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健全に生きてきた俺が地獄に居る解説を頼む  作者: あどれな林檎
第一章
3/10

2話

ちょっと下ネタありです。タグにR15を追加しようと思います。

「ハァッ、ハァッ……」


冥と死依はバイトを終え、自分らの失敗を隠すために走っていた。向かう場所は転生の場である。ここでは、罰を受ける必要がない魂が転生すべく鬼の身に魂を移し、新たな人生を踏みだす第一歩の場所だ。子供に恵まれない夫妻の鬼や、人手の足りない仕事場の鬼、その他諸々の理由の鬼達が、ここに生まれる鬼を引き取りに来る。


「早くしないと、違う人達に引き取られちゃうよ!」


死依が走りながらに話しかける。


「そうは、いっても、ハァ、仕方ないじゃない……ッ」


死依に比べ冥は余裕が無い、2人の速さと体力に差があるのだ。だからといって冥が遅いというわけではない。死依が速すぎるのである。もともと2人は鬼としての素質が違う。いわゆる速さは死依の得意分野である。死依のペースに冥がついていくとなると当然厳しいのだ。


「じゃーこの際だし一気にいこっか!」


先頭を走っていた死依が振り向き、ガシっと冥の手をつかむ。


「へっ?」


そのまま死依は冥の手を、握りつぶす。


「痛ッタァアアアアアアア!!!???」


すると冥の体が一時赤黒い炎に包まれる。すぐに炎が収まると冥の髪と目は赤く染まり、角の形状が少し変化した。いわばこの姿は本物の鬼になっている状態と言える。これを地獄では『巡り《めぐり》』という。真なる鬼の血を体に巡らせることからきている。ある程度の傷を負うと、この状態に強制的に持っていくことが可能だ。


「なっにすんのよぉおお!!」


冥は掴まれている腕を開放すべく死依をぶん投げようとする。


死依は冥に投げられそうになるが、宙に浮いた後、冥の手を掴んだまま着地する。


「よいっしょ!」


そして死依はかけ声とともに、冥から伝わった強大な力を消さないよう、進行方向に腕を振り、冥にそのまま返した。予想してない出来事の連続により、この事態にも冥は対応できなかった。死依が速いように、冥は力の強い鬼である。その力によって、冥は転生の場へと飛んで行く。


「お~飛んだ!」


死依も飛ぶ冥に続けて本気で走る。目的地にはすぐに着いた。

死依が転生の場にくると冥が先に待っていた。巡りはすでに解け、死依に握りつぶされた腕は再生されている。巡りを使うと、大抵の損傷は回復するのだ。しかし心情はまるで癒せない、死依へ向ける目は殺意にあふれている。


「怖いよ、冥ちゃん。ほら、笑顔笑顔―っ」


「あんたねえ……」


「ご、ごめんね。ああするしか無いと思って……」


冥が怒って当然である。早く着いたとはいえ、その方法はまさに狂気だった。


「はぁ、まあいいわ。今回の落ち度は私にあるしね」


「え、ほんと?怒ってない?」


恐る恐る死依が聞く。


「怒ってないわよ。行きましょ」


「うん!」


入り口の自動ドアを通り、転生の場への標識を探す。ここはいわば役場のような場所で、いくつかの案内がある。その中の一つに転生の場があるのだ。


「えーっと、あった、あっちみたいね」


「人はそんなにいないみたいだね。良かった」


事がバレてしまっては只事ではないため、そのリスクの少なさに死依は少し安堵した。標識にしたがって転生の場へと進む。転生の場へ着くと、そこは別れ道になっていた。


「そんじゃ、私はこっちで」


目の前の分かれ道は、『男』と書かれた入り口と『女』と書かれた入り口である。冥はそそくさと女と書かれた入り口へと向かう。


「待ってね冥ちゃん」


死依はガシっと冥の肩をつかむ。


「ちょっと意味分かんないなぁ~」


ギリギリと冥の肩が鳴る。冥は武力でどうにかしようとする死依に心底震える。


「あんたさっきの全然反省してないでしょ……」


「ん?反省したよぉ~、でもこれとそれとは、別だよ?ね?」


「別じゃな……っ」


ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ


「別だよね~?」


「別ですッ!!!さっきの事とこれは、全くの別ッ!!」


冥は涙ながらに答える。誘導尋問にすらなってない。脅迫である。


「わかればいいんだよ~!」


笑顔になった死依はパッと冥の肩から手を離す。だがその笑顔はまだ凍っている。


「で、冥ちゃんはどっちに行きたいんだっけ?二手に別れないとね!」


震える冥は答える。


「お……」


「お?」


続けろ、というように死依が復唱した。


「男がいいです……」


「そっかぁ~!」


ニッコリと死依が笑みを浮かべる。まるで悪魔である。表向き、死依はいい子だが蓋を開ければ、不良とそう変わりない。


「ちょーど私は女の転生場所が良かったんだよ!ぴったしだね!」


「そ、そうですね……」


こうなると冥はどうしようもない。蛇に睨まれた変えるの如く、自らの命は死依が握っているようなもの。ただひたすら言うことを聞かなければいけない状況である。


「あ、でもどうやって見分けようか。あの白い魂がどの鬼かなんてわからないんじゃない?」


死依がふとした疑問を問う。


「徳を見ればいじゃない。肉体があれば徳は数値化できるもの。きっと表示されているはずよ」


冥がさらっと解決案を提示した。


「そっか、じゃ徳の数が多い鬼を見つければいいんだね」


「そーゆーこと。見つかったら連絡頂戴。一時間粘っていなかったら帰りましょ」


「おっけ、じゃーねー」


冥は男、死依は女の転生場所へと向かう。ここから、素羅亞騎の第二の人生が始まる。

中に入ると、その光景は冥の想像していたものとかなり違っていた。まるで空港の荷物受け取り場所である。U字のベルトコンベアに、服とは言いがたい布をまとった鬼が横たわって動いている。それを見て冥は唖然とする。


「なによこれ、まるで鬼製造器ね….」


止まっていては仕方がない。目的の魂の持ち主を探すべく奥へと歩み寄る。しかしその足取りは重い。冥は男の裸など見たことがない。この光景は乙女には少し刺激が強いのである。


顔を赤らめながら、できるだけ男の鬼達を見ないようにそろり、そろりと移動する。鬼らがまとっている服には、冥の予想どおり徳の数字が書かれていた。ここに訪れる鬼は徳の数値が1~9の者である。0以下の者は罪を償うための罰を受けるように設定されている。しかし冥らの送り込んだ魂は違う。白い魂だったので徳の数値は10を超えるものとなる。それを探して持ち帰る、というだけなら簡単だが、ここに居るはずなのない徳の持ち主なので、周りに見られてはいけないというのが前提条件となる。よって、冥には特定の鬼をここの誰よりも早く発見し、その数値を見られぬうちに持ち帰る必要がある。だが、冥もただのバカではない。冥は自身の着ていた上着であるジャージを脱ぐ。


「よっし、これをすぐに着させれば問題無いわね。問題はいるかどうかだけど……」


とにかく一番に見つける鬼の出てくる一番先の場所へと向かう。次々に流れてくる鬼達の数値を眺める。やはり冥は恥ずかしく、チラチラとしか確認できずにいた。


(もう無理……)


そうも思いながら、目線を下にむけ数値を確認する。


「はあ、一時間なんて長い時間にしなきゃよかったわ。もう帰りたい……」


ちょうどその時である、鬼となった亞騎が流れてきたのだ。その徳の数値は他とは圧倒的に違った。誰が見ても一瞬で異変に気づく。


「にっ、2000っ!?」


亞騎の徳の数値は2000。他と違いすぎる。さらにこの数字は普通に生きてきた人間と比べても高い。平均値以上である。


「やばっ、早く隠さないとっ!」


とっさに上着を構える。そして視線はその対象である亞騎へと向かう。


(……ッッ!?!?)


冥の顔がかぁっと赤くなる、今までの二倍は濃い赤になった。その原因は一目瞭然だった。亞騎はこの状況で、陰部を勃起させていた。その高さ約15センチ。そんな亞騎を目視しながら上着をかけるのは冥には到底無理であった。目線をそらして亞騎に向かって上着を投げる。見事にそれは亞騎の数値を覆いかぶさった。がしかし、勢い余った袖の部分が亞騎の股間を撫でるように刺激する。


「うっ…..」


ビクビクッと亞騎の体が震える。


「ふぅ……」


冥は心なしか亞騎が穏やかな顔になったように見えた。


「なに、いまの……?」


まあいいか、というように亞騎に近寄り手をのばす。お姫様抱っこのような形で亞騎を持ち上げる。


(なんかイカ臭いんだけど、男ってみんなこうなのかしら……?)


少し匂いに疑問を持った冥だったが、知識のない冥はいくら考えようと答えには辿りつけなかった。持ち運ぶようのダンボールがあったので、そこに亞騎をぶち込んでガムテープでしっかりと蓋を閉める。


「これで大丈夫かしらねっと」


ガムテープをちぎって補強を終える。対象の男を確保したのでそのまま電話をして死依と外で落ち合う。


「どだったー?」


死依が様子を聞いてくる。


「まあ、今はなんともって感じね」


「そーだよね。これからどうするの?」


「うーん、とりあえず家に持っていくわ」


その返事に死依が少し驚く。


「その鬼、男だよね?大丈夫なの?なんか臭いし」


「大丈夫よ、血華ちはなもいるし」


「妹ちゃんも女じゃない。ていうか、こういうの冥ちゃん達姉妹むいてないんじゃない?」


冥はぐちぐちとうるさい死依に少し苛つきを感じる。


「うっさいわねー。なんとかなるって言ってるじゃない。このことは私に任せなさい!明日また会いましょう。準備出来たら連絡するわ」


ダンボールを持って冥はクルッと振り向いてそそくさと歩いて行く。

「大丈夫かなー……」

死依は心配だが、心配してもどうしようもないので自身も帰ることにした。帰り道、赤い夕日が不安とともに少し揺らいでいるように見えた。

ここまでは少し書き溜めてあったので一日ペースでしたが、次話以降は更新が遅れるかもしれないです。気長に付き合っていただけると幸いです。

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