カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 38
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
母のマウザがアクトゥム家の女主人となってからは、世界はアタファを中心に回りだした。元々は姉を中心に回っていた世界が、アタファの工夫一つで全てを変えることが出来たのだ。
「お姉様は意地悪過ぎます! 私のことが嫌いなのは分かっているのですが、それにしたって酷過ぎます!」
アブデル皇子の前で憐れに泣いて見せると、人の良い皇子はアタファの頭を優しく撫でてくれたのだ。そうしてアブデル皇子がアタファに構っている姿を見て、ダラールは絶望したような表情を浮かべているのだが、
「まあ、ダラールお姉様ったらあのようなお顔をして、私に対して嫉妬しているのだわ」
アタファはハンカチで涙を拭いながら、
「ダラールお姉様は殿下のことが大好きなのですもの、私が近くにいるだけで酷く嫉妬をするんですもの」
そのように言うと、
「ダラールが俺に嫉妬だって?」
顔を真っ赤にしたアブデル皇子は嬉しそうに笑い出したのだ。
ザーフィラ妃に掌中の珠のごとく育てられた皇子はある意味世間知らずで、大人になっても好きな女性は虐めたい、どれだけ酷い態度を取ったって自分のことが好きで仕方がないのだろうから、その愛情を確認したい。そんな稚拙な考えに囚われているので、
「ダラールお姉様が嫉妬をして、また私を虐めてきましたの」
アタファは甘美な毒を与え続けてきたのだった。
いつしかアブデル皇子はダラールの目の前で、
「俺の婚約者がダラールではなくアタファだったら良かったのに」
と言って、ダラールの表情を確認するようになったのだが、
「自分の悪手に気が付かないなんて、なんて馬鹿な皇子なんだろう!」
と、アタファは心の中で笑っていたのだった。
名門アクトゥムの力は欲しいが、ダラールではない娘をアブデルの妻に据えたいとザーフィラ妃は考えているので、アタファは妃にとって都合が良い娘だったに違いない。
普段から慎ましげに見える母のマウザは悪知恵だけは働くので、世話役ガーダの叔父であるスィラージュを利用して、ファティマ第一妃の後ろ盾となる新興貴族に対して贋作を売りつけることに成功をした。敵に多額の損害を出してザーフィラ妃に気に入られることになったマウザは、
「是非、アブデル殿下の妃には娘のアタファをお願い致します。それが叶うのであれば、妃殿下にアクトゥム家を差し上げたいと思います」
駄目押しするように言い出した。
「バッサムを排除し弟のカーズィムに跡を取らせるようにすれば、カーズィムは愚かな男なので、妃殿下の望む通りにアクトゥム家を動かすようになるでしょう」
カーズィムは今現在若い女に夢中なようだが、その女を用意したのも、二人の愛の巣となる家を用意したのも、ザーフィラ妃が差し向けた商人に違いない。
アブデル皇子を皇帝の地位に就けたいと考える第二妃には多額の資金が必要で、有能な主人を失ったアクトゥム家は妃の財布としてちょうど良い存在になったのだ。
マウザにとってバッサムを切り捨てるのは危険な賭けとなったけれど、カーズィムは自分を愛していると言っているし、ザーフィラ第二妃もマウザをお気に入りに加えて大事に扱ってくれるのだ。
翡翠宮で開かれた宴で、カーズィムと閨を共にしているダラールを客人たちの前に曝け出すことが出来れば、ダラールがいかに男にだらしなかったかとアピールをして、自分たちが諌めても言うことを聞かないダラールを心の底から心配していた母と妹を演出することが出来たのに。
ダラールとアブデルの婚約を解消し、失意のバッサムが毒をあおって自殺をする。そのように仕向けようと考えていたのに、ダラールが失踪して以降、全てが思ってもみない方向に進んでいくことになったのだ。
「そのような汚い手で殿下に触るな!」
護衛のターヒルがアタファを突き飛ばした時に、アタファはこの世の全てが憎くなった。今まで皇子に甘えるアタファに対して甘い態度をとって来たターヒルがこのような態度に出るということは、ザーフィラ妃がマウザとアタファ親子を切り捨てたことを意味している。
「殿下?どうされましたか?殿下?」
屋敷の方から届くウターリドの声にアブデル皇子と護衛のターヒルが意識を向けたその瞬間、アタファは脱兎のごとくその場から逃げ出した。
甘やかされて育った皇子がアタファの惨状に心を痛め、屋敷の女主人となったヌールハーンや将来の結婚相手になるかもしれないウターリドを責めてくれれば良かったのに、
「なんてことだ!そんな姿で俺に触れるなんて正気とは思えないぞ!」
と、言い出す皇子に何の希望も持つことは出来ない。
自分たちのおかげでザーフィラ妃が巨大な財布を手に入れることが出来たというのに、
「用無しは気にかける必要もないってことなのね!本当に酷い!酷すぎるわ!」
憤慨しながら久しぶりに母が与えられた粗末な部屋へと足を向けたのは、アタファは母に直接文句を言いたかったのだ。
母のマウザが毒入りの紅茶なんてものを用意しなければアタファは贅沢な生活を送り続けることが出来たというのに、母の所為で、こんな惨めな思いをするようになったのだから、
「お母様!聞いてちょうだい!さっきアブデル殿下に会ったのだけれど、殿下ときたら私に対して汚い手で触るなと言い出したのよ!」
壊れかけた扉を開いたアタファは母の寝室へと踏み込みながら、
「信じられないと思うでしょう?でも本当のことなのよ!ねえ、お母様?私の話を聞いているの?」
怒りの声をあげていたアタファは、
「お母様?嘘でしょう?お母様!お母様!」
すでに息絶えている自分の母親を見下ろして、
「お母様!嘘でしょう?お母様!」
シーツにこびりついた血はすでに乾いていて、真珠夫人と呼ばれるほど美しかったマウザは干からびたような状態になっていたのだ。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
もし宜しければ
☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録
よろしくお願いします!





