カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 45
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
巨大なドームの天井部分はタイル細工で夜空に浮かぶ星々を表している、皇帝の間の天井からは巨大なシャンデリアが天井からぶら下がる。高座には豪奢な絨毯が敷き詰められており、そこに置かれたクッションを利用してくつろいだ様子の皇帝は、勅命によって招致されたアクトゥム家の人々を迎えることになるのだが、
「護衛の兵士と一緒に私たち、こんなところに居て大丈夫なのかしら?」
二階の外回廊から階下を覗き込んでいたロニアが隣のカステヘルミに声をかけると、
「ビルギッタ様が大丈夫だと言うのだから大丈夫なのよ」
と、カステヘルミは小声となって答えている。
今回、皇帝がアクトゥム家の人々を呼び寄せることになったのはカステヘルミの助言があってのことになるのだが、
「あ……ウィサーム殿下だわ、ウィサーム殿下が出て来た」
ロニアが言う通り、奥の扉から侍従を引き連れる形でウィサーム第二皇子が出て来て、皇帝に向かって何事かを言っている。
高座の前で跪くことになったのは、新たにアクトゥムの主人となったカーズィムと四人の妻、そしてカーズィムの子供たちということになるのだが、皇帝の隣に控えていたアブデル第三皇子が緊張をした面持ちをしているのがカステヘルミには良く見えた。
「アブデル殿下は長年ダラール様の婚約者だったし、ダラール様と結婚後はアクトゥム家に婿入りする予定だったんだもの」
ロニアは人が悪そうな笑みを浮かべながら言い出した。
「これから何が起こるのか分からなくてドキドキしているみたい」
「そりゃあそうでしょうねえ」
娘のダラールが行方不明となって心を病んでしまったバッサムが自ら毒を飲んで死んでしまったとされているが、そんなことがあるわけがないとアブデル皇子も考えているはずなのだ。
アクトゥム家の人々は、アタファが虐待されているかもしれないという噂を聞きつけた皇帝が主家族を呼び寄せたと考えているようで、第一夫人以外は何処か他人事というような顔をしているようだ。
ラハティ王国と同じように帝国の民も噂話は大好きなので、バッサムが残した忘れ形見であるアタファの命が風前の灯火の状態だという話を面白おかしく話しているし、
「皇帝陛下! どうか私の話をお聞きください!」
ベールで顔を隠した状態で皇帝の間までやって来たアタファは、周囲の緊張した空気になどに気を配る様子もなく、
「私はヌールハーン様に殺されかけました!」
殴られ腫れ上がった顔をさらけ出し、憐れを装って涙を流しながら、
「私の母マウザも! ヌールハーン様に殺されたのです!」
身を投げ出すようにして訴える。
「どうか人殺しのヌールハーン様を捕まえてくださいませ! お願いします!」
皇帝の隣に控えるアブデル皇子はギョッとした様子で目を見開いたのだが、皇帝自身は悩ましげな瞳をアタファに向けて、
「それは仕方がないことだと思うがなあ」
と、言い出した。
「お前の母親のマウザはバッサムの妻だったが、バッサムの死後、カーズィムの第四夫人として迎え入れることになった。その後、第一夫人による執拗な虐めがあったのかどうかを余は知らぬが、お前の母はあっけなくこの世を去ることになったのであろう?」
皇帝は指先を自分の口元に当てながら、
「天罰だろうな」
と、言い出した。
「天罰?」
泣いて憐れを装っていたアタファは愕然とした様子で顔を上げるし、
「そうです! 天罰なのです!」
喜び勇んで顔を上げたヌールハーンは言い出した。
「マウザは本当に愚かでどうしようもない女だったのですもの!」
「確かに、マウザという女は愚かでどうしようもない女だったのは間違いない」
皇帝はうん、うんと頷きながら言い出した。
「ワヒーダが産んだダラールを丁重に扱うことをせず、食事も与えず。後妻である自分は先妻の娘に酷く嫌われてしまったようだと自分に同情が向くように仕向けながら、使用人を利用して長年虐待を続けていたわけだからな」
皇帝はアタファの方を見ながら言い出した。
「それで言うならお前は愚かな妹であったな。姉の物は全て奪い取り、食事を与えられないダラールが飢えを凌ぐために棗椰子の実を食べている姿を見ては嘲笑っていたのであろう?」
皇帝は軽蔑するようにアタファを見ながら言い出した。
「ダラールが衣装を作る時には、世話役たちに、わざと針先で突くようにと唆したと聞いている」
「そ・・それは違います!意地悪な世話役が率先してやっていたことにございます!」
「あそこにいる娘はそう言っているがお前はどう思う?」
皇帝は隣に控えるアブデルに向かって言い出した。
「お前は長年、ダラールの婚約者であっただろう?自分の婚約者が虐待をされているというのにお前は私にそのことを報告しないどころか、そこの愚かな娘の方が自分の婚約者に相応しいのだと公言していただろう?」
「公言だなんて! そんなことは!」
「まあ、いい」
皇帝はアブデルの言葉を遮ると、目の前で跪くカーズィムの方を見て言い出した。
「カーズィム、私はワヒーダがバッサムの妻になる時に、確かにお前と、そしてお前らを支える長老たちを揃えて言ったはずなのだが、お前たちは余の言葉をすっかり忘れてしまったのだろうか?」
「わ・・我々は陛下の金言を忘れるはずなどありません!」
「嘘を吐くな!」
皇帝の怒声は皇帝の間を震わせるほどのもので、皇帝の怒りが並々ならぬものであることを周囲の人々は理解した。
「ワヒーダはハヌラン族の生き残りであり、かのグアラテム王の子孫。しかも特別な力を持つ巫女である!」
高座から立ち上がった皇帝はカーズィムの前まで移動をすると、這いつくばるように頭を下げるカーズィムに向かって怒鳴り声を上げた。
「女神マナの末裔になんてことをしてくれたのだ!」
そこでカーズィムは脂汗を流しながら言い出した。
「私はワヒーダ様に何もしておりません!」
「ワヒーダの娘はダラールだろう! ダラールも巫女であると何故わからぬのだ!」
皇帝はカーズィムの顎を蹴り付けながら言い出した。
「お前の子を孕んだマウザを使い、バッサムを騙す形で屋敷に送り込んだのはお前だろう!となればダラールを虐め抜くように仕向けたのはお前ということになるのだ!」
「私はそんなことを頼んではおりません! 女たちがやることはいつでも同じで!」
「貴様! 何が女たちがやることはいつも同じだ! ダラールの窮状を知りながら無視したのはお前であり長老たちも同様と言えるだろう!実に愚か!何て愚かな奴らなんだ!」
怒り狂う皇帝を外回廊から見下ろしながらカステヘルミは言い出した。
「自分があれだけ言ったんだから大丈夫だろうとたかを括っていたのは皇帝陛下なのに。グアラテム王の信奉者なら、アクトゥム家をきちんと監視しなかった皇帝陛下にも責任があるわよ」
「カステヘルミ様、不敬ですって」
カステヘルミとロニアは顔と顔を見合わせると、視線を階下に向けたのだ。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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