カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 55
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
牢屋に入れられることになったアハリ族の族長の娘ライラは憤慨し続けていた。
「女神だか何だか知らないけど!私は関係ないわよね!だって私はダラール様を虐めていないもの!私がアクトゥムに輿入れしたのって、ダラール様が居なくなった後だもの!関係ない!関係ない!私は関係ないわよー!」
皇帝の間での謁見の後、ライラはカーズィムの妻として皇宮の地下にある牢屋に入れられることになったのだが、翌朝になって、アタファが無惨な死体となって発見されることになり大騒ぎになったのだ。
アタファは自ら頭を壁に叩きつけ、血塗れになりながら死んでいたというのだが、
「「「女神様の呪いだ!」」」
「「「間違いなく女神様はお怒りなのだ!」」」
看守たちの驚きと怯えの声が牢屋の中まで聞こえて来る。
その後、ダラールの虐めに加担していないと証明が出来た第二夫人と第三夫人の子供たちは解放されることになったのだが、
「なんで私が解放されないんだよ! 私は無関係だろー!」
ライラの叫びは牢獄に轟くことになったのだ。
驚くべきことに、ザーフィラ第二妃も両親と共に身柄を拘束される形で地下牢へとやって来た。そのうちライラの両親まで牢獄に押し込まれることになったのだ。
アクトゥム家は滅門だと宣言され、ダラールへの虐めを見て見ぬふりをしていた分家の長老たち、屋敷の使用人たち、死んだマウザの両親まで地下牢へと連れて来られることになったのだが、
「お父様! なんとかしてちょうだい! 我が一族は虐めに加担なんかしていない! 女神の末裔を虐めてなんかいないって言ってよ!」
斜め前の牢に入れられた父に向かってライラは必死の声を上げたのだが、
「お前なんか産むんじゃなかったわ!」
父と同じ牢に入れられた母が半狂乱になりながら言い出した。
「そもそも貴方がライラを甘やかしたのが悪いのよ!貴方が!族長として真っ当な対応をしていたらこんなことにはならなかったのよ!」
そこで父は、闇に沈んだ牢屋の中から言い出した。
「これは我が弟、ターヒルの復讐なんだよ」
「はあ? なんでよ?」
「お前はターヒルの娘を死に追いやったではないか」
ターヒルにはアーヤという目の中に入れても痛くないというほど可愛がっていた娘がいたのだが、アーヤが心底愛するナージーという若者を遊び半分でライラは奪い取ってしまったのだ。
「でもあれは!浮気者のナージーが悪いんでしょう!そんな浮気者と結婚しなくて良くなったんだから感謝しても良いくらいなのに、当てつけのように自殺したのはアーヤじゃない!」
「あの時、私たちはお前を守るために、ナージーこそ悪いのだと主張した。そのためナージーは一族から追放されることになったのだが、そのナージーとターヒルが手を組んで我々を罠にかけたのだ」
「罠って?」
「私にザーフィラ妃を紹介し、アクトゥムの主となったカーズィムとライラを結婚させるように勧めたのはターヒルなんだ。次の皇帝はアブデル殿下で決まりだなどと私を唆し、皇帝を支えて来たアハリ族を裏切りの一族として貶めた」
ライラの父はそこで腹を抱えて笑い出すと、
「お前さえ・・お前さえ居なければ、我が一族がこのように落ちぶれることなどなかったものを・・族長である私が不名誉な罪を背負って処刑されることもなかっただろうに」
と言って、シクシクと泣き出したのだった。
「でも、でも、でも、そんなこと、そんなこと言われたって」
心底愛し合っている恋人同士を壊すことは、ライラの娯楽の一つだったのだ。
「だったらやめろって言ってよ! 私を叱りつけて止めもしないで、何を勝手なことを言っているのよ!」
「叱りつけたわよ!」
鉄格子を掴んだ母が泣き叫ぶように言い出した。
「非道なことを行うのはやめなさいと言ったわよ!だというのに、お父様が甘いからという理由で貴女は私の話に耳を傾けようともしなかった!それでこれよ!女神様の天罰が下ったのよ!天罰を受けるのなら、貴女一人で受ければ良いのに!」
氏族社会を尊重する今の皇帝陛下は、一族内の揉め事であれば長老や族長の差配によって刑罰を決めることに口を挟むようなことはしなかった。
今の皇帝陛下は確かに、支配下にある無数の部族の誇りと権利を尊重して来たのだが、
「グアラテム王の子孫とは関わりあいにならないように気を付けていたのに・・まさかこんなことになるなんて・・」
ライラの父は咽び泣きながら言い出した。
「グアラテム王の子孫の力が関われば、一族の権利も誇りも関係ない。これは理を超えた話になるのだから」
帝国では誰かが大きな罪を犯したとなれば、その罪が大きければ大きいほど、個人が罪を償って終わりということにはならない。連座制が適応されて、芋蔓式に処罰を受ける人間が増えていく。
これは名門と呼ばれたアクトゥム家が滅門となるような話になるのだ。家門の主となるカーズィムも、第一夫人とその子供たち、第二夫人、第三夫人、第四夫人も処罰を受ける。もちろん、各夫人の両親も牢屋へと連れて来られて、処刑をされる日をただ、ただ、待つことになる。
「嘘よ!処刑なんて嘘よ!そもそも女神の末裔だなんて本当の話なの?絶対に嘘!ぜーったいに嘘!グアラテム王の子孫の力だとか!末裔だとか!そういう嘘を吐く人間の方が間違っているのよ!天罰が落ちることになるわよ!」
ライラが牢屋から叫び続けていると、看守がやって来て言い出した。
「ダラール様が女神の末裔なのかどうかを、アクトゥムに連なる人間には確認をさせてやろう」
カーズィムと四人の妻は何処かの建物の屋上へと連れて来られることになったのだが、何かのパレードが行われるのか、皇宮から大門へと伸びる皇帝の道の沿道に溢れんばかりの人が押し寄せている。階段状の観覧席まで設けられているようで、帝国貴族たちが集まっているのが良く見える。
空は灰色の厚い雲に覆われており、ポツポツと雨粒が落ちている。そんな中、楽隊が奏でる音色とドラムの音が風に乗って聞こえて来ると、
「「「「わぁああああ!」」」」
民衆の歓喜の声が建物の屋上まで届いてくる。
門から楽器隊がまずは出発し、その後ろを一頭の象がゆっくりとした足取りで進んでいる。式典服を着用したラクダの部隊が武装した状態で後ろを行進しているようなのだが・・
「何が女神の末裔よ!結局全部嘘じゃない!嘘よ!嘘!晴れてもいないし!雨も降っているし!慶事って感じがちっともしない中での凱旋?行進?ふざけんじゃないわよ!茶番よ!茶番!」
後ろ手に拘束されたライラが怒りの声を上げていると、風が吹き始め、分厚い雲が頭上で動き出し、雲と雲の合間から太陽の光が差し込んだ。パラパラと降り注ぐ雨粒を照らすように太陽の光が線となって地上へと舞い降りると、
「「「「「うわぁあああああ!」」」」」
三つの虹が行進する象の頭上に架かったのだ。
帝国では三の数は慶事の証と言われており、三つの虹が同時に空に架かった時には驚くほどの運が舞い降りると言われているのだ。
「キャアアアアッ!」
女の叫びに驚いてライラがそちらの方を見ると、いつの間に連れて来られていたのか、ザーフィラ妃が頭を掻きむしるようにして叫び声をあげている。
「わかったわよ!分かった!あの娘が女神の末裔で!グアラテム王の子孫の力を持っているのは分かったわよ!」
この時、ザーフィラは涙を流しながら、背の高い男の足に縋り付いて言い出した。
「悪いのは私なの!全部私なの!だからお願い!アブデルだけは助けて!母は違っても貴方の弟になるのよ!」
ザーフィラに縋り付かれた第一皇子はザーフィラの手を取ると、
「話を聞く皇太子と言われている私ですが、貴女の要求を聞くわけにはいきません」
と、微笑みを浮かべながらキッパリと言ったのだ。
「この後、貴女は処刑されることになりますが、愛しい我が子もすぐに後を追いますので寂しい思いはしないでしょう」
「追わせないで!死ぬのは私だけでよいでしょう!」
「まさか、そんな訳ないでしょう」
第一皇子はクスクスと笑いながら言い出した。
「生かしておいたら権力欲を捨てられない古株たちが、懲りずに旗頭としてアブデルを祀りあげることになるでしょう?私は面倒なことは嫌いなんでね、憂いの元などあっさりと捨てますよ」
「捨てないで!お願い!捨てないで!」
「ザーフィラ様、貴女はなんて愚かなんだ。貴女が下手な欲さえかかなければ、あのように素晴らし能力を持った女性をアブデルは伴侶に出来たのに」
「お願い、もうやめて!もうやめて!」
「今まで絶対に結婚をしないと言っていた次男が結婚をする気になったのだから良しとしましょうか。それではさようなら、絞首刑では地上に縛られた魂が残されたままになると言われているので、斬首刑にさせて頂きました。斬首刑なら切断された首から出た魂が天へと昇ると言われていますので、どうぞご心配なく!」
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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