カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 50
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
支配系と呼ばれるハシーフ家は皇家も無視できないほどの巨大な家だった。先皇の時代は周辺諸国を平定するために、戦争、戦争、また戦争の状態だったので、皇帝が外で戦っている間に帝国の安定を図っていたのがハシーフ家だったのだ。
『攻』の力を持つ皇帝が外で暴れ回っている間に、ハシーフ家はあらゆる利権に手を伸ばす。その結果、外も中もボロボロになり過ぎて帝国は崩壊の危機に陥ることになったのだが、それを立て直したのが現皇帝ということになるのだ。
「母親がハシーフ家の出身だから安心していたということですかね? 巨大な支配系の家が自分の後ろ盾だから余裕で次の皇帝になれると思ったのですか? ハシーフ家なんて今は名ばかりの名門で、図体ばっかりでかくなって動けなくなった獣も同じことだというのに、実に愚かじゃないですか。情報は常に更新し続けなければならないと教師から教わりませんでしたか?授業をサボっていたから知らないってことはありますか?皇宮で教師をつけられて勉強をすることの有り難さを知らないなんて、私なんて八歳の時に戦場に連れて行かれて以降、昼間は戦闘、夜はランプの下で勉強でした。 自分が恵まれた環境にいるってことに気が付けずに、アホな側近に囲まれているからそのようなことになってしまうんですね〜」
ウィサームはつくづく呆れた様子で転がる死体に視線を向けると、
「私の友人たちを馬鹿にするな!」
アブデルは涙を流しながら言い出した。
「彼らは幼い時から私を支えてくれた大切な存在なんだ! 素晴らしい友なんだ!」
「あははははっ!お前にとっての素晴らしい友か!今、この場でそんなことを平気で吐き出すお前に反吐が出るよ!」
椅子に腰掛けた皇帝は腹を抱えて笑うと、
「育て方を間違えた。さっさと戦場に連れて行って教育をすれば良かったのだ」
と、落ち込んだ様子で言うので、
「アブデルが物心ついた時には戦争はほぼ終わっていたので無理な話ですよ」
と、ウィサームが言い出した。
今の皇帝が帝国を治めるようになって十五年、豊かに成長を果たした今があるからこそ、誰もが先帝の時代のことを忘れようとしているのかもしれないが、
「私がどれだけ戦場を駆け回ったと思っているのだ? あれがあるから今があるのだということを忘れないようにしてはいるのだが……」
今の自分の状況に危機感を抱いていない様子のアブデルを見て、皇帝は大きなため息を吐き出した。
皇帝に散々殴られたのは痛かったが、帰ったら母上に慰めてもらおう。母は第二妃でハシーフ家の娘なのだ。皇帝である父はゴタゴタ言ってはいたが、自分たちの立場が変わることはない。だって、自分たちはハシーフの血を引くのだから。
「甘いですね〜、本当に甘いです」
書類を抱えたウィサームは、皇帝の私室の中をぐるぐると歩き回りながら言い出した。
「ハシーフ家の巨大な権力も今は昔の物語。確かに無視できない存在かもしれませんが、彼らはうっかり禁忌を犯してしまったんですよ。一つ目は蒼玉宮で起こったことだから大丈夫だろうと考えて、帝国貴族の夫人を毒であっさりと殺してしまったこと。二つ目の大きな過ちは、グアラテム王の子孫の力というものをあまりにも軽視し過ぎてしまったところです」
ウィサームはてくてくと歩きながら言い出した。
「『攻』の力を持っていた先帝があれほどのことをやらかしたというのに、何故、子孫の力を軽視するのでしょうか? 陛下が『聞』の力で私が『話』の力だから最弱だと思ったのですかね? 先帝の印象が強過ぎて忘れられがちではありますが、私も皇帝陛下もあの戦いを生き抜いた猛者なんですよね? あと『恵』の力ですが、何故、軽視できるのでしょうか? 女神の血筋を裏切ったからこそハヌラン族があっという間に滅びてしまったのを忘れてしまったのでしょうか? 記憶力悪過ぎませんか?」
ウィサームの話が長いのは有名な話なので、『聞』の力を持っている皇帝陛下も、頬杖をつきながら居眠りを始めている。
「忘れているようですから教えてあげますが、第一皇子は『聞』の力、第二皇子である私は『話』の力、第三、第四、第五、第六皇子は、子孫の力が継承されているかどうかを観察中。基本的に成人までに力を継承したかどうかが判明することになりますが、貴方は成人しても何の力も証明出来なかったので、力なしの烙印を押されているのです。力なしの烙印を押された王子に、力を秘めた妻を用意した皇帝陛下の慈悲深さたるや相当なものだと思います。だというのに、そのことに気が付かず、ダラールが虐められて飢えているのにも気が付かずに? 知っていますか? ダラールは保護した時に死にたいって言っていたのです。お母様のところに行きたいと言って泣いていましたよ。そりゃあ『恵』の加護の力も発揮されないでしょうと思いましたね。貴方は名門家の跡取りとなる道、子孫の力を自分の子供に継承出来るかもしれない道。これだけ立派な道を用意されているのに気が付かなかったのですか? 馬鹿なのですか?」
「俺はダラールを愛していた! ダラールを愛していたんだ!」
ウィサームは吹き出して笑った。
「だから何ですか? すでに過去形になっているではないですか」
アブデルの前で立ち止まったウィサームは言い出した。
「今現在、陛下と私が何について悩んでいると思いますが? 今後の君の婿入り先を悩んでいるとでも?ある程度の罰は与えて無罪放免で済むとでも思っていましたか? だって自分は具体的に何かをやった訳ではないし、婚約者のダラールを放置してアタファって妹の方とイチャイチャしていただけだから?」
ウィサームはニコニコ笑っているように見えるのだが、彼の目はちっとも笑っていやしなかった。
「ここで思い出して欲しいんですが、カステヘルミ嬢を罠に嵌めるためにザーフィラ妃は翠玉宮に毒を持ち込みました。人が一人死んでいるのだから立派な毒だということはすでに証明済みです。皇宮内に毒を持ち込んでいるのですから、ファティマ第一妃か、第一王子、皇帝陛下が毒を盛られる可能性もありますね。だって、第二妃は、自分の息子を皇帝にしたいと考えているのですから!」
ウィサームはアブデルに自分の顔を近づけながら言ったのだ。
「遥か昔の栄光にしがみつく古株たちの旗頭として貴方は祭り上げられるところだったんです。だというのに、何故、それが許されると思ったのでしょうか?世界は自分を中心に回っている?そんなわけがないでしょう!というわけで、私と陛下は今現在、貴方を母親と一緒に絞首刑にしようか、それとも急な病を理由にして毒を盛って殺してしまおうか。どちらにしようかで悩んでいるところなんですよ」
ウィサームは床に倒れたままの遺体を見ながら言い出した。
「それとも陛下に胸でも刺してもらいますか? 一番手っ取り早いとは思いますけどね」
「冗談ではない」
皇帝は頬杖をついて目を閉じたまま、
「絞首刑か毒殺か、そのどちらか一方からしか選ばせぬわ」
と、苦々しげに言い出した。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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