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僕と俺の目指すモノ  作者: しょう
7/12

第3話 駆け引き

この話は、私自身が気になる点がありますので、時折加筆すると思います。

ですが、話の流れは変わりませんので、普通に読んでいただけたらと思います。


今日中にもう1話更新するかもしれません。

更新するとしたらですが、午後6時ごろまでに更新すると思います。

 ゴブリン。

 それは、人型の形をした醜悪な見た目の魔物である。

 背丈は、90センチ程で平均的な身長の男性の腰ほどの高さだ。

 身体の色は、黒に近い濃い緑。


 基本的な武器は特になく、襲った人族から奪った武器を使う。

 武器への理解を深め、扱いが上手くなるにつれて進化をすることもある。


 一般的に厄介なことで有名な上位のゴブリンとしては、弓を扱うゴブリンアーチャー、初級の攻撃魔法を扱うゴブリンメイジである。

 この2種が厄介なのは、遠距離からの攻撃を可能とする種だからだ。

 更に、進化時に背丈が変わらず、ただのゴブリンと一瞬では見分けがつかないのも厄介な点だ。


 また、遠距離から攻撃できるこの2種は他のゴブリンたちより賢く、盾役になりそうな部下を連れていたり、獲物を罠にかけたりする。

 

 この2種のゴブリンに遭遇して、生き残れるのは中級以上の冒険者のみと言われている。

 つまり、戦闘訓練を受けていない者や初級の冒険者が遭遇した場合は、ほとんどの者が死ぬだろう。

 余程の幸運がなければ…




 side フィロス


 私、フィロスは上級の冒険者だ。

 基本的な拠点として利用しているのは、サクリフィスという街である。

 ほどほどに大きな街であり、ある程度の収入があれば安全に暮らせる街だ。


 ただし、大きな街にはスラムという場所が出来てしまう。

 私は、専らスラム出身の孤児が集まる孤児院に寄付をしに行っている。


 偽善かもしれないが、私は全ての理性ある生き物は幸せになる権利があると思っている。

 だから、救いを求めたものには、自分のできる範囲で手を伸ばし救えるように努力している。

 上級の冒険者になれたのも弱い者を救えるように努力した結果だ。

 と言うのも、他者を甚振ったり、生きている者に悪影響を与える魔物を倒し続けたからこそ上級冒険者になれたのだ。

 

 そんな私の目の前で、今、青年がゴブリンに囲まれている。

 早く彼を助けなければと思ったが、一度気持ちを落ち着けて敵のゴブリンを観察する。


 ゴブリン程度なら何も考えずとも討伐できるが、いまは保護対象がいる。

 彼を安全に助けるために、上位のゴブリンが何体いるか確認しなければならない。

 もし、アーチャーやメイジがいるならば、彼から上位種のゴブリンを遠ざけなければならない。

 アーチャーは特に悪知恵が働く。

 人質を取ったりするのだ。他にも罠を用意するのは大抵ゴブリンアーチャーだ。


 冷静に気配を消し、青年の周りのゴブリンを観察する。

 残念ながら、今の状況で最悪のパターンであるゴブリンアーチャーがあの3匹のグループのリーダーのようだ。

 だが、青年と私との間にいるのは、ただのゴブリンだ。

 このまま青年が動かなければ、少し乱暴な方法になるが、彼を救出するとしよう。

 

 

 

 side 主人公

 

 僕は謎の生き物に囲まれている。

 進行方向に2匹、背後に1匹。

 この危機的状況で生き残るためには戦って勝つしかないと覚悟を決め、敵との距離を測る。

 背後にいるのとはある程度距離があるようだ。ただ、前方の敵は背後にいる1匹より距離が近い。

 そこで僕は、敵の攻撃手段を観察する。


 2匹の武器は、ただの木の枝だ。

所詮は木の枝と言っても、この謎の生き物の膂力を甘くみてはいけない。

 背後の1匹に太ももを貫通されたのだから。

 2匹は接近戦をすると考えていいだろう。


 だが、背後にいるのは弓を持っている。それもかなり腕がいいはずだ。

 馬は的としてそれなりの大きさがあるが、僕の身体…それも太ももを狙って射抜けるのだとしたら、外していた一本はおそらくワザと外しているはず。

 それにあの場で射抜けなかったとしても、僕が走って逃げている間に僕を殺せたはずなのだ。

 ノロノロとゆっくりとしか走れない僕に追いつくことができたはずなのだから。

 

 つまり、あの弓を使う生き物は、俺の反応を見て楽しんでいる。

 状況的にも直感的にも楽しんでいると分かる。


 悔しい…

 イラつく…

 殺したい…


 遊ばれているという事実に僕の負の感情が肥大する。

 どいつもこいつも僕を見てニヤつきやがって……。

 

 徐々にだが、負の感情の中で怒りの比重が増していく。

 僕で遊ぶ敵への怒り、何もできない自分への怒り、僕をこの状況に追い込んだ豚主人への怒り。

 あまりの怒りに理性が吹き飛びそうになる。

 そんなときだ。


『お! そろそろ“俺”の出番か?』


 そんな声がどこからともなく聞こえてくる。

 頭の中に直接響くような感じだ。


 僕は、引っ込んでろと心の中で言う。

 だが、彼は楽しそうに言う。


『おお、おお、口調変わってんぞ~』


 どこか挑発するような言い方。

 僕を怒らせようとしている。

 そう確信できる。


 この場は、“僕”が何とかする。

 

 そう僕が言うと、彼は


『ふぅん、煽ってやってんのに怒らねぇのか……、つまんね』


 とても不機嫌そうに言った。


『だが、死にそうになったり、ビビッて身体が動かなくなったら、強制的に身体を奪うからな。俺はこんなとこで死ぬのは絶対に嫌なんでな』


 それは、僕もだよ。

 まだ、何もしてないんだから。


『分かってんならいい。あと、1つ助言というか、お前が気付いてないことを教えてやろう』


 なに? 手短にお願い。


『1人気配を隠して、俺らを見てる。……たぶん、人間だな。それも中々強そうだぜ』


 ホントに? 僕には分からないだけど……。


『マジだ。ま、その人間だけで倒せそうだから。俺は引っ込むわ。おめぇ、死ぬんじゃねぇぞ。俺まで死ぬからな』


 わかってるよ。しつこいな。


 僕のその言葉を最後に彼の言葉が聞こえなくなった。

 未だにニヤニヤとこちらを見ている生き物に苛立つが、さっさとこの状況を崩そうとしよう。

 隠れている人間がどう動くかは分からないけど、僕は僕で動くとしよう。




 side フィロス


 私は青年を観察していた。

 青年の行動次第で動きを変えるつもりだからだ。

 一番面倒なのが、アーチャーの方に攻撃を仕掛けることだ。

 単純に私との距離が出来てしまうのもあるが、私が突撃したときにあのアーチャーが青年を人質にとる可能性があるからだ。


 そう考えている間に、青年は自分の足に手を伸ばしていた。

 ゴブリン共はニヤニヤして見ているだけだ。

 青年が何をしても無駄だと思っているのだろう。

 私もそう思っているが、今はまだ様子を見よう。


 よく見れば、足に矢が刺さったままだったようだ。

 素人判断で抜かなかったのは賢い選択だが、今更なにをするつもりだ?

 そのまま見ているとなんと青年は、矢尻側をある程度の長さで折って握りしめていた。

 見ているだけで痛々しいが、なるほど、武器になるものを用意したわけだな。


 そして、彼はアーチャー側へ振り返った。

 面倒なパターンになってしまうようだ。

 そう考えた私は、いち早く青年との距離を詰めるために飛び出した。

 青年がアーチャーに接近する前にたどり着かなければ。

 青年がアーチャーに向かった瞬間にゴブリン達は、彼の後を追いかけていた。


 拙いぞ……。

 アーチャーは、もう弓を引いている。

 ニヤついて手を抜いているだけじゃなく、いつでも弓を引けるように矢を番えていたからだろう。

 後は、もう矢を離すだけだ。

 

 拙い、拙い

 そして、矢は放たれた。

 敵がいる前で目をつむることは出来ない。

 だからこそ、彼から目を離さずに見ていると、彼は急にしゃがんだ。

 青年は見事に矢を交わしてみせた。

 だが、後から来るゴブリンにやられる。

 そう思った私は、注意を引き付けるために吠えた!


「おおおおおおぉぉぉぉ!!!!」


 青年も動きを止めるかと思ったが、少しビクッと体を震わせただけで、アーチャーへ突撃していった。


「チッ」


 思わず舌打ちをしてしまう。

 ここで青年も動きを止めてくれたら、楽に助けられたのに……。

 私は、ゴブリンに追いついた。

 青年への注意は、少しだけしか向けられなくなるが、動きの固まったゴブリンを倒すことにした。

 私は、ゴブリンの横を通り抜く瞬間に剣を抜き、ゴブリンの近くできないだろう早さでゴブリンの首を切り飛ばした。

 2匹いる内の片方を倒した。

 だが、私は止まらずに青年へ向かって走ろうと、彼へ目線を戻すと、片目を抑えて地に膝をつくゴブリンアーチャーがいた。

 

 

 

 side 主人公

 

 正直、賭けだった。

 ここまでの弓を持つ生き物の動きが僕にとって都合よく考えた場合にのみ成立する賭けだ。


 1つ目の賭け……それは僕が弓を持った生き物の方へ反撃に動けば、俺の頭もしくは胸当たりを狙うだろうということ。

 弓を持つ生き物は、終始僕の反応を見ていた。

 それも僕の苦しむ姿を見て、楽しんでいた。


 だからこそ、囲まれたときに動きを止めたら僕に飽きて、殺しに来ると思っていた。

 もし、前方にいる2匹に反撃して逃げようとしたら、苦しむ姿を見るために、また足を狙うだろうと思っていた。

 だが、弓の持つ方へ僕が反撃したら、面倒になって僕を殺すと思っていた。

 この生き物は、僕の苦しむ姿を見たいのだ。それも、僕の反撃が届かないところから。

 安心かつ安全なところから、苦しむ姿を見て楽しむ。だが、自分が同じ土俵に立って泥臭く戦うのは、嫌う。

 そんな卑怯な敵だという賭け。

 

 1つ目の賭けも僕にとってかなり都合の良い考えだったが、2つ目はもっと僕にとって都合が良い考え、ほとんど妄想というものだ。

 行動の大前提になっている、弓持ちの生き物が外していた一本はワザと外しているということ。

 この大前提そのものが頭のおかしな妄想といっても良いだろう。

 そもそも、外したのは生き物の実力のせいで外し、太ももに当たったのはマグレ当たりだったかもしれないのだから。

 だから、この大前提の賭けに勝てなければ、1つ目の賭けが成立しないのだ。

 

 そして、僕はその賭けに勝った。

 矢の軌道は、僕の頭を狙っていた。

 そして、矢をかわせた。

 ここまでは、計算通りだった。

 だが、ここで予想外だったのが、森で気配を絶っていた男が吠えながら、突っ込んできたことだ。

 

 少し驚き一瞬動きが止まったが、僕のやることは変わらない。

 この弓を持つ生き物に一撃を入れる。それも僕に与えた以上の一撃を。

 

 僕は、男を無視して、注意が男に向いている弓を持つ生き物に接近した。

 そして、目に矢尻を突き刺した。

 このときは男に感謝した。

 注意を引き付けてくれたおかげで、余裕で目的を果たせたのだから。


 僕の目の前で地に膝をつく生き物。

 僕の内心では、「ざまぁみろ」と思っていた。

 誰かを殺すなら、弄ばずに直ぐに殺せばよかったのだ。いつ反撃されるか分からないのだから。

 この生き物のおかげで、そのことが分かった。それがこんな街道で分かったのだから、僕にとっては予想外の収穫だ。


 最初は、訳も分からずにパニックになり逃げたが、なんとかなった。

 そう思って力が抜けた瞬間、膝から力が抜けた。


 目線の高さが目の前の弓持ちの生き物と合う。

 そして、直感的に拙いと思った。

 その直感は正しく、弓持ちの生き物は矢を握り込んでいた。

 このあとの行動なんて誰にでもわかる。

 案の定、僕の方へ矢尻を向けて手を振り上げた。

 

 死ぬ……。


 そう思い、目をつむった。

 だが、いつまで経っても攻撃がくることはなかった。

 ゆっくり目を開けると、生き物の首が宙を舞っていた。




 side フィロス


 青年が膝から崩れ落ちたとき、拙いと思った。

 理由はない。ただの勘だった。

 私は勘に従い、青年の元へ急いだ。


 どうやら私の勘は当たったらしい。

 ゴブリンアーチャーは、近くに落とした矢を握り腕を振り上げた。

 青年があわや攻撃されるという瞬間までに、私はアーチャーへ接近できた。


 そして、私はアーチャーが攻撃する前に、矢を持つアーチャーの腕めがけて腕を振った。

 私の腕を振った速さから、かすかに剣の軌道が見える。

 その剣が行きついた先で、血を飛ばしながらアーチャーの腕が宙を舞う。

 再度、私は腕を振るう。

 私の目の前には首のなくなったアーチャーの身体が残っていた。

 

 いろいろと青年の行動にやきもきしたが、決着はあっけなかった。


もしよければ、このページ下部にて小説の評価をしてくださると嬉しいです。


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