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【コミカライズ】モラハラダンジョンをぶっ壊す! ~凄腕冒険者ティナは地獄の義実家から兄嫁を救う  作者: 万丸うさこ
2章

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第2話 ティナ先生

「お疲れさまでした~! 次回は祝日なので教室はお休みですけど、祝日こそ実践日になる可能性大! みなさん今日の練習を忘れずに振り返ってね!」


 ティナがにこやかに言うと、対面でずらっと並んだ女性たちが「ティナ先生、ありがとうございました!」と良い笑顔で返してくる。

 首にかけたタオルで汗をぬぐいながら部屋を出ていく彼女たちは、冒険者ギルドの近くに住む女性たちだ。


 魔物の討伐や護衛、魔石の確保など生活に必要不可欠な冒険者という職業だが、素手でも簡単に人を殺せる能力のある人間は一般人からみれば脅威である。

 冒険者から一般人への犯罪行為はギルドとしても厳しい処罰を科している。とはいえ全ての冒険者に目が行き届いているかというと、それはなかなか難しかった。


 実際に、少し前に一般人を恐喝して金銭を巻き上げていた冒険者二人組が出てしまっている。

 うち一人は素早く捕まえてギルド証を永久剥奪のうえ憲兵に引き渡して犯罪奴隷となったが、もう一人はいまだ逃走中だ。冒険者ギルドが指名手配をかけ、血眼になって探している。


 迷宮都市リュインはダンジョンが経済の核となっているためか他の都市より冒険者への当たりは柔らかとはいえ、その事件が尾を引いて心証が悪くなりつつあった。

 なんとか挽回したいギルド長の考えにより、最近は比較的人格の穏やかな冒険者が近隣住民との交流を図るイベントに駆り出されている。


 たとえば近所の神殿の改築作業に力自慢のスキルを持つ冒険者が手伝いに行ったりとか、祭りのにぎやかしに火魔法のスキルを持つ冒険者が花火を上げたりだとか。

 ちなみに一応、ギルドからは雀の涙ほどの報酬が出る。


 ティナもギルド長から頼まれて、『Aクラス冒険者による女性のための護身術講座』の先生をしていた。


 レディたちの年齢は幅広く、十二歳から六十七歳まで。

 冒険者ギルドの練習場を教室にして、週に一度、全十回の和気あいあいとしたクラスである。


 正直なところ、生まれながらに力の守護天使の加護を持つティナは、人間相手に脅威を感じたことはほとんどない。

 なんなら幼女だったころに出くわした変質者に対し、的当てゲームのように無邪気に石を投げて変質者の変質的な部分をこそげ取りそうになり泣かせたこともある。

 なので最初はギルド長から「一般女性の視点で護身術を」と言われて困ってしまった。


 一般女性である同居人のリラとフェリシアへ相談したところ、恐怖で動きが止まってしまい反撃も逃走もできないというのが一番よくないのではないかという。

 なるほどと納得したティナは、講習中は受講生たちへわからないようにうすーく〝威圧〟のスキルをかけることにした。

 ワイバーンを気絶させるような本気の威圧ではなく、元夫や元義兄たちにかけたような威圧をさらに薄くさせたものだ。


 教室の帰りにお茶でも行こうかとキャッキャしながら相談している彼女たちは、今なら全裸を見せつけてくる男に対し、冷静に〝大声を上げる〟というコマンドを選択し、「憲兵を呼ぶ」と警告できるくらいには恐怖耐性がついているはずだ。


「これからみんなでパンケーキ食べにいこうって! ティナ先生も一緒に行こうよ!」


 十二歳の女の子から無邪気に誘われて、ギルド長から頼まれた〝近隣住民との交流〟は達成できていることを内心で喜びつつ、ティナは首を振った。


「ごめんねー、このあとポムさんに呼ばれてるんだ」


「受付のお姉さんに? ティナ先生と仲良しなの?」


「仲良しだよー」


「そっか!」


 にっこり笑ってクラスのみんなで教室を出ていった無邪気な受講生に手を振りつつ、ティナは少しだけ複雑な表情を浮かべた。


 ギルドの受付嬢であるポムとは〝仲良し〟ではあるけれど、十二歳の少女が思うようなものではない。ポムに呼び出されたということは、十中八九ギルドの用事があるのだ。


 素人に対して組み手や威圧のスキルで相手をするのはけっこう大変なので、できれば自分へのご褒美としてみんなでパンケーキを食べに行きたかった……と、ティナは少しだけ肩を落とした。



 教室の片付けをしてからギルドの受付へ行くと、昼間ということもあってか人が少なかった。

 冒険者たちはこの時間は迷宮に潜っているか、各々依頼をこなしているかで忙しい時間帯だ。たまに駆け出したちがパーティー募集のお見合いをギルドの受付の前でしていることもあるが、今日は姿がない。


 受付に用事がある者もいないらしく、受付カウンターの前は閑散としていた。

 そのカウンターにもポムの姿がなかったが、その奥の衝立の向こうに二人分の気配がある。

 一人はポムだろう。もう一人は受付嬢の誰かかと思ったが、知らない気配だった。


「ポムさーん?」


 身を乗り出して呼びかけると、ポムの動揺した声がギルド内に響き渡った。


「十三年前のぉ、元カノの使用済み下着送ってくるとかぁ! まっじでぇ! キモすぎるんですけどぉぉおおお!」


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