表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

そこから、彼女は頑張った。嫌がって逃げ出していた勉強も、マナーも、ダンスも社交も。彼女は、コンプレックスだったのだ。父母に対して、己の不出来が。幼い事、母と共に初めて茶会に参加した際、耳にしてしまったのだ。「母親はあんなに完璧なのに、娘ときたら。」幼いガーネットは自分が出来ず、母を辱しめたと思い、それが捻れて「何もしない、出来ない我が儘姫」となってしまっていた。しかし、ビオネッタから聞かされたのは、両親の隠された努力。最初から、完璧はいないと言う言葉。半信半疑だったガーネットだったが、ビオネッタに「明日、一日、我が儘を言わずに、素直に聞いてごらんなさい。その際、“何故”を考えるのです。そして、周りをみてごらんなさい。貴方を見る目が変わりますよ。」


翌日、ガーネットはメイドに起こされた際、「まだ眠いっ!」と、言う言葉を飲みこんで、しぶしぶながら起きて支度をした。食堂に行くと、母がいたが「あら、おはようガーネット。」と、優しい笑顔で迎えてくれた。いつもは「もっと余裕ある行動をっ。」て言うのに。料理も美味しかった。毒味の為、出来たてではないにしろ、いつもより少し温かい。皿が温められているからだと気づいた。いつもは、冷えきってしまって食べれず、つい、間食のおかしばかり食べてしまい、これも母に注意される一つだった。けど、温かいスープを胃に入れると、体がシャキッとするのがわかった。

シャキッとすると、勉強も、いつもより聞く事が出来た。いつもなら、お腹がグーグー鳴って、おやつの事しか考えられなかったが、朝食のおかげで腹が鳴らない。ティータイムのおやつも、少し、ゆっくり食べる事が出来た。すると、午後からのダンスの練習をする時、胸焼けごしなかった。くるりとターンをしても、せりあがってこない。先生に「今日は、美しいターンでしたね。」と誉められた。初めての事だ。「嘘みたいだわ。」庭で散歩するガーネットに付くビオネッタに向かい、彼女は言った。「嘘でしたか?」「…いえ、嘘じゃないわ。」「なら、本当の事ですよ。」「そうね。そうだわ。私、変われるわ。」ガーネットは、清々しい気持ちで華々の合間を歩く。


「けっして、咎めたり注意したりする発言はしないように。」朝、ガーネットが起きる前、ビオネッタは周知していた。ここが、分水嶺。彼女が素晴らしい令嬢になるか、はたまた迷惑千万我が儘令嬢になるか。侯爵、侯爵夫人、各習い事の先生。メイドに執事、庭師に至るまで、けっして、彼女の非を責めてはいけない。聞かせてはいけない。でないと、今より酷くなる。これには、屋敷の人々全てが震えた。()()()()()()()()()()()()()()()からだ。そして、ビオネッタは、仕込んでいた。ガーネットが暴れ、割られた姿見。新しく用意する際、細工をしたのだ。あの夜、ビオネッタは令嬢にあるまじき姿で、ガーネットの部屋に潜んでいた。いくら侯爵邸でも、古い建物だ。()()()()()が全ての部屋に通っていない。そのため、小さなオイルランプが部屋に取り付けられているが、それらもいくつか割られてそのままだった。なので、いつもよりほの暗い。しかも、外は雨が降り、静寂とは言えない夜だったのだ。天が味方した。ガーネットが姿見の前で、己の姿を見ている時、その姿見の真後ろにビオネッタはいた。真っ黒に塗った姿で。そして、「…カラスの羽根よ。」と言った時に、鏡を()()()。そこからは、シナリオ通りといった具合で、彼女が布団で震えている間に、部屋を抜け出したのだ。



「あっというまでしたね。」侯爵夫人は、ハンカチで目尻を押さえる。「ありがとう、我が娘の側仕えになってくれて。」侯爵は、綺麗な革の袋を渡してくれた。「いけません、侯爵様。お給金は既に頂いております。」「いや、これは気持ちだ。受けとってくれ。」なら、断れないかぁ。なんて、表には出さず、申し訳なさそうに受けとる。「ビオネッタ、ありがとう。私、立派なレディになるわ。」出会った時より、少し背が伸び、身体つきも女性らしくなったガーネットは、近頃、社交会だけでなく、街でも囁かれている。『麗しのダリア姫』と。彼女は、ただ、領地を治め、税収だけで生活するだけの慣習を見直し、父と共に奔走した。庭に咲き誇るダリア。彼女は、この花を特産とした。そこから、この土地の気候に見合った新しい作物や、植物を手当たり次第、庭で育て、適した物を農民達と育て増やし、それらを町民と共に商品化したのだ。今や、皆の憧れになったガーネット・ガーデン侯爵令嬢。しかし、それらの功績の影には、ある女性が動いていた。


「ビオネッタ・ドーマン子爵令嬢。お迎えに参りました。」ガーデン侯爵邸の前にやってきたのは、街の商人の馬車。「な、ビオネッタ嬢っ!なぜ、街の商人の馬車に!?我が家の馬車を使いなさい!」ガーデン侯爵は、面食らって言ったが「いえ、侯爵様、()()()()()のです。」そう言って、ビオネッタは挨拶をかわし、馬車に乗り去っていった。「たった二年だったが、彼女が来て、我が家は見違えるほど変わったな。」「えぇ、時代の移り変わりに目を光らす事の重要性も、私、学びましたわ。」この後、数年後の改革時にガーデン侯爵家の人々は、新しい時代へと生き残る事が出来たのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ