カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 48
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
前の皇帝陛下は『攻』の力を持っていたこともあり、帝国民からも戦闘狂として恐れられていたのだが、戦闘を繰り返して国土を広げるのは良いが広げた後の統治を疎かにしていることが仇となり、帝国は崩壊の危機を迎えることになったのだ。
帝国を根底から支え続けて来た有力部族や名門と言われる家門は、帝国の崩壊は自分たちの破滅を意味していることを十分に理解していたため、
「私が複数の妻を持ったとしても、唯一愛するのはファティマだけだ!」
と、皇位を継承した皇子が言ったとしても、
「「「「いいです! いいです!」」」」
「「「「滅びゆく帝国を殿下がまとめ上げ、復興に力を入れてくださるのならば、それで私たちは満足なのです!」」」」
権力者たちは平伏しながら言い出した。
それだけイブリナ帝国が破滅の縁まで突き進んでいるような状況だったので、支配系と言われるハシーフ家であっても、
「ザーフィラを第二妃として迎え入れて貰えるのなら、それだけで御の字。我が一族と今代の皇帝との間に皇子が生まれれば、たとえその皇子が皇帝になれなくても我ら一族の顔が立つというものだ!」
と言って、大きな野心など持つこともなかったのだが、今の皇帝は重鎮たちの想像以上にことをうまく運び過ぎてしまったのだろう。
皇帝は蒸気エネルギーを使った新技術に金を注ぎこむようなことをしたのだが、それが重鎮たちの想像を超える大成功をおさめることになり、新規事業に参入をした新興貴族たちはあっという間に驚くほどの金持ちになっていく。
有り余る金を手に入れた皇帝は、
「戦争などという忌まわしい記憶など消し去りたい!」
と言って芸術、文化、学問の再生・復興に力を入れていくようになり、有名画家の絵画が飛ぶように売れ始めるのと同時に、才能ある芸術家のパトロンになって育てることが貴族にとっての粋な働きとして大いに流行することになったのだ。
先代の皇帝に引きずられるようにして戦場へと連れて行かれた皇子たちがバタバタと死ぬ中、たった一人だけ生き残った皇子は古びた考えに固執した長老たちを置き去りにして、新しい事業を帝国全土に広げていくことになったのだが、
「「「「ちょっと待ってくれ! 一体、どうなっているんだ!」」」」
今までの皇帝であれば旨みのある仕事は名門と呼ばれる帝国貴族にまずは分け与えるのが通例であったはずなのに、今の皇帝はただ黙って口を開いて待っているような者に甘い汁を落とすようなことはしない。
ぼんやりと口を開けて待っている間に新興貴族たちが自分たちに代わって帝国で台頭をしようと動き出しているのを見て、
「待てよ? そういえば皇帝が愛する妃は新興貴族出身の娘だったよな?」
古株たちはある事実に気が付くことになるのだった。
妃の後ろ盾となる新興貴族に皇帝が甘い汁を与え出したとしたら、我々はどうなってしまうんだ? 我々の一族は? 家門は?
氏族社会では族長の言うことは絶対、確固たる権力を持っているからこそ下々の者たちも黙って付き従うというのに、その権力がなくなってしまったらどうなる?
そこで慌て出した重鎮たちは第二妃となったザーフィラ妃の元へと集まった。ザーフィラ妃は皇子を一人産んでいるし、その皇子はアクトゥム家に婿養子として出される予定でいるのだが、
「ザーフィラ妃よ、其方が産んだアブデル皇子が皇帝になる目はあると思うか?」
その問いにザーフィラは笑いながら答えたのだ。
「皇帝になる目はあるでしょう」
優雅に扇子で扇ぎながら、
「だって今の皇帝は話を聞いてくれるのですもの」
あれだけ自分を尊重してくれるのならば、支配系であるハシーフ家の血を引く皇子を皇帝に据えても良いと考えるかもしれない。
いや、すでにアブデルを次の皇帝に据える算段がザーフィラにはついているつもりだったのだが、
「貴様らは舐めているのか?」
古くから帝国を支える重鎮たちを集めた皇帝は、ザーフィラの頭を掴んだまま言い出した。
「第一皇子にあって第三皇子にないもの、それはグアラテム王の子孫の力。父は子孫の力である『攻』の力を利用して未だかつてないほど国土を広げ、私は『聞』の力を使って巨大な帝国をまとめあげた。それで? 次の皇帝には何の力を持たぬアブデルを据えて、お前たちは新興貴族と呼ばれる者どもを退け、今まで通り甘い汁を吸おうと考えているのだよな?」
皇帝は歯を剥き出すようにして言い出した。
「鉄道事業をウィサームから取り上げて、ハシーフ家で執り行う? ハハハ、貴様ら機関車がどういった構造で動いておって、今現在、どんな問題を抱えているのか欠片でも理解しているのか?」
「そうは言いますが! 子供でも相談に乗れるという事業なのでございましょう?」
ザーフィラの兄が果敢にも言い出した。
「異国のカステヘルミという幼子でも回せるような仕事じゃないですか? 鉄の天才とか呼ばれる女を鞭打って働かせればもっと良い成果が出ることでしょう。生ぬるいやり方ではなく我々に任せて頂ければ想像を超える成果を……」
「カステヘルミ様? 目を手で押さえるから何も見えないんですけど?」
「ロニアは見ない方がいいわよ」
皇帝が半月の刀でザーフィラ妃の兄の胸を突き刺したので、ザーフィラ妃が悲鳴を上げている。
「やはり貴方たちにはいくら言っても理解など出来ないんでしょうね」
そこでウィサーム皇子が言い出した。
「それでも貴方たちが少しでも理解出来るように、切り口を変えて教えてあげましょう」
上から眺めていたカステヘルミとロニアは、これは話が長くなるなと思いながら皇子の話に耳を傾けることにした。
「女神の巫女とは代々女族長に選ばれるハヌラン族の娘になるのですが、族長の夫が異母妹に懸想し、この異母妹こそが正式な巫女なのだと言って妻を毒殺したことで、あれほど巨大だった一族があっという間に滅んでしまったのです。我々は唯一生き残った次の巫女たるワヒーダ様が帝国で幸福に過ごすことが出来たなら『恵』の力で帝国が栄えるだろうと考えた。実際に、ワヒーダ様が嫁いで以降、帝国は破竹の勢いで成長をすることになり、名門と言われたアクトゥム家はより大きく栄えた家となる。八年前までは調子が良かったのです。そうです、アクトゥム家に後妻が迎え入れられ、ダラールが虐待を受けるようになるまでは、非常に調子が良かったのですよ」
ウィサーム皇子は後ろで手を組み、ぐるぐる歩きながら言い出した。
「急成長をする帝国の中で、あなた方は置いてけぼりを食らったような気分に陥ったのでしょう。そこで失いかけた自分たちの栄光を取り戻すために、第二妃が産んだ皇子を次の皇帝にしてしまおう。そこで貴方たちの頭の中からはすっかりグアラテム王の子孫の力のことが抜けてしまったのです。我々皇家が帝国を治めてこられたのは、色々と問題があったとしても、結局は特異な力があったからですよ。この力があるからこそ、頭が硬くて古臭い考えの貴方たちだって付き従って来たんですからね。もしやあれですか? 力のない皇帝を据えることに成功をしたら、次は自分たちの中の誰かを皇帝にすることも可能ではないかと考えたのですか? 実に浅はか、全くもって呆れ返ってしまうわけですが、とにもかくにも貴方たちはアブデルを次の皇帝にしてしまいたい。アブデルを皇帝にするには、婚約者であるダラールが邪魔になる」
ウィサーム皇子は跪くアクトゥム家の方へ歩いて行きながら言い出した。
「分家の長老たちは有能なバッサムを排除してカーズィムを上に置いた方が、より多くの甘い汁を吸うことが出来るだろうと考えたでしょうし、ハシーフ家としては愚かなカーズィムが主となった方がアクトゥム家を簡単に吸収出来ると考えた。カーズィムは自分の子を宿したマウザを利用して、真面目なバッサムを騙すことに成功し、アタファを自分の子だと信じ切ったバッサムはアタファに毒殺されることになるのですが」
「私は殺していない! 嘘を吐かないでよ! 私は殺していないから!」
アタファが泣き叫んだものの、
「そういうのは結構です、いくら貴女が嘘を吐いても貴女の家の家令が真実を証言しますからね」
ウィサームは一蹴すると、再びくるくると歩き出す。
「ダラールが虐待を受けるようになって八年間、女神の庇護を失って八年間。ワヒーダ様が生存中はあったオアシスも次々と枯れ果てることになり、帝国全土で恵の雨が減りました。そうして八年間に生じた損害額がどれほどになると思います?」
ウィサームは驚くほどの金額を言うと、
「そんなわけでアクトゥム家は滅門、アクトゥムに関わる血筋の者は全て国外に追放処分に致しますし、主家族は一同、女神に顔向できぬ行いをしたとして、死罪です」
あっさりと極刑を言い渡された人々は、
「「「「「えー〜!」」」」」
と、驚きの声を上げたのだった。
GW中、ちょっとお休みします!!よろしくお願いします!!
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