1話
第一話です。ほとんど進展は無いですがゆっくり付き合っていただければと思います。
選別により地獄行きとなった魂は次のステップへと移行する。そのままでは地獄へは行けないのである。選別された魂をもう一度選別するのだ。魂の持つ徳を数値化したものを算出し、ある一定以上の徳の魂は、新たな地獄の鬼として転生することができる。しかし、一定の数値を下回った魂は、地獄の本業である鬼からの洗礼を受けるべく、亡者として転生する。亡者は鬼による罰を受け終わった後、鬼として地獄に転生できる。罰の内容や長さは魂によって異なる。この選別の作業は鬼にはできないため、機械によって行われる。冥によって地獄行きとなってしまった魂。素羅亞騎の魂は2回目の選別をするために徳が数値化される。もともと天国へ行くことのできる魂なので、基準値を下回ることなどない。基準値を圧倒的に上回った数値を叩きだし、鬼として転生すべく、肉体を選ぶ段階に入る。ここでは魂は仮の肉体を与えられ、意識を取り戻し、地獄での転生先の肉体をある程度設定できる。
(ここ、どこだ・・・?)
亞騎の魂は意識を取り戻した。辺りは薄暗く、よく見えない。
「おう、若いの!残念だな。地獄へようこそ」
「えっ」
声を頼りに首を向けると、そこにはよく校長先生とかが座っている偉そうなアレに腰をおろしているスキンヘッドで上半身裸のムキムキの男がいた。筋肉はこの暗闇の中でもテカテカと輝いている。
「地獄?俺死んだんすか?」
「おっ、意外と冷静だな、最近のやつはどうにも事実を受け入れられん奴ばっかで困ってたが今回は楽できそうだ」
「そっか、俺死んだのか・・・って、地獄!?」
よく見ると男の頭に角が生えていた、亞騎は男が鬼であると理解する。
「そうだ、ちゃんと選別されているから間違いない」
間違いである。
「う、嘘だ!俺はなんにも悪いことしてないぞ!!」
「ハッハッハ!悪いやつはみんなそういうんだな~これが!」
「ほんとだって!何もしてない!」
屈しない亞騎に対し、男は少しムッとした表情を見せる。
「おいおい、往生際が悪いな。よく思い出してみろ、あんなことやこんなこと、後ろめたい悪行をしてきただろ?それを何もしていないだなんてちゃんちゃらおかしいぜ」
(あ、悪行・・・?)
こんな口ぶりだが、プライバシー保護のためどんな悪行を働いたかなどは、この男にはまるでわからない。ただ、地獄に落ちるような人間である、悪いことはしてないわけがないのだ。亞騎のような例外を除いては。そして亞騎は見に覚えのない悪行を思い出すため、必死に頭を回転させる。
(ま、まさか中学の時に毎日朝はやく登校して好きな子の椅子に座り、誰も居ない教室で椅子を人肌に温めていたことか・・・?)
もちろんそんなことでは地獄行きにはならない。亞騎がそのことを思い出し、顔を少し上げ男の顔を伺うと、にやりと笑みを浮かべた。
(こ、これだーーッ!間違いない!まじかよ、あんなちょっとした青春の1ページで俺は地獄に行くのかよ!死にてぇーーー!)
亞騎は生前を思いだし、汗が大量に溢れてくる
「フッ、顔色が随分かわったな。やっとのことで自分の悪事を思い出したってか?ふざけるなよ、貴様はその行いを魂に刻んでいなきゃならん。お前が奪った人生はいろんな可能性があった、それをお前は、摘んだんだぜ」
「え・・・」
(何かあったのか?あの女の子に?俺が椅子を温めたせいで。)
「え、だと?白々しいな。十分に反省しろ殺人者が」
(好きな子死んでたー!!死因は何だよ!人肌の椅子で死ぬ人間がどこに居るんだよ!)
亞騎の汗はよりいっそう吹き出す
「なにを黙りこんでる。貴様にそんな権利はないぞゴミクズめ。謝れオラ」
(ま、まてよ、まさか自殺か?自殺に追い込んじゃったのか?椅子のぬくもりが気持ち悪くて自殺しちゃったのか??そういえばあの子3年の春に転校したけど。あれって死んでたの!?)
「す、すいませんでしたーーーッ」
亞騎は謝る必要などないが当然こんな状況に置かれては、謝る他なかった。
「チッ、俺に謝ってどうする。反省するくらいなら元からそんなことするんじゃねえよ」
(なんだこのおっさん!?さっきから言ってること滅茶苦茶じゃねえか)
「あ、いまうざったいなーとか思っただろ。わかるよ?おじさんこの職続けて長いからね。見通してるよ?全部」
(ウゼェエエエエエ!!)
「まあ、そんなお前に反省の場をあげてやるっていうのが地獄だ、じっくりしごかれろ」
「はあ・・・」
「ここはお前が転生する鬼の肉体を選ぶ場所だ。背丈や体重、体のパーツを好きなように選べる」
「あれ?鬼になるんですか俺」
「そうだ、お前は悪人の中ではそこそこ悪いくらいだ、まあたちの悪いチンピラってとこだ。よって地獄でのお仕置きを受ける必要はない。鬼となり地獄で生活するだけだ」
(じゃあなんであんなにキレてたんだよクソジジイが)
「で、どうする?好きなようにできるけど?」
「うーん、まあ生前と大体同じでいい」
「ほんとか?なんでも変えられるんだぞ?前の貧相なだっさい体になっちゃっていいの?」
(ほんっとムカつくなこのジジイ。ん?まてよ、なんでもか・・・)
「その、ちょっといいか?」
「ん?なんだやっぱりなにかあるんだな?」
亞騎は『なんでも』という言葉に釣られた。
「チ、チ○コは大きくでき…」
「無理だ」
表情豊かだった男はこの上ないくらい無表情になっていた。そこはかとなく姿勢も良くなっているような気がしないでもない。
「くっそぉおおおおおおおおおおおお!」
亞騎は泣き床に突っ伏す。
(なんでもじゃねえじゃねえかクソ!ちょっとでも、ちょっとでも期待した俺がバカだった……)
「で、もういい?おじさんまだ仕事あるからさ」
爽やかな雰囲気で男が話す。
「い、いやまだだ。その、ちょっとイケメンにしてくれ」
本来の願いがかなわなかったため、せめてこのくらいはという気持ちで亞騎は言葉にした。
「へぇ~~」
ニヤニヤして男が見つめてくる。
「そーなんだ、ふ~ん」
その男の顔をみて亞騎は顔を伏せる。
(くっそぉおおおおおお・・・・)
亞騎は赤面するが、これだけは負けてはいけない。ここで負けては漢じゃない。亞騎の中の精神がそう語りかけてくるようだった。キリッと表情を変えスっと立ち上がる。まるでダメージがないかのように見せているのだ。
「注文は以上だ。はやくしろよ」
「ん?なんだつまらねえな」
勝った。漢としての誇りを亞騎は貫き通した。男は要望を聞き終えると机にあったPCのようなものをカタカタいじり始めた。少しするとエンターキーをターンッと弾く。
「終わったぞ、そんじゃいってら」
男が机のボタンをポチッと押した。次の瞬間、足元の床がパカっと開く。
「え……?」
一瞬宙にとどまった気がした亞騎だったが、次の瞬間。
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
亞騎は重力に逆らうことなどできず、暗い穴へと落ちていった。亞騎がいなくなり、シーンとした空気が流れる。
残った男は小さく、独り言を呟いた。
「あいつほんとに悪人か……?」
ありがとうございました。




