第12話 レオちゃん
ポムの言う「ぴったりの冒険者」とは、灰かぶりの指名手配犯を本格的に追うためにギルド長が呼び寄せていた冒険者のことだった。
情報ギルドに専属で雇われていて、所在や素行、資産や身元を調査することに長けているという。
諸々の手続きのために冒険者ギルドを訪れていたところを、ティナが灰かぶりの男を絨毯で巻いて連れてきたことで予定が空いたらしい。
「ということで紹介しますねぇ。こちらはぁ、人探しの上手い冒険者のレオちゃんですぅ!」
じゃじゃーん! という効果音付きでポムから紹介された冒険者を、ティナとポーラは少しばかり唖然とした気持ちで見上げた。
というのも、小柄なティナたちに対してその冒険者はとても背が高かったうえに、真っ赤で真っ黒で真紫でゴールドでチカチカしていたからだ。
「ハァーイ! レオちゃんって呼んでねえ!」
真っ赤な魔物のレザーでできたドレスを身にまとい、腰には黒い革に金の箔押しとダイヤが眩しいベルト。
すらりとした足を支えるのは、真っ黒なレザーのロングブーツ。
そのヒールは家具の猫足のように曲線を描き、どう見ても十センチ以上はあって、二メートル近くある〝レオちゃん〟の身長にさらに高さを足していた。
真っ赤なレザーのドレスの上から紫色の毛皮のコートを羽織り、黒髪をくるくるとまとめて後頭部より少し上のほうで結ってある。
そのまとめ髪から棒状のアクセサリーがキラキラといくつも突き出ていて、まるで後光が差しているかのようだ。
冒険者として武器を扱うからか爪は短いが、金色に塗られてその上から何か模様が描いてある。綺麗だがこちらも目に眩しい。
ピアスやネックレス、バングルも金と赤で統一されてギラギラしている。
真っ赤なルージュと紫色のアイライン、長いまつ毛は貴婦人の扇子のようにバサバサと風を発生させ、胸やけがしそうな濃さだった。
「ど、どうも、ティナです」
「話は聞いてるわあ! そっちの子はポーラちゃんね!」
ティナがぺこりとお辞儀をすると、レオの長いまつ毛が瞬いた。かと思ったら、バチコーンッ! と音が出そうなほど豪快にウィンクをされ、名前を呼ばれたポーラが一瞬よろめいた。
まつ毛からでっかい星が飛んできてポーラの胸にぶつかって落ちた幻覚が見えたティナは、ごしごしと目をこすってからもう一度レオという名の派手な冒険者を眺めた。
「ポムちゃんから話は聞いたわ。大変だったわねえ……」
筋肉で盛り上がった腕を組んでため息まじりに言うレオの出で立ちに、ティナはなるほどさすがポムの知り合いだと納得しながらうなずいた。
圧が、すごい。
そそり立つ壁に対峙しているかのようだ。
「私も男だけど、そいつの心理は全然わからないわあ。被害妄想と支配欲の塊で、ギャンブル依存症のクズじゃない。顔面にパンチしたくなっちゃうわよねえ」
「あれ⁈ え? レオちゃん男性なの?」
背も高いし声も低いが、整った顔立ちとその装いに加え、所作が女性のものだったからてっきり女性だと思っていたティナは、同じように勘違いしていたらしいポーラと一緒に目を見開いた。
「そうよお。こう見えてBランク冒険者の男の子よ! 身辺調査が得意だけど、実は弁護士資格もあるの。だからどちらかといえば、魔物よりも人間をぶっ飛ばすタイプの冒険者! だから今回の依頼は得意分野よ。力になれるわ、期待してて!」
きゅっと胸筋の谷間を強調しつつ言うレオに、ティナとポーラは言葉以上の力強さを覚えて「よろしく」とうなずいた。




