カステヘルミ様とロニア様は私の天使様 34
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!
御礼企画としてカステヘルミとロニアの帝国での物語を毎日掲載します。お話はどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
巡礼をしている間も雨がパラパラと降っていたこともあって、地中に隠れていた植物の種子が芽を出し、荒野が緑色や赤紫色の絨毯に覆われているように見えます。アカネ科の黄色い花弁の花やグアナという名の赤紫色の小さな花々が広範囲に広がっている様は驚嘆するほど美しい。コリンネと呼ばれる純白の百合の花のほか、二百種類以上の花々が咲き乱れているのです。
「貴女は残っても良いのですよ?」
鉱山の麓の街に用意された馬車の前で美しい花々を私が眺めていると、背後から近づいて来たウィサーム殿下が言いました。
「皇都から追加で送られて来た伝令からの報告を聞きましたが、カステヘルミ様もロニア様も、今すぐ処刑されるということではないようなので」
「今すぐ処刑されないということは、いつかは処刑されるかもしれないということですわよね?」
冗談じゃありません!
「私は絶対に!お二人を助けたいのです!」
「そうですか、貴女は二人の少女を助けたいのですか」
殿下はのんびりと荒野に咲き誇る美しい花々の姿を眺めると、
「不可能ではありませんね」
と、言いました。
鉱山の麓にある街まではラクダで移動をして来たのですが、ここからしばらくは馬車で移動することになります。私と殿下は同じ馬車に乗り込むことになりましたが、殿下は私に向かって言いました。
「貴女には追加で入って来た情報を伝えなければならないのですが、落ち着いてよく聞いてください。貴女のお父上であるバッサムですが・・」
「お父様がどうしたんですか?」
「亡くなったという報告が届きました」
私は目を見開きながら固まってしまったのです。
お父様が亡くなった?お父様が?何故?
「バッサムは行方不明になった貴女のことを憐れみ、自ら毒をあおって服毒自殺をした」
「ええー!」
「ということで届け出がされていますが、妻のマウザか娘のアタファか、どちらかが毒を盛って殺したのではないかと帝都中で噂になっているのだそうです」
「それはあくまで噂なんですよね?」
「あくまで噂ですが、信憑性はあるものだと考えられています」
「えーっと、ちょっと良く分かりません。お父様の家族はマウザ様とアタファの三人で、いつだって仲良さそうに過ごしていたんですよ?」
「貴女の義母であるマウザですが、元々はバッサムの弟であるカーズィムと愛人関係にあったそうですよ?」
「えーっと、つまりは?」
「最初からバッサムを殺すつもりでいたのでしょう」
殿下は馬車の窓から外を眺めながら言いました。
「バッサムの唯一の娘である貴女の行方が現在分からない状態なのですから、バッサム亡き後、カーズィムが簡単にアクトゥム家を継承することが出来ますからね」
「私がお父様の唯一の娘?」
「アタファはカーズィムの娘だったようなので、貴女はバッサムの唯一の娘ということになるのです」
大きな石を胃の中に放り込まれたような、ズーンと鳩尾の下が痛くなるような感覚を覚えました。
「葬儀は速やかに行われることになり、マウザはカーズィムの第四夫人の座に収まったようです」
「私はいつだって除け者で、仲が良い親密な家族像を見せつけられていたんです。だというのに娘は私だけだった?お父様は騙されていただけだった?」
キリキリと胃が痛んで額に脂汗が浮かんできます。
「それで?二人はお父様を殺害した後に、カーズィム叔父様を新たなるアクトゥムの当主にして、贅沢三昧しながら楽しんでいるということですか?」
「贅沢三昧しているかどうかは今の時点では分かりません」
ウィサーム殿下はにこりと笑って言いました。
「皇都ではマウザとアタファ親子が共謀をしてバッサムを殺したのではないかという噂がまことしやかに流れているのです。そういった噂が流れている以上、二人が安穏と幸せに傍受しているのか?疑問は残りますね」
殿下は膝の上で両手の指を組むと、少し前のめりになりながら言いました。
「この一連の流れは皇位を争いに関連している。そう言ったことを貴女は覚えていますか?」
「殿下は確かにそのようなことを言っておりましたが」
「そこで提案なのですが」
殿下は真面目な顔で言いました。
「ダラール嬢、どうか私の妻になってください」
「はい?」
「ダラール嬢に私の妻になって欲しいのです」
「一体、何の冗談を」
「冗談ではありません!」
殿下はにこりと笑って言いました。
「これから帝都に帰った貴女は、牢屋に入れられたカステヘルミ嬢とロニア嬢を助け出さなければならないと考えているのでしょうが、貴女の後ろ盾となるアクトゥム家は叔父の手中に収まってしまったのです」
殿下はニコニコ笑って言いました。
「一体、どうやって二人を救出するというのですか?」
「ちょっと待ってください!」
私は殿下に向かって言いました。
「私と殿下の結婚と、二人を助けるのと、どういった関係があるというのですか?」
「関係はありますよ」
殿下は前のめりとなって、
「結婚すれば、無敵の私が、貴女の後ろ盾になるのです」
私の手を取って言いました。
「そうして私が貴女と結婚をすれば」
「殿下は名門と言われるアクトゥム家を求めていらっしゃるのですか?殿下が私と結婚をすれば名門家を手中にすることが出来るから」
「アクトゥム家なんかいりませんよ」
殿下は真面目な顔をして、
「私はたった一人の妻さえいればそれで良い、そういった立場を手に入れたいだけなのですよ」
と、言いました。
「たった一人の妻?」
「そうですよ、貴女と結婚をするのなら、貴女以外の妻を娶る必要がなくなるのです」
「たった一人の妻にこだわっていたのは私の父ですよね?」
私は目の前に座る殿下に問いかけました。
「父が亡くなってしまったので、私をたった一人の妻にしなくても良くなったということになるのでは?」
「そんなわけがありません」
殿下は外に広がる花畑を見ながら言いました。
「恵の女神は嫉妬深く、複数の女性を愛でるような男は認められないのですから」
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ③ が令和8年4月1日に発売となります!!現在掲載中のロニアとカステヘルミの五年後の物語が3巻のお話となりますので、合わせて読んでも面白い!!掲載中のお話もどんどんと展開していくので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです!!
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