カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 37
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
「もう!お母様は何でお父様に毒のお茶を飲ませるように言い出したのかしら?」
アタファはひたすら文句を言っていた。
「こんなことになるって想像がつかなかったということなの?」
バッサムの葬儀が終わり、弟のカーズィムがアクトゥムの正式な当主に決まると同時に屋敷に第一夫人のヌールハーンが家族を連れて移動をして来たのだが、そこからアタファの生活は一変することになったのだ。
アタファの部屋はヌールハーンが産んだウターリドに与えられ、アタファの衣装は全て第二夫人と第三人夫人が産んだ娘に与えられることになった。
宝石やアクセサリーはウターリドが全て自分のものにしてしまったようなのだが、
「今度、アブデル殿下とお屋敷でお茶会をする予定でいるのよ?」
ウターリドはそう言うと、アタファに向かって勝ち誇った笑みを浮かべたのだった。
ウターリドは下品なほどに色っぽい衣装を身に纏い、輝くような宝石を身に付けて澄ました表情を浮かべていた。アブデル皇子は可愛らしい庇護欲をそそるような女人が好みだというのに、色気をふりまきながらお上品に振る舞おうとするウターリドの姿がアタファには滑稽に見えたのだ。
「ブタが何をやったって変わるわけがないじゃない!」
ダラールと同じように出るところは出て、引っ込んでいるところが引っ込んでいるウターリドは女神マナの化身だとカーズィムが持ち上げるほど男性ウケしやすい容姿をしているので、常々アタファはウターリドのことをブタ扱いしていたのだが、
「きゃあぁあああ!」
ウターリドは扇子を使ってアタファの顔を殴りつけて来たのだった。
「何をするのよ! このブタ! ブタ!」
「あんたは自分の立場ってものが分かっていないのね? 性根を叩き直すために今からお母様のところに連れて行ってあげましょうか?」
「お姉様、お母様のところに連れて行く前にまずはやることがあるでしょう?」
次女のドゥハーがハサミを持ち出して来ると、アタファの頭を鷲掴みにしながら髪の毛をザクザクと切り始めと、
「確かにまずはやることがあったわね!」
世話役からハサミを受け取ったウターリドがジョキリ、ジョキリと音をたてながらアタファの髪の毛を切ったのだ。
「今まで散々、私たちに対して碌な髪油も香料もつけられないと馬鹿にして、貧乏人はこれだから目も当てられないと言ってくれていたんだもの」
「あんたは今ではまともに髪を洗うことも出来ないのだから、ご自慢の長い髪の毛なんて切っておしまいなさい!」
その日、母の部屋まで逃げ帰ったアタファは鏡を見て卒倒してしまったのだが、誰一人として倒れたアタファを助け起こそうとはしなかった。
そのうちに、母親の悲鳴と鞭の音で目を覚ますことになったアタファは生唾を呑み込むと、
「ヌールハーン様は完全に頭がおかしいわ!」
と呟いて、第一夫人の魔の手から逃れるために母親の部屋から抜け出すことにしたのだった。
マウザも自分の部屋から追い出されて、下級使用人が使用する部屋へと移動することになったのだが、最近では毎晩のようにヌールハーンがマウザの元を訪れる。
どうやら当主となったカーズィムは連日のように商人たちから接待を受けているようで、遂にはアクトゥム家と懇意になりたいという商家から若い女と女を囲う家まで提供されたらしい。その女が人気の踊り子だったということもあってカーズィムは夢中になっており、最近では家にも帰って来ないらしい。
新たな当主となったカーズィムが新参者のよくわからない商人から女を与えられ、家のことも疎かにしていることからも分かるとおり、憎っくき兄バッサムを排除したことによって完全に浮かれ切っているのだった。
第一夫人のヌールハーンはそんな夫に凛気を起こして、気に食わない人間に暴力を使って当たり散らしている。一番の被害者は第四夫人となったマウザなのだが、カーズィムが対応をするつもりがないようなので、誰もが見ないふりをしている。
そんな状態だから家の中の雰囲気は最悪な状態となり、
「「「このままではアクトゥム家はどうなってしまうんだろう?」」」
と、使用人たちは誰もが不安に思うようになっていた。
そんなわけで十四歳のアタファに構おうと思う者は誰もおらず、すっかり忘れさられるような形でアタファは放置されることになったのだった。
アクトゥム家の使用人たちにとって、第一夫人が食事を与えるようにと言わない限り用意をしないというのが当たり前となっていたため、アタファはダラールのように庭に生えている棗椰子の実を食べて飢えを凌ぐことになったのだが、
「冗談じゃないわよ!こんなものでお腹が膨らむわけがないじゃない!」
と文句を言っていたところで、ウターリドに会いに来たアブデル皇子を見つけることになったのだ。
「殿下!殿下!」
まるで獣のように走り出したアタファは、アブデルの袖を掴んで生垣の向こう側へと誘い込んでいってしまったのだった。
ヌールハーンが来てからというものアクトゥムの家の中は金の装飾で溢れかえるようになったのだが、その有り様がアブデルには下品に見えて、居心地の悪い思いをしていたのだった。
長女のウターリドの茶会は大理石の間で行われていたのだが、用意された茶器ひとつ見ても趣味が悪い。ほとほとうんざりしたアブデルが厠に行くと断って外へと出て来たところで、たまたま棗椰子の実を摘んでいたアタファと顔を合わせることになったのだ。
「殿下!殿下!どうか私をお助けください!」
アタファはアブデルに向かって拝むようにして訴えた。
「ヌールハーン様は意地悪です!私は衣服も、食事も与えられず、全ての物を奪われることになったのです!」
強引にアタファに腕を掴まれて連れ出されるのはいつものことだったけれど、ダラールが家にいなければアタファと一緒に居ても意味がない。婚約者のダラールがいつも悲しげに見るからこそ、自分勝手なアタファがいる意味があるので、
「アタファ!今すぐに離してくれ!」
アブデルは乱暴にアタファの腕を引き剥がすと、髪の毛をザンバラに切られた汚らしいアタファの姿を改めて見下ろしながら怒りの声をあげる。
「なんてことだ!そんな姿で俺に触れるなんて正気とは思えないぞ!」
目を潤ませたアタファが、
「殿下はいつだって私のことを可愛いと言ってくださったではありませんか!」
憤慨して言うと、
「それはダラールが聞いているからこそ言っていたのであって、ダラールがいなければお前に構う理由なんかないんだよ」
心底軽蔑した目でアタファを見たアブデルは、
「ターヒル!今すぐに来てくれ!庭に不審者がいるんだ!」
と、大声を上げる。
いつもアブデルの護衛として控えている大柄のターヒルはすぐさまアブデルの元までやって来ると、変わり果てたアタファの姿に驚きながらも、
「そのような汚い手で殿下に触るな!」
と言って、アタファを突き飛ばしたのだった。
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
もし宜しければ
☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録
よろしくお願いします!





