿下の脇にはモニカちゃんが寄り添っていたが、それではだめなのだろうか?


あの時、殿下が現場を離れて、モニカちゃんを助けに行ったから?でも、秘密の地下通路は王族しか知らなかったんだし…。


「この地位に、愛など要りません。」


そう言い切った陛下に、返す言葉はなかった。


フリッツは寝転がりながら、木漏れ日に目を細める。



***


最終候補が絞られてきた。結果残ったのは3人。公爵令嬢と侯爵令嬢、伯爵令嬢。なかなかいいバランスだった。ここに、イリアの王女が入るが、王女はまだ8歳。今回は社会勉強のような感じだろう。


リストは王太后陛下にも見せた。

翌朝、エリーアス殿下の執務室で、リストを見せながら、今後の予定の打ち合わせをする。

「…へえ…」

とか返事している殿下はろくにお茶会の名簿も見ていない。…モニカちゃんとの話し合いはだめだったのだろう。


ややこしくしたのは自分だから仕方がないよね。もとより、今回の婚約者選びには興味を示さないし。

「…来週、最終選考のご令嬢方とお茶会の予定です」

「…へえ…」

いや…殿下の予定だけど??そう思ったが我慢する。


「あ、そういえば…まあ、殿下には関係のないことですが、」

と前置きをして、フリッツがニヤリと笑う。ほんの少し意地悪というか…八つ当たり?


「クレーメンス家の次男が、遠縁の子爵家を継ぐことになりまして」

「……それが?」

殿下から、どうでもいい報告をするな、というオーラが出ている。


「その方が、オレリー伯のご令嬢との婚約申請をしておりまして」

「……」


急に立ち上がった殿下が、自室に入ってエリクになって帰ってきた。

「カミル!朝練に行くぞ!」


…ぷぷぷっ、次男坊はドナシアンと言ったか?今日は大変かもな。




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