カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 54
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
女たちは噂話が大好きだ、それが貴婦人ともなれば、帝国の頂点に君臨する皇帝陛下の近辺で起こった話ともなれば、
「ねえ、ねえ、あの話をお聞きしました?」
「ええ、ええ、なんてことかしら!」
「そんなことがあったなんて!」
「あんなことがあったなんて!」
コソコソ、ペラペラ、ああだったらしい、こうだったらしいと、小鳥のように囀るのを止めることなど出来るわけがない。
「アクトゥム家の長女であるダラール様が行方不明となって、バッサム様やアブデル殿下が随分と必死になってお捜しなっていらっしゃったけれど」
「実はウィサーム殿下が保護されていたなんて!」
「何でもザーフィラ妃殿下がアブデル皇子とダラール様の婚約を破棄させるために、翡翠宮で行われた宴の時に暴漢を送り込んで、ダラール様を手篭めにさせようとしたらしいのよ!」
「それを妹のアタファ様が見つけた! という形にしてダラール様が悲惨な目に遭っている有り様を多くの人に見せつけようとしていたとか!」
「その企みを知ったウィサーム殿下が暴漢を殴りつけ!」
「私が見た時には絵画に頭から突っ込んでいるような状態だったけれど?」
「持っていた絵画で殴りつけたのね!」
「なんで殿下は絵画なんて持っていたのかしら?」
「それは、ほら! ウィサーム殿下はルオッカ画廊のロニア嬢と懇意の間柄だったというから!」
「あわやのところで助け出した殿下は、ダラール様の肌に虐待の跡が残っていることに気が付いたというのよ!」
「何でも命も危ぶまれるほどの栄養失調状態だったとか?」
「衣服で隠れる場所を針先でブスブスと刺されて、その傷が膿んで大変なことになっていたと聞いたわ!」
「あのマウザ様って方、おとなしそうな顔をしてえげつないことをするものだわ!」
「女神の怒りを買った所為でとんでもない死に方をしたと聞いたけど」
「お仕事を休まないウィサーム殿下が執務室にも現れず、別の場所で仕事をしていた時期があるって夫が言っていたんですよ!」
「それじゃあ、その時期に!」
「ダラール様を献身的に看病していたってことですわね!」
「それでお二人の間に愛が芽生えて」
「愛する人の今までの状況を詳細に知ることになったウィサーム殿下は怒りで震えていたそうですわよ!」
「まあ!なんてことでしょう!」
「ねえ、聞いた? 遠方にダラール様を隠していたウィサーム殿下が、悪者たちを成敗したからといって、帝都に戻ることを決められたそうよ?」
「名門家門でも、蟄居、滅門、当主交代、なんてことかしら!」
「理由はザーフィラ妃が皇宮に毒を持ち込んだなんて言っているけれど!」
「女神様のお怒りを買うようなことをしてしまったのだもの!」
「それにしたって女神様の末裔と言われるダラール様だけれど、どのような方だったかしら?」
「いつもマウザ様やアタファ様の影に隠れていらっしゃったから、私もあまり覚えていないのよね」
「それじゃあ、殿下がダラール様を連れて帰っていらっしゃる時に、一緒に見に行ってみましょうよ!」
「女神様へのお詫びの意味も込めてパレードされるんでしょう?」
「私たちは女神様の末裔を歓待しているのだとお示しになるために」
「それじゃあ席を急いで用意しなくてはいけないわね!」
城壁に設けられた大門から皇宮まで一直線に道がのびているのだが、その道の両側には階段状に観覧席が設けられている。この観覧席は有料席で、貴族たちはこの席に陣取り、女神の末裔の登場を今か、今かと待っていた。
有料となる階段席の最前列にロニアの祖父とロニア、カステヘルミの三人で座っていたのだが、
「みんなダラール様のことに夢中になり過ぎて、私たちのことなんか視界にも入りやしないというのに、イザベラは何で来なかったのかしら」
ため息まじりにカステヘルミが言うと、
「そりゃ、こんな大勢の中ですからな、孫から酷い人見知りだと聞いておりますし、イザベルさんには無理ではないですか?」
と、ロニアの祖父が笑いながら言い出した。
「それじゃあ、イザベルとダビトさんは今、何処にいるの?」
「罪人を押し込めるために用意された尖塔のてっぺんよ」
カステヘルミは皇宮から伸びる六本の尖塔を見上げながら言い出した。
「私があそこなら一望出来るでしょうねと言ったら、そこで見ることにするってイザベルが言っていたもの」
「でも、あそこから眺めたらダラール様は豆粒以下にしか見えないと思うんですけど」
「それでもいいんじゃない?」
階段席には椰子の実や焼き菓子、コーヒーや紅茶を配って歩いている売り子もいて、ロニアの祖父は二人に焼き菓子を買ってくれたのだ。
その焼き菓子を食べている間に、遠くからドラムを叩くような音が響いてくる。
「いよいよね」
「いよいよだわ」
遠くから聞こえてくる楽器隊の音色がどんどんと近付いて来ると、向こうの階段席のほうから、
「「「「ウォー〜―!!」」」」
という興奮した声が雄叫びのように聞こえてくる。
波が押し寄せるように興奮の声がカステヘルミの方へ迫ってくると、
「あらまあ、象まで出すとは聞いていなかったわ!」
と、思わず驚きの声を上げてしまったのだ。
ダラールは象の上に乗っていた、ウィサームと一緒に乗っていた。おそらく彼女は乗ることを拒否したのだろう。ウィサームはダラールを膝の上に乗せて抱え込むようにして笑顔を振りまいている。
空は灰色の厚い雲に覆われ、ポツポツと雨が降っていたのだが、風と共に分厚い雲に切れ間が入り、太陽の光が差し込んで来たかと思うと虹が現れた。
虹は一つだけではない、雲の切れ間から差し込む太陽の光で三つもアーチを作り出し、まるで象に乗って行進する二人を祝福しているかのように輝いた。
「「「女神マナの末裔ーー!」」」
「「「巫女様―〜!」」」
マナーを慮る階段席に座っている貴族たちは感嘆の声を上げるだけだが、庶民、平民たちは興奮の声を上げながら象で移動する二人の姿を見上げている。
「ダラール様―!こっちよ!こっちー!」
立ち上がったロニアが大きな声を上げると、こちらに気が付いた様子のダラールが、身振り手振りで何かをこちらに訴えているのだが、
『無理、無理。私たちにはどうにも出来ませんから』
と、カステヘルミはダラールにゼスチャーを使って応えることにした。
皇宮では明らかにされた罪状の割に刑罰が極端すぎるのではないかという意見も出ていたのだが、噂、噂、噂を聞いた人々は、最終的に、
「「「あ、これは本当に女神の末裔だわ」」」
「「「間違いなく巫女様だ」」」
と言っては互いに顔と顔を見合わせて、
「「「呪いや災いが降りかかっては困ることになるから」」」
「「「今回のことについては絶対に、口出しするようなことはしないようにしよう」」」
と、心に誓うことになったのだった。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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