⑦
話を膨らましたら、長くなりそうなので無理やり終わらせてます。時間があれば、合間に話を入れていこうかと思っておりますが、あまり、面白くないかな?うーん。悩んでいます。
馬車は、子爵領へと進む。途中、川辺で馬を休ませていた。木陰で休んでいると、「お嬢様。」リクスが、話しかけてきた。「何か?」リクスは、二年ですっかり大人の男性へと成長していた。今や彼の父の大事な右腕として、店を切り盛りしている。「お疲れではありませんか?」「大丈夫です。リクスが巧みに馬車を走らせて下さるので、揺れもありませんし。」リクスは、表情を崩すのを我慢したが、耳が赤くなっているのは、ビオネッタしか知らない。「あ、あの、ドーマン嬢。」「はい。」「…わ、私は」何かいいかけた時、草を踏む音がした。「あれあれ?こんな所に人が。」「お嬢さんもいるじゃないか。」「どうしました?助けがいりますか?」身なりの良い、若い男が三人、近づいてくる。「貴方達はどなた?」立ち上がり、聞いてみる。「いえね、街から遠乗りにきたのです。」「馬に水を飲まそうとこちらにきたら。」「お嬢さんに男が言い寄っていたので、声をかけたんですよ。」三人はニヤニヤと下卑た顔をしている。「…!」何か言おうとしたリクスを後ろ手に止める。例え相手が貴族でなかろうと、リクスが反論すると後で何があるか判らない。すっくと立ち上がると「いえ、お気遣い無く。私と彼は、公認の仲。助けも何も要らなくてよ。」身分を明かさない奴らに、あえて上の立場のように振る舞った。リーダー格だろうか、ごつい男が鼻の上に皺を寄せ、「…どこのご令嬢か存じませんが、いっかいの商人ごときと戯れるのはおよしなさい。私達が、きちんとエスコートいたしますよ。」「ええ、私達は貴族の方々と交流がありますから。」「田舎くさい商人とは離れて、さあ。」ニヤニヤと笑いながら近づく男ども。ビオネッタは、内心、ニヤリとした。こいつらは、貴族ではない。
馬車は、子爵領に入る。変わらぬ町並み。子爵邸の前で馬車が止まり、ビオネッタはリクスに手を取ってもらい、馬車を降りた。「…やれやれ、我が家のわがまま姫は、二年経っても変わらずかい?」出迎えた父が、呆れたように笑う。「あら、しっかりと学んできましたわ。」心外とばかりに、ビオネッタは胸を張る。「それと、バール商会の支店を我が領に置きたいのですが、よろしくて?」ビオネッタは、支えられていた手を離さずに、彼を父の前に連れ出す。「君は…。」「バール商会、バール・ウッドの息子、リクス・ウッドです。」リクスは、礼儀正しく、頭を下げる。「…。なるほどねぇ。」父は、もう判っていた。「やれやれ、仕方ないなぁ。」「ちゃんとお仕事はしますわよ?」「分かっているよ。ビオネッタは、先手を打つのが上手いんだから。」
皆が寝静まる、夜も深くなった頃。真っ暗な闇の中、ある夫婦の会話である。
「全く、君には敵わないよ…。」荒い息を吐きながら、男性は白旗を上げる。「この暗闇で、どうしてこんな機敏に動けるのか。」クスリと笑う女性の声。「あら、もう諦めてしまうのですか?私からは、ハッキリ見えてますのよ?」男性の耳元で、女性の声がかする。「もう!からかわないでって。」「うふふ、だって、もっと困らせたいんですもの。」まるで、男女の睦み事のようである。が、実際は違った。真っ暗な何もないレンガ造りの離れ。男性は、ナイフを両手に、気配を殺し、息を潜める相手に振り下ろす。が、それは空振りに終わる。「ビオネッタ、降参だ。」ガラガラと、明かり取りの窓を閉めていた木戸を開ける音がした。戸に手をかけているのは、“真っ暗”に塗られたビオネッタ。「…早く着て。」ナイフをしまい、マントを手渡してくるリクスは、いつも顔を赤らめる。知っているくせに。「ちゃんと着ているわ。」「駄目だよ。身体の線があらわじゃないかっ。」そう言ってビオネッタの身体をマントで包むと、ひょいと抱き上げ離れを出る。ビオネッタの至福の時であった。
どこかにある、静かな街。通りすぎるだけの小さな領地。けれど、どの時代、いつの時代においても、その街はあった。どこかに侵略される事も、略奪される事もなく、街は存在していた。それだけだ。




