カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 49
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
アクトゥム家の主だったバッサムはマウザとアタファのことを信用しきっていたのは間違いない事実だ。一族を栄えさせるために様々な事業を成功に導いていったバッサムは家のことは、信頼がおけるマウザとアタファに任せ切って、外の世界で邁進していたのだが、
「お父様……あの……」
心細そうに自分に声をかけるダラールを置き去りにしていたことに気が付かない。
ダラールはハヌラン族の族長の血筋だから、グアラテム王の子孫の力を持つ巫女の血筋の者だから。畏敬の念を持って接することはあれども、まさか食事を与えない、世話役も取り上げる。屋敷に仕える全ての者から仲間外れにされて生きているとは思いもしない。
ダラールはアブデル第二皇子の婚約者であり、婿入り予定のアブデルが頻繁に屋敷を訪れているのは有名な話なのだ。もしもダラールに異変があると感じたならば、父親のバッサムに直接告げるか、もしくは皇帝に告げると思うだろう。
ダラールはハヌラン族の巫女の血筋の者であり、ハヌラン族の巫女は女神マナの末裔とも言われているのだから。
女神マナは双頭のジャガーと人魚の間に出来た子供と神話で語られているのだが、彼女が与える加護は『恵』、グアラテム王の子孫の力の中でも特別だと言われる『恵』の力を持つかもしれない少女を守ることもせずに、虐めに加担するようなことをしているとは思いもしない。
ダラールを嫉妬させたかった?
アタファに嫉妬をするダラールを見たかった?
悲しげに自分を見つめる瞳を確認したかった?
「アブデル、実に愚かな皇子よ。貴様は私の後継として名乗りを上げるために準備を始めたと話に聞いてはいたが」
私室に戻った皇帝は、息子のアブデルを散々殴りつけると、
「戦に一度も出たこともなく、皇宮で真綿に包まれるように育ったお前に望んでいたのは、女神マナの末裔を確実に守ること。だからこそ、貴様が皇宮に招いた教師を無視してアクトゥム家を訪れても何も言わずにおいたのだが……」
アブデルの胸ぐらを掴んだ皇帝は、拳を息子の顔に叩き入れながら、
「勉強不足で知らなかったのか? そんな訳はないよな? 私がどれだけ子孫の力を探し回っているのか分からぬお前ではあるまい? 」
憎らしげに言うと、
「アブデルと共にアクトゥム家に行っていた侍従と護衛を連れて来い! 私が自ら処分を行う!」
命じられた側近は、すぐさまアブデルの侍従と護衛を連れて来た。
アブデルの母であるザーフィラ妃が皇子を支えられるようにと選んだ、一族の中でも特に優秀な者たちであり、幼い時から共に過ごした大切な存在でもあるのだが、
「貴様らは一体何をやっていた? ああ? 何を言っている? 聞こえぬわ! ザーフィラ妃には報告をしただと?」
皇帝は持っていた半月刀で侍従の胸を貫いた。
驚くべきことに、皇帝がこのような暴挙に出ていても周りは眉ひとつ動かすことがないのだ。
今代の皇帝は人の話を良く聞く人であり、賢帝として人々に愛されているのは有名な話なのだが、
「父上! どうか! どうか私の話を聞いてください! 愚かだったのは私だけで、この者たちに何の罪もないのです!」
跪いていたアブデルが必死になって訴えると、
「この者たちに罪はないだと?」
皇帝は鬼の形相となってアブデルの方を振り返る。
「ザーフィラが一族の中から優秀な者を選び出し、幼少の時から側仕えとして教育をし、高い忠誠心を持つように育てていたのであろう? であるのなら、皇子の婚約者が食べる物も満足に与えられずに飢えているのを察してこちらに報告すべきであろう?」
皇帝はアブデル目の前まで移動すると、皇子を見下ろしながら言い出した。
「自分の婚約者をそっちのけにして、厭わしい庶子の令嬢と遊び呆けているお前を諌める立場ではなかったのか? 」
「確かに彼らは私に苦言を呈しておりましたが」
「諦めたのであろう? お前があまりに愚かだから言っても仕方がないと思ったのであろう? そんな奴らが職務を全うしているとお前は言うのだな?」
この時の皇帝の顔は黒々とした闇に包まれて、恐ろしい目だけがギョロリとアブデルを睨みつけているように見えたのだ。
ため息を吐いた皇帝はくるりと体の向きを変えると、両腕を掴まれて捕えられているアブデルの護衛の胸を貫いた。
倒れた彼らの下には血の池が広がり始めている。
「おうわぁ! びっくりした!」
王の私室へと書類を抱えて入って来たウィサーム第二皇子は驚きの声をあげると、転がる死体をひょいと跨いで皇帝の元へとやって来た。
「アクトゥム家、ハシーフ家、それに連なる分家筋は立ち入り禁止令を発動、兵士による封鎖を実行いたしました。カーズィムの第四夫人となったライラの生家であるアハリ族では族長を代替わりさせることになり、一族の財産の半分を皇家に献上することを決定したようでございます」
「既定路線、既定路線」
皇帝は椅子にどかりと座ると言い出した。
「自分の娘を自殺に追いやることになった族長の末娘のライラに復讐が出来るのなら、何でもやると言っていたのはターヒルではないか」
アハリ族の族長は末娘のライラを溺愛しているのは有名な話になるのだが、ライラは愛し合っているカップルからパートナーを奪い取るのが大好きな性分であり、彼女が原因で死を選んだ令嬢がかなりの数に登るという。
ターヒルは族長の弟になるのだが、ライラが原因で娘が自殺することになったのだ。
跪いたアブデルは、ウィサームに向かって言い出した。
「兄上! ハシーフ家に立ち入り禁止令とはどういうことですか! ハシーフ家は支配系と呼ばれる家であり! たとえ皇家であっても敵に回さぬ方が良いというのは誰もが知ることではありませんか!」
ちょっと驚いた様子でウィサームはアブデルを見下ろすと、
「アブデル、お前は情報の最新化を怠り過ぎだと思うぞ? そんな調子で皇帝になろうと思っていたのか?」
心底呆れた様子でため息を吐くと言い出したのだ。
「確かにハシーフ家は巨大で皇家であっても無視できない家だった。先代の皇帝の時代の頃まではってところになりますけどね」
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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