第6話 街へ入るには
今回、短めです。
ちょっとした説明回です。
フィロス様が僕に名前をくれた後、フィロス様がどういった仕事をしてきたのかなどの話をしてくれた。
どうやらフィロス様は、上級冒険者という方だそうだ。
よくわからなかったのだが、フィロス様は簡単に冒険者について教えてくれた。
冒険者というのは、庶民から貴族までの方々から依頼という形でお金とともに頼み事を聞き入れ、その頼み事を成し遂げる方々のようだ。
詳しくは、ギルドという組織を経由して依頼を貰うようなのだけど…
そして、冒険者というのは等級というものがあるようで、初級から上級までの等級が一般的に知られているようだ。
実は上級の上に特級なるものがあるそうだが、フィロス様はまだ特級の方とお会いしたことがないそうで、フィロス様は「特級になれるものは本当に化け物だ」と言っていた。
冒険者について教えてくれたフィロス様は、自身で体験した依頼のことを話してくれた。
オークと呼ばれる豚を二足歩行にしたような魔物、コボルトと呼ばれる犬の顔を持つゴブリンと似たような背丈の魔物、ウルフという狼をそのまま大きくしたかのような魔物。
フィロス様はさまざまな魔物と戦ったことがあるようだ。
ただ、フィロス様は魔物の生態調査などの調査や斥候のような仕事は、苦手にしているようだ。
フィロス様が専門にしているのは主に討伐だそうで、特に庶民の方々に被害が出ているような依頼を重視しているそうだ。
そうして、徐々に街が見えてくるとフィロス様は、街に入るときの規則を教えてくれた。
「ウィン、今から街に入るときに何を確認されるかを教えるぞ。奴隷には関係ないが、奴隷から解放されると必要な知識だから覚えていてくれ」
「はい」
「まず一つ目だ。」
そう言いながら、フィロス様は人差し指を立てた。
「街に入るには、身分証というものがいる」
「身分証ですか?」
「そうだ。私のような冒険者は、ギルドで冒険者に発行されるカードが身分証になる。また、街で暮らしている者は税を納めている者に限って、その街を治めている者……、つまりは領主だな、領主が発行するメダルというものが身分証になる」
「メダルですか?」
「ああ、お金のように丸い形に削った木の板だ」
フィロス様の言葉に僕は疑問を覚えたので、素直に質問してみた。
「そんなものでは、身分の証明にならないと思うのですが……?」
「ウィンの言う通りだ。だが、すべての民を把握することなど不可能なのだ。だから、領主は街の者たちを管理しているという体裁さえ守れていればいいと思っている」
「そうなんですか……」
あまりの領主のいい加減さに驚いてしまった。
フィロス様も領主に思うところがあるようで、表情に影が差しましたが話を続けてくだれました。
「まぁ、領主に関する不満は置いておこう。ちなみにだが」
「はい」
「ウィンは私の奴隷という身分で街に入るから、身分証は今は必要ない」
「わかりました」
「次に二つ目だ、これが一番重要だ」
そう言って、フィロス様は中指を立てる。
「犯罪歴というものを調査される」
「犯罪歴ですか?」
「そうだ。街に入るときに身分証がいると説明したな?」
「はい」
「その身分証を持っていない者を主に衛兵が調査するのが、犯罪歴だ。衛兵というのは街に入る前に身分証を確認する者、いわば門番のような存在だな」
「門番ならわかります」
「ならいい。犯罪歴の調べ方は、球体の魔道具に手を乗せて衛兵の質問に答えるというものだ。ちなみに、別の街から来たかどうかも球体の魔道具を使う」
「その魔道具? というものは、何が分かるのですか?」
魔道具というものについては、よくわからないのだが、話の腰を折らないように質問をした。
フィロス様には、僕が魔道具という物自体が分からないという事がばれてしまったみたいだが……。
「魔道具は魔法を施された道具のことを言うのだが、街に入るときに使われる魔道具は衛兵の質問に嘘を言っているかどうかが分かるんだよ」
「ほぇ~、魔道具って凄いんですね!」
「そうだが、衛兵の魔道具には欠点があるんだ」
「欠点ですか?」
「例えばだが、“法に抵触するようなことをしたか?”という質問に、人を殺したことのある人物が“いいえ”と答えたとする」
「はい」
「普通なら質問に答えた者は嘘をついていることになるが、その人物に罪の意識がなければ、魔道具は反応しないんだ」
「え?」
「驚くだろ? だが、これはある意味で仕方ない事なのだ。人を殺すことは罪とはいえ、盗賊などの法に背く者を殺すことに罪を覚える者はいない」
「ということは、人を殺すことに忌避感のない人は魔道具に反応しないということですか?」
「そう言う事だ」
ここで注意事項は終わりなのか、フィロス様は言葉を終わらせてしまった。
そこで一度、自分の中で自問自答をしてみる。
奴隷という身分なので、フィロス様について行けば街に入れるということは分かっている。
ただ、僕はここに来るまでに御者の者を殺している。
そのことに忌避感はあるのか、と自分に問いかける。
そして、ふと思った。
少しも忌避感がないのだ。むしろ、仕方のないことと思っている自分がいることに驚愕している。
ゴブリンと出会う前はイジイジと考えていたはずなのに、少し時間が経っただけで御者のことを忘れかけていたのだから。
僕は実は恐ろしい人間なのではないのだろうか。
豚主人も暴力を振るうことを快楽としていた。
自分もそのような人間になっていないかと急に不安になった。
そして、少し重たい空気感を出しながら街の門に到着した。
これから初めて街に入るというのに、ワクワクとした感情はなかった。




