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クソガキダンジョン奔走記  作者: 酒粕小僧
チームD-アニマルズ結成

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急な人員変更

 真那華と奏の『深淵の樹海』攻略配信の事前告知を終え数日が過ぎ、翌日に配信が迫っている時のことだった。


「すまない、東京に緊急招集が発生した」


 燐はS級ということで急遽、東京に呼び出されたのである。


「どういう事、お姉ちゃん?」


「どうやら、千葉の大型テーマパークの近くにあるB級ダンジョン『ヘドロ沼』にオーバーフロウの予兆が確認されたから招集がかかったというわけだよ。まったく、本当にタイミングが悪いったらないね。でもギルマスに助っ人を用意してもらったから安心してよ」


 燐はオーバーフロウ対策の一員として招集を受けたのである。


「えっ、僕の知ってる人?」


「うん。そうだね。・・・・・・・・・・・・だよ」


「え?えー!?」


 燐の出した名前は潤の予想外の名前だった。


 場所は東京の高層ホテルで彼は街を眺めている。


「前回の失敗から数日、やはり保険はかけておくものだな」


 木田玄玖郎は長身のスキンヘッドの男に話しかける。


「・・・・・・・・・・・・」


「ダンマリか。まぁ、金を払った分仕事をしてくれれば文句は言わんさ」


 木田は響50年を氷の入ってロックグラスに注ぐ。


「赤間都知事に伝えろ。実験は成功だ。計画はこれから第二フェーズに移行するとな」


「・・・・・・」


 スキンヘッドの男は頷くと赤間に連絡を入れる。


「さて、地獄の再来だ。神よ人々の驕りにどうか鉄槌を・・・・・・」


 木田は狂信的な権能教会の信者であり、その中でもかなり思考が偏っており、スキルやダンジョン資源は神である権能のものという極端な思考をしている。


 だからこそ、スキル研究局を活用しスキルによる力を抑制しようとしたのである。


 神の力は神のために振るわれるものであり、それ以外はそうあってはならないというのが彼の考えだった。


 しかし、その考えは一人のクソガキによって打ち砕かれた。


 そして、『生命と再生』の代行者を人の手で倒されたことにより、許されざる事をした人間に鉄槌を下すべく神の代弁者として立ち上がったのである。


「赤間都知事が第二フェーズとは何だと言っている?」


 スキンヘッドの男がようやく口を開き木田に質問する。


「おや?聞いてなかったか?私が仕掛けたオーバーフロウを起こそうとしてるダンジョンの数を・・・・・・」


「『濃霧水源』は失敗、予備プランとして『ヘドロ沼』、『濃霧雨林』の話しは聞いているがそれ以外は聞いていない!!」


 スキンヘッドの男は木田の胸倉を掴んでいる。


「もう遅い、この様子なら『濃霧雨林』も臨界に届きそうか。そりゃあいい」


 木田は胸倉を掴まれているのに関わらず上機嫌である。


「だから、第二フェーズとは何だと聞いている!」


「それは赤間が望んだことだ。私はただ手を貸しただけ・・・・・・『浅草雷門組』の影響力を削ぎ落とす。結構結構、勝手にやってくれ。それまで貴様が無事ならの話しだがな」


 木田は赤間がどうなろうと知ったことではなかった。


「私は全てを失った。今度は私が全てを奪い、神の身元へ返すのだ!」


 木田の目的は日本の主要部が集中するこの東京で神による鉄槌により陥落させることが狙いであるからだ。


「さあ、その汚い手を離せ」


「!?」


 スキンヘッドの男は訳も分からず胸倉から手を離したのである。


「何を・・・・・・した・・・・・・」


 男はそのまま力無く倒れた。


「私が何も考えずに赤間の息のかかった用心棒を付けると思ったか?貴様は私の目の前に立った瞬間から私の手の平の上だったのだよ。貴様が私の胸倉に掴みかかった時、貴様は私の胸倉に仕掛けた無数の毒針で毒を注入しただけだ。ただの麻痺毒だ。致死量ではないから死にはせんが、ここから貴様を私が殺すことは可能だ」


 木田は身を守るスキルが存在しないため、様々な奇策を巡らせ身を守るしかないのである。


 スキル研究局局長をやっていたこともあり、数多のスキルに対する対抗策も練ってきた。


 その一つが、仕込んだ毒である。


 耐性スキルは研究が難しいこともあり、進んでいないこともあるため、木田は自分の身のあらゆるものに麻痺性の毒を仕掛け、誤って触れた時の為に解毒剤を持ち歩いている。


「もうすぐだ。もうすぐ、旧時代は終わり!新たな時代が始まる!」


 木田は神の鉄槌という名のオーバーフロウを発生させれば、新時代が幕を開けると本気で思っている。


 そして、真那華は潤にチームルームにて燐が招集に向かった話を聞かされる。


「え!それってヤバいじゃん」


「だから、今から急遽魔力を安定させる為にダンジョン攻略を開始しようとしてるんだけど話はそう単純な話じゃなくて『ヘドロ沼』周辺のダンジョンにもオーバーフロウの兆候が見られたから現地のギルドじゃ全然足らないから、お姉ちゃんにも声がかかったみたい」


 潤は燐が参加できなくなった理由を真那華に話す。


「それで、代わりの人員っているの?A級以上じゃないとダメなんだよ」


 真那華は心配そうに潤に話す。


「お姉ちゃんが言ってた。やっぱり、真那華の隣は彼女がやるべきだってね」


「それってどういう・・・・・・」


 真那華は誰のことかは分かったが意味が分からなかった。


「つまり、こういうことよ」


 真那華の目の前には勢いよく扉を開け資格証を持って聖蘭(セイラ)がやって来た。


「え、A級!?いつの間に!!」


「『バルムンク』のA級三人と管理局局員立会いで模擬戦をして実力を認めさせてやったわ。これは昔、燐さんがやった方法だと昴さんから聞いたの」


 しかも、そのA級三人それぞれの条件がタンク、剣士、魔法使いという面子でその中に葵もいた。


「燐さんから任されたこの大役きっちり果たしてあげるわ」


「聖蘭(セイラ)ちゃんなら、ウチも余計な事考えずに任せられるよ」


 真那華と聖蘭(セイラ)はハイタッチを交わす。


(一応、模擬戦の様子を昴さんに見せてもらったけど、アレはもう以前とは別物だよ。真那華はオールレンジだったけど聖蘭(セイラ)もオールレンジ対応可能になってたね。そもそも、あんな事されたら僕でも抜かれるよ)


 潤は葵が受けた聖蘭(セイラ)の不規則なステップからの急な減速からの加速と同時の方向転換で抜かれて魔法使いが倒されたのを見て潤は思った。


(空中だけじゃなくて、地上でも人間の動きやめ始めたんだけどこの人)


 潤でもあの動きは真似するのが難しいのであり、聖蘭(セイラ)の速さがあって初めて実現できる芸当なのである。


(これは真那華には悪いけど黙っていた方が面白そうだね)


 潤はあえて真那華には黙っておくことにした。


「装備も慎重したんだね。装備は胸当てと腰当て、あとはライダースーツみたいにしたんだー」


「これが一番動きやすい装備なのよ。やっぱり重ければ重いほど動きが遅くなるから軽量かつ丈夫で伸縮性のある生地を探して来て作ってもらったわ。アラクネスーツよ」


 聖蘭(セイラ)の胸当てと腰当は聖蘭(セイラ)が真那華から分けてもらった龍の鱗と骨、アダマンタイトで作ったものである。


「アラクネ!?恐山にあるB級ダンジョン『鬼蜘蛛山道』のレアボスじゃないか!!」


「ウチはそいつについて知らないかな。強いの?」


 真那華はアラクネとは出会った事はないから知らないのである。


「その力はA級の中でも上位クラスだと言われてるね」


「生地の素材がどうしたの?」


「ああ、ダメだよ。潤ちゃん・・・・・・聖蘭《セイラ》ちゃんには生地の素材としか思われてないみたい」


 聖蘭(セイラ)にはアラクネは生地の素材としか見えていない事を真那華は言及する。


「確かにアラクネの糸は丈夫だし伸縮性はいい

 けどレア素材じゃないからね」


「いや、奴がたまに落とすアラクネの金糸はレアよ。でも、【錬成鍛治】じゃ使えないのよ。一応持ってはいるけどね」


「スキルで使えないからそんな感じなんだね」


 潤はレア素材ではないから、聖蘭(セイラ)のテンションが高くないと思っていたが、真那華はスキルで使える素材ではないからと予測した。


「流石、真那華ね。こればかりはどうしようもないから仕方ないわ」


 聖蘭(セイラ)の考えは真那華はしっかりと理解していた。


「でも、凄い装備だね。ボディラインしっかり出ちゃってるよ」


「ウチも流石にそういうのは無理かな恥ずかしい以前に着れる自身がない」


 潤と真那華は聖蘭(セイラ)の格好につっこむ。


「私もこの格好は流石に恥ずかしいわよ。でも、これは自分の型を見つめ直して突き詰めた末にこうなってたの」


 聖蘭(セイラ)は自分の型を突き詰めた結果こうなっていたのである。


「いや、だとしてもそうはならないよね」


「それが、聖蘭(セイラ)の場合そうとは言えないんだよね」


 真那華は流石にどこかで踏み止まると思ったが、潤は聖蘭(セイラ)がそんな事で踏み止まるとは思っていない。


「その両手に着けてるグローブというか手甲、何か仕込んでるでしょ」


「真那華なら、流石に分かっちゃうわよね」


 その瞬間、聖蘭(セイラ)は壁を普通に歩き手と足、いわゆる四足歩行のように登り天井に手と足で貼り付いてる。


「あのさ、聖蘭(セイラ)・・・・・・君はどこまで人間をやめれば気が済むんだい?」


「そうね、もう行けるとこまで行ってやろうと思ったわ。これは『超重鉱石』の引力の力から着想を得て作ったグローブとブーツよグローブの裏のガード部分には『オプシディアンシェルダー』の甲殻と『反重鉱石』を使ってるわ」


 聖蘭(セイラ)は既に人間をやめた動きということに吹っ切れ、更にそれすらも突き詰めていったのである。


「『オプシディアンシェルダー』ってアメリカのA級ダンジョンにしかいない怪物じゃないか!わざわざ取り寄せたのかい?」


「コレを作るのにどうしても必要だったのよ。デカい出費だったわ」


『オプシディアンシェルダー』は溶岩の中にいる貝のような怪物である。


 日本には溶岩が存在するダンジョンは存在しないので、どうしても溶岩に適応した怪物の素材が欲しい場合は取り寄せるしかないのである。


「それって、どういう素材なの?その怪物もウチ知らないんだけど」


「僕は重くて硬い素材を求めたと思うけどアレは軽くて硬い素材なんだよね。それよりも僕がツッコミたいのは『反重鉱石』の方なんだよね。わざわざ取りに行ったの?」


 潤は『枯れ鉱山』の隠し通路を出したことにツッコミたかった。


「『ストーンワーム』の駆除が面倒くさいだけね。真那華の言った通り隠し通路の奥には蜥蜴が三匹いるくらいだったわ」


「うん、ウチが知る限りウチ以外だと聖蘭(セイラ)ちゃんくらいしかあの危険な鬼ごっこは出来ないからね」


 真那華は聖蘭(セイラ)なら出来るとは前回の攻略から確信はしていた。


「劣等竜(レッサードラゴン)を蜥蜴呼ばわりなのはツッコミしないんだね」


「え?だってアレ、蜥蜴だよね」


「竜ならレア素材を落とすのよ。アレは竜ではなくただの蜥蜴ね」


 真那華も聖蘭(セイラ)と同じく劣等竜(レッサードラゴン)を蜥蜴呼ばわりしている。


「やっぱり、君たちはお似合いだよ。アレでもB級指定なんだよ」


「潤、アレでもって言ってる時点であなたも私たちと同類よ」


 聖蘭(セイラ)からしても劣等竜(レッサードラゴン)を格下と見てる時点で真那華や聖蘭(セイラ)と同類なのである。


「そうそう、ついでに真那華の配信者に配布する浮遊ユニットに使う分の『反重鉱石』も余分に取って来てるわ」


「え!?本当!!ウチに恩を売ってウチに何をさせたいの?」


「そうね、『深淵の樹海』の配信終わったら久々に模擬戦の相手してくれない?」


 聖蘭(セイラ)は真那華に模擬戦の相手を申し込む。

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