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【コミカライズ】モラハラダンジョンをぶっ壊す! ~凄腕冒険者ティナは地獄の義実家から兄嫁を救う  作者: 万丸うさこ
2章

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第11話 〝あの頃のポーラ〟

 ポーラの家にあった赤地に青の幾何学模様(きかがくもよう)が美しい絨毯で灰かぶりの指名手配犯を巻いて、身動きができないようにして冒険者ギルドに持ち込んだ。


 道中はポーラを連れてあたりを警戒しつつ進んだが、灰かぶりの男以外の借金取りの襲撃も、モーリス本人と出くわすこともなくギルドに着いた。


「ついさっき依頼を受けたばっかりでもう戻ってきたりとかぁ、ポーラさんの護衛任務で指名手配犯確保とかぁ、何があったのかわからないですけどぉ」


 ギルドから配布される伝書鳩型魔道具で事前に連絡していたおかげで、指名手配犯の引き渡しと手続はとてもスムーズだった。

 あきれたように笑うポムの書類さばきもまた素早い。書類にハンコを捺す手つきは流れるように優雅で速かった。


「でもナイスですぅ! これでギルド長もご機嫌そこのけですぅ」


 にこにこ笑顔ででダンッと最後のハンコを捺して、ポムが親指を立ててみせる。

 ティナはそれに同じくサムズアップで応えたあとにポムへ、「相談があるんだけど」と言って居住まいを正した。


 絨毯に巻いてアスパラの肉巻き状態にした灰かぶりの男をここまで運んでくる道中に、ティナとポーラはモーリスの居場所を突き止め、こちらから話をつけに行くことを共通の意思として確認し合った。

 そして冒険者ギルドから誰か所在調査に強い冒険者を紹介してもらうため、ポムに相談するのが一番いいだろうというのも話し合った。


 ティナの横でポーラがすっと背筋を正し、口を開いたティナを制して「私が正式に依頼するよ」と言った。


「いやでも、あたしがねちっこくて陰湿で面倒臭いロミオンの相手をするのが嫌になっただけだから、護衛業務の一環として……」


「ううん。私だって、別れた恋人の一方的な要請を聞き続けるのはもうたくさんさ」


 腰に手を当てて胸を張ったポーラが、フンっと鼻息荒く続けた。


「ティナさんに言われてハッとしたわ。確かに、なんでこっちが十三日間も我慢してやらなきゃならないんだろうかってね。しかも十三日っていうのも、モーリスが一方的に言ってきた期間だろう? それがすんだら手を引くなんて保証はないし。これがずっと続くのかと思ったら、仕事にも支障が出るし腹が立って!」


 灰かぶりの男の口を介してモーリスに傷つけられたポーラの目の縁は赤くて、強気に胸を張るために腰に当てた拳がぶるぶると小刻みに震えている。


「手紙の言う通りに十三日間を受け身のまま過ごすことが、もうすでにモーリスの狙い通りだっていうのに、ほんと、言われるまで気づかなかったなんて……」


 彼女が震えているのは恐怖のためだ。

 金のために姿をみせずに付け狙う陰湿さを恐れているというわけではない。

 ポーラの言動や心の中を〝あの頃のポーラ〟へ戻そうとしている、戻すことができると考えているモーリスの傲慢な支配欲が怖いのだ。


 モーリスは手紙や非常識なプレゼントを贈ることによってポーラを揺さぶり、自分の制御下にあった頃のポーラを再び作り出そうとしている。

 住む場所を提供し、望みのままに家事をして、遊ぶ金を渡し、従順に愛を返してくれる〝あの頃のポーラ〟を。


 そして別れから今までのポーラの努力と自尊心、ポーラが自分の力で努力して得たものや、大事に慈しんできた関係や思い出――いわば〝あの頃のポーラ〟からはみ出してしまった部分を全部否定する。

 だけどそのくせ、そのはみ出した部分で成功して得た利益を毟り取ろうとしている。


 ティナはそのちぐはぐさが心底気持ち悪いと思ったけれど、そのターゲットになっているポーラには恐怖だっただろう。


「モーリスとの時間は悪夢だったって、あの時確かに思ったんだよ。あの人の欲と、自己愛と、責任転嫁をぶつけられる的になり続けるのはもう嫌だって。だから別れたのに、今また同じように悪夢に片足を突っ込んで、私とおじいちゃんとおばあちゃんとのことまで悪く言われて……!」


 今度は恐怖からではなく怒りから拳を震わせたポーラが、キッと眉尻を引き上げてもう一度胸を張り、ポムへ言った。


「所在を突き止めて、今度はこっちからモーリスを全部否定してやるわ! 手紙も花もいらない、気持ち悪いプレゼントもあんたの愛もいらない、復縁なんてまっぴらごめんだってね!」


 受付カウンターへ拳を打ちつけ、ポーラは続ける。


「だから人探しの上手い冒険者を紹介してほしい!」


 ポムはポーラの勢いに押されつつも、冒険者ギルドの受付らしく、ピンクの唇の両端をニッコリとつり上げてうなずいた。


「ぴったりの冒険者をご紹介できますよぉ!」


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