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1人目は、8歳。幼少教育の集まりで出会い、親同士の条件がよく、話がまとまった。

しかし、「(わたくし)、チビは嫌い。」の一言で破談した。相手が泣いて泣いて嫌がった。子が幼く、正式に決まる前だった為、賠償などもなく縁談話は立ち消えた。

2人目は10歳。嫌々ながら通ったダンス教室に、ある日、年若い教師がいた。この教室の息子で、都会で最先端のダンスを学んでいた。ダンス教室を継ぐ為に、親と共に教師側に立って手を取り、リードをする姿に思春期のガーネットは見惚れた。彼を気に入ったガーネットは、父に頼んだ。一般市民ではあるが、教養も礼儀もある将来有望な人物だ。一度、爵位のある家に養子として入り、そこから婚約を結ぶという手筈になっていた。しかし、直前に彼らは一族郎党、街から姿を消した。慌てた侯爵は直ぐ様、領土の各街の憲兵達に通達したが、判ったのは、最後に目撃されたのが隣国へ向かう関所だったという事。

3人目、12歳。昨年の始め、さすがにこのままではまずいと、侯爵婦人は今まで以上にお茶会、ダンスパーティー、狩猟の会等、出席出来る催しには手当たり次第に出た。ガーネットも、母親の静かな沸き上がる怒りを感じ、言いたい事を我慢し(本人曰く)態度を改め(本人曰く)努めたが、結果は散々。声を掛けてくるのは、後ろ暗いところがある者ばかり。そんな中で、出自も、学歴、素行もまずまずといった者がいて、これなら文句もないだろうと婚約に向けて動きだした折り、隠し子が発覚。当時18歳の青年は、すでに2児の父親で、母親は1人ではなかった。これは、相手の両親も知らなかった事で、貴族の中ではちょっとしたニュースになった。


「初手が悪かったですね。」容赦なく、どストレートに言われてガーネットは返す言葉もなかった。

「本日は、そんなガーネット様に歴史を学んで頂きます。」ビオネッタは、差し棒を手に、テーブルいっぱいに地図を広げ「さて、我が国はどこでしょう、ガーネット様?」「…ここよ。それぐらい解るわよ。」むっつりと、不機嫌この上なく答える。「はい、正解です。では、隣の国の建国にいたった経緯については?」「?建国年じゃなくて?」「はい。」ガーネットは首をかしげた。他国について建国年や、歴代の王名は、完璧とは言えないが幾つか知っている。しかし、他の国の建国の成り立ち…。「解らないわ。」ガーネットは素直に答えた。「はい、素直でよろしい。」ビオネッタは一枚の羊皮紙を広げ、ガーネットに見せる。「これは、我が国とは異なる言語で書かれています。」確かに、馴染みのない文字である。「そして、こちらの国が()()()()()()()()()()()()()記載されているのです。」地図上にある、我が国から幾つか国境を跨いだ先の国を指差しながらビオネッタは説明する。「ふーん?」ガーネットはあまり興味が持てず、髪をくるくる指に巻き付けながら話を聞いた。

「今から130年前、1人の女がいました…」身分は高く、美しく、誰もが憧れ、そして畏敬した女性がいた。彼女は、時の皇太子妃で作法、政治、軍事。あらゆる事に秀でていた。しかし、彼女の才を、妬み、恨み、陥れた者がいた。彼女の夫、皇太子その人である。彼女は、己の才を自負していた。そして、才を振るう事が国の為、ひいては皇太子の為と疑わなかった。だからこそ、才なき者の心が解らず、知らず知らず追い詰めてしまっていた。ある夜、彼女は毒を盛られて死んだ。信頼し、愛していたはずの夫によって。その結果、王家は国民からの信用を失くし、クーデターがおき、瓦解。王、王妃、皇太子はどうなったのか誰も知らないまま、新たな国として再出発した。

「それがなによ。」「まぁ、次の話です。」ビオネッタは、海を跨いだ先の島国を差す。古き時代、その国は、女性が治めていた。女王である。彼女は、美しく、聡明で、()()()()()()()()()()()()()彼女は、近隣諸国の重役にあたる男達を手玉にとり、国を中から潰させて支配する領土を広げていく。この世の全てが我が為にある。そんな言葉を残している。しかし、月日は残酷に訪れる。彼女は、己の美貌と若さの為に、国の若く美しいと評判の娘を捕まえ、処刑しだした。もはや、側近すら彼女を見限り、彼女は火ダルマとなって、石畳を歩き、群衆の冷ややかな目に見送られ、灰になった。

「…だからなによ。」「まぁまぁ、次の国です。」大きな砂漠地帯を抜けた国を指す。この国は、歴史が長い。300年以上国としてある。が、その統治者は、時代と共に変わった。ある時代の王は、街へお忍びで出掛け、1人の娘に会う。己と対等に話し、屈託なく笑い、腹の中を探るような会話をしない娘を、王は気に入り宮廷に呼んだ。娘の家族は、王から沢山の支度金を貰い、喜んで娘を差し出した。

娘は、あくまでも街の娘であった。作法も知識も何もない。教えようとしても、根本的な価値観が違う。しかし、王は常に娘を横に置き、彼女の意見を聞く。瞬く間に国は荒廃し、国庫は枯れ、王も娘も、何が悪かったのか解らぬまま、はねられた。なお、娘の家族も大金を手にした後、皆殺しにあっている。

「…で、何がいいたいのよ。」「おや、何も思いませんか。」

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