カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 36
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
皇宮の敷地内には敵の侵入を警戒監視するための見張り台という役割を担う尖塔が八本建てられている。そのうちの三本は貴族や皇族、国外から来た要人の身柄を拘束するための貴人用の牢屋として今は利用されており、長い螺旋階段を登ったその先に施錠された部屋が設けられているのだった。
尖塔は本宮の二倍の高さを誇るため、牢屋からは皇宮だけでなく皇都も一望出来るのだが、カステヘルミが入れられた牢屋の窓には鉄柵が設けられていないため、遮蔽物に遮られることなく素晴らしい眺めを堪能することが出来るのだ。
「カステヘルミ様―!おはようございますー!」
窓から少しだけ身を乗り出して隣を見れば、隣の牢屋に入れられているロニアがこちらに向かって手を振っている。
「今日も良い天気ですね〜!」
雲ひとつない真っ青な空が何処までも、何処までも広がっている。
「本当ねえ〜」
カステヘルミはぼんやりと青空を見ながら頬杖をついた。
「今日も良い天気ね〜」
ザーフィラ妃のお茶会に参加した夫人の一人が毒を飲んで亡くなった。毒入りの紅茶を土産物として持参したのがカステヘルミだと言われ、カステヘルミとロニアは即座に身柄を拘束されたのだが、
「二人は外国人ですし、逃亡されても困るので、塔に閉じ込めた方が良いでしょう」
と、カステヘルミの隣に座っていた老夫人、建国時から帝国を支えてきたハイファ族の女族長、ワアド・ハイファは意地悪そうに瞳を細めながら言い出した。
「このお嬢さんたちは皇帝陛下のお気に入りのようですし、後宮の牢屋に入れてしまえば第一妃様の手筈によっていずれはうやむやにされ、何の罰も受けずに外に出て来ることになってしまうでしょう」
そんなことは貴女たちの求めることではないでしょう?とでも言うようにワアド・ハイファは口元の笑みを深めた。
「だからこそ、この娘たちは罪人だと言って第二の塔のてっぺんの部屋に閉じ込めてしまいなさい!階段を登るのを嫌がっても、途中で泣き出しても無視をして、引きずってでも連れて行くの!」
蒼玉宮を警護する兵士たちは妃とハイファ女族長を交互に見ていたのだが、
「いやぁやああああ!罪人が押し込められる塔になんか行きたくないいいぃいい!」
カステヘルミがわざとらしいほど大泣きをし出したので、
「それではその娘たちを塔のてっぺんに閉じ込めておしまい!」
嗜虐心を刺激されたザーフィラ妃が命令をすることになり、カステヘルミとロニアは塔のてっぺんに位置する貴人用の牢屋に閉じ込められてしまったのだった。
後宮で殺人を行えば、犯行を行った犯人は遅くとも三日以内に処刑処分を受けるのだが、一週間経っても、二週間経っても何の音沙汰もなく、
「カステヘルミ様!暇だからしりとりでもしましょうよ!」
ロニアとしりとりをしながら、そろそろ一ヶ月が経過しようとしていた。
「またしりとり?正直に言って飽きたわよ!」
「それじゃあ、画家のゴシップを面白おかしく」
「聞いた、聞いた。画家のゴシップも三周目に突入する勢いよ!」
「それじゃあ何にします?たまにはカステヘルミ様が考えてくださいよ〜!」
「そうねえ、それじゃあ、これは私がお母様に聞かせてもらった話になるのだけれど」
むかし、むかし、幼い姉妹が魔女の庭に入り込み、幼い妹が木苺を食べているところを魔女に見つかることになりました。木苺を食べた妹が泣いて暴れるため、妹に代わって姉が魔女に捕まることになったのです。
塔のてっぺんに閉じ込められた姉は外に出ることも出来ず、窓から外を眺めてはため息を吐き、歌を歌っては気晴らしをしていたのです。
「カステヘルミ様!私たちも歌でも歌って気晴らしでもしましょうか?」
そうして何年も経つうちに姉の髪の毛はどんどんと伸び、塔の上から地面に届くほどの長さになりました。ちょうどそんな時に、姉のことを心配した現れた妹が、姉の長い髪をロープ代わりに利用して塔の部屋まで登って来たのです。
「ちょっ、カステヘルミ様、それ、妹がぶら下がってお姉さんの頭はモゲなかったんですか?」
妹が姉を心配して塔にやって来るようになると、見知らぬ男性が塔の麓に現れるようになったのです。その男性は美しい姉の容姿にすっかり魅了されてしまったようで、妹と同じように長い髪の毛を利用しててっぺんの部屋へとやって来たのです。
「お姉さんの頭!頭は無事だったんですか!っていうか、なんでみんなお姉さんの髪をロープ代わりに利用しようと考えるの?初回は別として、後日、きちんとしたロープをお姉さんに渡しておけば、わざわざ髪の毛を利用する必要はありませんよね?」
背が高く、筋骨逞しい男性は、姉に一目惚れをしてしまったのです。その後、二人は愛し合うようになり、姉は男の子供を身籠ってしまったのです。
「まず愛し合う前に!姉を塔のてっぺんから助けてやって!」
そうして姉のお腹がすっかり大きくなった頃、しばらく会いに来なかった妹が現れて、
「なんでお姉ちゃんが彼と会っているの?」
と、涙を流しながら言いました。
「彼は私と結婚する予定でいるのよ?だというのに、何故?お姉ちゃんと会っているの?そのお腹は何?まさか彼の子供を身ごもっているの?」
嫉妬にかられた妹は持っていたナイフを姉のお腹に突き刺すと、そのまま窓から飛び降りてしまったのです。
「え?そんな展開?」
その日も男が塔の麓までやってくると、地面には塔から落下したと思われる妹の遺体があり、塔の窓を見上げてみれば、窓は開いたままの状態になっている。
男は何度も姉の名前を呼んだものの、姉が窓辺に現れることはなく、男は妹の屍の前でいつまでも途方に暮れていたというお話です。
「カステヘルミ様―!そうやって私のゴシップを超える展開のお話を持って来るのはやめてくださいー!」
カステヘルミとロニアは顔と顔を見合わせると、
「「あはははっはは」」
と、笑い合ったのだった。
才能があるから、有能だから、そんな理由で親元から離れて帝国までやって来た二人は、ビルギッタが親代わりになってくれていると言っても、両親と離れた寂しさを埋めることは難しい。
北の端と言っても良いような場所にあるラハティ王国から大陸の南に位置するイブリナ帝国まで移動をして、やってもいない殺人の罪を着せられた状態で尖塔のてっぺんに閉じ込められて、一ヶ月も放置されているような状態なのだ。
「だって、こんなくだらない話でもしていないとやってられないじゃない!」
「展開が怖すぎますけど!髪の毛かあ〜!」
ロニアは尖塔の麓を眺めながら、
「あそこまで髪が伸びるのを待っていたらおばあちゃんになっちゃいますよ〜!」
と言って、自分の亜麻色の髪の毛をいじりながら言い出した。
「塔の麓にまで届くほどの長い髪の毛を利用して何処かの誰かが登って来たとしても、結局、誰も助け出してはくれないじゃない」
「そういえば魔女は?」
ロニアが窓から乗り出しながら言い出した。
「最初の方に魔女が出て来ましたよね?その魔女はどうした・・キャァアア!」
窓から鳩が飛び込んで来たため、ロニアは後ろへひっくり返ったのだが、
「カステヘルミ様!ビルギッタ様から連絡ですー!」
ビルギッタが利用する伝書鳩はいつだってカステヘルミのところには来ずにロニアの方へと向かうのだ。
「カステヘルミ様!朗報です!」
再び窓から顔を出したロニアはニコニコ笑いながら言い出した。
「ウィサーム皇子が皇都に帰って来たんですって!」
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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