カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 40
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
慣例通りバッサムの死後、第四夫人になったマウザが亡くなった。
真珠夫人と呼ばれ、名門アクトゥムの女主人として皆から持て囃されていた女が干からびた状態で発見された時には、
「まあ・・どうしましょう・・」
ヌールハーンは驚き慌てたものの、
「奥様、何の問題もございません」
家令のハリドがすぐさま棺に遺体を安置すると、釘を打って中身が見えないようにしてしまったのだ。
「流行り病に罹ったと言えば、誰も中身を改めようとは思いません」
帝国では遺体が腐るのが早いため、死んだ翌日には埋葬を済ませることになるのだが、実の親ですらマウザの死を不審に思うことなく、
「マウザのことを憐れに思うのならどうか今まで通り、旨みのある仕事を私どもにもおろしてください!」
と、懇願されることになったのだった。
ヌールハーンには家業のことなどさっぱり良く分からないのだが、
「カーズィム様は外に囲うことになった踊り子の甘言に騙されて、アクトゥム家の事業に関わる人物の入れ替えを行なっているのです」
家令のハリドはヌールハーンでも分かるように、
「カーズィム様は踊り子に夢中になっておりますので、アクトゥム家が独占していた金の卵を他人に差し出すようなことをしているのですよ」
噛み砕くように説明をする。
「今までは一族の中で金を回して豊かに暮らしていたわけですが、その金を愛する踊り子を経由して裏にいる商家に流しているのです」
「そんなこと、許されないでしょう!」
「さようにございます」
ハリドはそう言って一歩下がり、沈黙した。
夫のことを第一に考えるのも、一族にとって有利になるように差配するのも、第一夫人の役割なのだ。短絡的なヌールハーンならやることは決まっている。
その後数日して、カーズィムは泥だらけとなって慌てふためきながら屋敷へと帰って来た。
「アーイシャの恋人とやらが襲って来て、危うく殺されるところだった!」
「まあ、旦那様?一体どうなさったの?」
「踊り子だから今まで交際している男の数が星の数ほどいるとは思っていたが、嫉妬に狂って襲いかかって来るとは思いもしない!」
「それでは踊り子の方はどうなったの?」
「死んだよ!死んだ!」
カーズィムはヌールハーンが渡した水を飲みながら言い出した。
「アーイシャの腹に剣を突き刺した時に、ついでとばかりに俺を殺そうとしたんだが、護衛の者に遮られる形になったものだから男はその場で自害したんだよ!」
「なんて恐ろしい!」
ヌールハーンはガタガタと震え続けるカーズィムの背中を撫でながら言い出した。
「やっぱり噂の通りになってしまいましたのね」
「噂とは何なんだ?」
「貴方はアーイシャという女に言われるがまま、家業の一部を商人に売り渡したり、事業の提携と言いながら、あちらにとって有利になるようにことを推し進めていたのでしょう?」
普段なら事業のことなど気にもかけないヌールハーンが小首を傾げながら言い出した。
「私のお友達が言っていたのだけれど、帝都では最近、こういった事件が頻発しているのですって。なんでも最初に女を差し向けて、事業の提携やら融資の確約やら色々と推し進めて行った上で、ある程度の契約が取れたところで女ともども契約者を殺してしまうのだそうですよ」
「なんだって?」
「貴方はその商人を随分と信頼しているようだから、長老たちも心配していたみたいなんですよ。バッサム様の後を継いだばかりだというのに、まさか詐欺に引っかかっているのではないかとね」
名門アクトゥムを分家の長たちが支えているのだが、バッサムを退かせてカーズィムを主の地位に就けるよう後押しをしたのも、長老の中の一人ということになるので、
「家令のハリドもとっても心配しておりますのよ?」
というヌールハーンの言葉で、カーズィムの顔は青から白へと変色することになったのだ。
浮かれ切っていたカーズィムは冷や水をかけられることになり、家のことにも目を向けるようになったので、ヌールハーンは大いに満足することになったのだが、
「奥様、奥様」
家令のハリドがヌールハーンの元までやって来て、慌てた様子で言い出した。
「翠玉宮よりお呼びが掛かりました」
翠玉宮とはザーフィラ第二妃が賜った宮のことであり、送られて来た封書には至急、宮まで来るようにと書かれていたのだが、
「遂に私もザーフィラ第二妃様のお近づきになれるのね!」
ヌールハーンは深刻な表情を浮かべるハリドの様子にも気が付かず、はしゃいだ声をあげたのだった。
バッサムが亡くなりカーズィムが新しい主となって以降、カーズィムが翠玉宮を訪れることはあってもヌールハーンが足を踏み入れることはなかったのだ。
マウザが唯一の女主人だった時に、マウザはザーフィラ妃のお気に入りと言われていたのだが、
「マウザがお気に入りになれるのなら、私だって妃殿下のお気に入りになれるわよ!」
ヌールハーンは軽く考えていたのだ。
豪奢な宮へと案内されたヌールハーンは、満面の笑みを浮かべながら土産物を持参して第二妃の元を訪れたのだが、
「お前がこちらの想像を超えるほど嫉妬の念が深い女だと分かっていれば、早々にお前を排除して、第一夫人の座にマウザを据えていたというのになあ」
高座に座ったままのザーフィラ第二妃は、水煙草を吸いながら形の良い鼻の上に皺を寄せた。
「そうすればマウザは死なずに済んだだろうに、まさか私のお気に入りに手を下す者がいようとは思いもせなんだ。妾の浅慮が招いたことだな」
ヌールハーンがマウザを殺したとでもいうようなことを第二妃が言い出したので、ヌールハーンは慌てながら言い出した。
「マウザはバッサム様が亡くなったことで心に大きな傷を負うことになり!食も細くなった末に、流行病で亡くなったのでございます!」
「そういう嘘は要らぬぞ」
冷たい眼差しをヌールハーンに向けた妃は、
「更には踊り子も殺しただろう?」
ため息を吐きながら言い出した。
「カーズィムはアクトゥム家の当主になったのだ。今まで通り、妻は三人までという訳にはいかぬことは分かっているだろう?」
名門家や有力部族の主人であるほど多くの妻を持つのは当たり前。
「近々、第四夫人をお前の夫は迎えることになるだろうが、お前は新しい妻を三顧の礼でもって迎えねばならぬ」
ザーフィラ妃は小さくなって震え上がるヌールハーンを見下ろしながら、
「目下の者であろうが優秀な者を招くために、礼儀を尽くせと言っているのだ」
噛み砕くようにして言うと、
「あとはな、女が事業のことに口出しをするな!」
と、ザーフィラ妃はヌールハーンを叱りつけるように言ったのだった。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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