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僕と俺の目指すモノ  作者: しょう
3/12

プロローグ ???視点2

2話と3話は、内容的に少し被っていますので、3話目は流し読みぐらいでちょうどいいかと思います。

しっかり読まれる方には、少し内容がしつこく感じるかもです。

 俺は、今、誰かの感情を感じ取っている。

 何故そんな風に感情を感じ取っているのかは分からない。

 意識のなくなる直前まで怒りで満たされていたのに、今では誰かの流れ出てくる感情を感じ取っている。


 彼の記憶の途中まで、悔しさと悲しみを強く感じ取っていたが、この人の感情で一番強かったのは、怒りだった。

 いろいろな意味の怒りを感じ取り、少し彼に興味を抱いた。

 自分に似ていると思ったからだ。

 だから、彼の記憶をのぞき込むことにした。


 一番新しい記憶を見た。

 おそらく彼は死ぬだろう。

 ここ数日、熱が下がらないようだったし、意識すらはっきりとしていない。

 どうせ死ぬなら、昔の記憶も覗いても問題あるまい。

 ここまでの感情を味わった理由を知りたいからな。

 彼も夢で自分の記憶を振り返るだろうが、俺の知ったことではない。

 さぁ、俺にすべての記憶を見せてくれ。


 彼は、奴隷のようだった。

 奴隷が複数人いるようだから、貴族や豪商だろうか。

 まあ、今更そんなことを気にして意味があるわけでもない。

 特に気にせず、記憶を見ていく。

 

 彼は、なかなか活発な子どものようだ。

 4歳だろうか、5歳だろうかで周りに内緒で外に出たようだ。

 案の定、使用人かだれかに見つかったようだが。


 彼は、屋敷の主のところに連れていかれたようだ。

 彼はよりにもよって主を「太ってるおじさん」と言ったようだ。

 彼自身、自分がどういう立場の人間かを理解していなかったのだろう。

 5歳ぐらいの子どもに立場を理解するのは、難しいだろう。

 

 そのあとは、主からの一方的な暴力を受ける記憶のようだ。

 一言、「太っている」と言っただけで、過剰とも言える暴力をふるっているように見える。

 そのときの彼の感情が流れ込んでくる。


 自分の知らない存在への恐怖、殴られることへの恐怖、泣いても暴力が止まらないことへの恐怖。

 

 彼の気持ちは、恐怖で溢れていた。

 そして、彼の気持ちに理不尽な暴力への怒りが湧く。

 シンクロするように俺も、この豚主人に怒りが湧く。

 そのまま感情に流されないように、なぜ怒りが湧いたのか考えた。


 似ていた。

 俺が受けていたイジメに凄く似ていた。

 無抵抗な俺に対して、殴る蹴るが止まらない。

 沸々と自分の中で怒りが増していくが、落ち着くために少し彼の記憶を覗くのを止めた。

 僕が落ち着くために記憶から目を離した間に彼は、意識を失ったらしい。


 本を速読するような要領で彼の記憶を一気に覗く。

 ざっと10歳になるぐらいまで、記憶を一気に見た。


 彼の主は、一言で表すなら“クズ”だった。

 無抵抗の者を殴る蹴るとやりたい放題。

 彼にとって、そこまで印象に残る記憶ではなかったようだが、使用人が彼に水をぶっかけている記憶もあった。

 寒い時期でも容赦なく水をぶっかけているのを見たときは、腸が煮えくり返りそうになった。

 俺も受けた経験があるから、どれだけ寒く惨めな気持ちになるかが分かる。

 小さい子どもに水をかけるなんて信じられなかった。


 さらに、衝撃を受けたのが、剣の扱いやすさを調べるように彼を剣で刺したことがあったときだ。

 いくらなんでも刃物を使うことはやりすぎだ。

 だが、彼の主は、彼のことを使い捨てのおもちゃのように扱う。

 徐々に自分の怒りが膨らんでいくのを自覚する。

 それでも、彼のために出来ることがあるわけでもない俺は、気持ちを平静に保つように我慢する。


 10歳を過ぎたころになると、彼も感情を抑えて泣くようなことは、なくなっていた。

 だが、彼の感情と思考を直に感じる僕は、彼の“どうして”という疑問と悲しみが俺の感情をかき乱す。

 彼は、どこか狂っているのだろう。

 そうでなければ、これまでの仕打ちを我慢できるわけがない。

 同時に俺の心も狂っている。

 怒りを抱くとはいえ、彼の凄惨な人生を見ていられるのだから…

 

 この頃、彼は初めて魔法を直に見て感じたようだ。

 彼の豚主人は、余程のクズらしい。

 彼の我慢するさまを見て、醜く顔を歪め楽しんでいるようだ。


 一方で彼はというと、魔法の存在に感動しているようだった。

 彼自身に使い方がわからないとなると、すぐに絶望していたようだが。

 それでも、魔法を覚えようという、強い意志のようなモノを感じた。

 俺も魔法という存在には、心を動かされた。

 俺のぼんやりとした記憶に魔法という存在はなかった気がする。


 そんな日々を過ごして、彼は今に至る。

 彼の記憶の殆どが豚主人からの拷問ともいえる暴力の数々だった。

 怒りが堪えられない。

 何よりもここまでの記憶を見た中で、彼は抵抗らしい抵抗をしていなかったのだが、俺の癇に障った。

 だからだろうか。

 言葉が届くはずもないのに、彼に声をかけてしまったのは。


「おい! 悔しくねぇのか!!」


次話でプロローグ終了です。

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