エビかロボか?
無名の剣聖:こいつの言ってる事は正しい、薄々感じてたんだ。明らかに行き詰まってる時に自分より強い怪物を倒した時確かに【剣術】と【闘気】が強くなった気がするという実感があった。最初は強い奴を倒したから強くなっていたのかと思っていたが、そういうカラクリがあったからか・・・・・・というかコイツの技デタラメ過ぎじゃね。
変態の猿:ランクが高く強い者ほど実感出来る事実だな。つまり、吾輩もまだまだ輝けるという訳である。
匿名の猿2:【幸運】しか取り柄がないのに?
匿名の猿1:なんで、こんなのがA級なんだろうか?
匿名の猿4:まぁ、こんなんでも確かに実力と実績はあるからなぁ。
匿名希望6:あのさー、久々に来たと思ったらなんでこの『潜行者』チャット猿で溢れてるの?
匿名の猿3:全てはクソガキの配信者に壊された。
匿名希望6:もしかして、SNSのトレンドに入ってるクソガキ?
匿名の猿4:そいつ
匿名希望6:なんか、国内のダンジョン研究所とスキル研究局が猛抗議を受けてヤバいらしいよ。
匿名の猿2:あのクソガキ怖いもの知らずなのか、ただの馬鹿なのかは分からん。だが、あの生意気でキツい口調の中に『潜行者』を思う愛を感じるんだ。
匿名の猿4:あ、こいつ完全にクソガキに堕ちた。
匿名の猿1:だってそいつ否定ばっかするが完全なロリコンだぞ。お、8本目確定!
匿名の猿3:でも、実際のところ命に関わることだからな。【感知】が可能性の塊なのは知らなかった。
匿名希望6:もしかして、私の【感知】がおかしい原因が分かったの?
匿名希望4:【感知】をすると知らない場所でも地形や道が何故か分かるって言ってた奴か、スキルって成長の過程で使用者に最適化するらしい、だから同じスキルでも多少の違いが出るんだと
匿名希望6:まぁ、道に迷わなくなったからいいんだけどそれを聞いちゃうと複雑な気分かも
真那華は『水泡の湖』を九周しており、これが十周目である。
真那華の目の前に銀色の甲殻のロブスタが現れる。
『出たー!』
『どう見ても機械で草』
『これ本当に食べるのか?』
『思ったよりデカいな』
「うんうん、思ったより早くて嬉しいねぇ」
真那華の存在に気付いた『ボルテックロブスタ』は前足のハサミから光線を放つが、真那華の振るう剣に弾かれる。
「へぇ、いい度胸じゃん。食材の分際で」
『今、光線弾かなかったか?』
『あの早撃ちに一瞬で反応して防げるのがそもそも異常』
『高ランクでも難しい芸当を簡単にやるからなこのクソガキは』
『というか、本当に食材扱いしてるんだが』
「まずはその甲殻を何とかしないとねぇ。【戦乙女魔装・部分解放】」
真那の肩から手にかけて白銀のガントレットが装備される。
『その籠手どっから出した!?』
『たぶんスキルだ』
『【戦乙女魔装】とか言ってたからな。もはや何でもありだな』
『固有スキルの所有者って一つの固有スキルしか持ってないはずだよな。どうなってんだ?』
『ボルテックロブスタ』は電撃の光線を放ち抵抗しているが、真那華が徐々に接近している。
「まだ、抵抗する元気があるんだねぇ。でも、もう遅いかな?」
真那華が『ボルテックロブスタ』に攻撃が当たる距離まで近付いた瞬間、『ボルテックロブスタ』は激しい光を放ち真那華に目くらましをする。
「あまり、手間取らせないでくれないかなぁ?それやっても意味ないから【羅刹発勁】」
真那華が『ボルテックロブスタ』に拳が触れると闘気によって相手の甲殻の内側を何度も連続で衝撃を発生させ真那華の拳が離れても衝撃は収まらず『ボルテックロブスタ』はのたうち回る。
『何あの技エッグ』
『たぶん【闘気】を相手の内側に打ち込んで何度も連続で衝撃波を発生させてるんだ』
『そもそも、なんであの発光の目眩しが効いてないんだよ!』
『いや、目を閉じてたからたぶん効いてはいた。たぶん、【感知】を使って見えてるんだと思う』
『【感知】って極めるとそんな事も出来るのかよ。マジの神スキルじゃん』
『スキル研究局は【感知】を産廃扱いしてたけど産廃は神スキル認定していた【四属性魔術】の方だったんだな。騙されてたのがなんか悔しい』
『ネットニュースを見てみろ。ダンジョン研究所とスキル研究局がメッチャ叩かれてる』
『マジじゃん!このクソガキ、スキルの話で世論を動かしやがった』
コメントはネットニュースの話題で盛り上がる中『ボルテックロブスタ』は動かなくなった。
「硬い装甲の相手には、これが一番だよねー。わぁ、プリプリだぁ美味しそう」
真那華は『ボルテックロブスタ』の甲殻を剣を使って上手く剥がしている。
『この見た目で本当にエビなんだ』
『マナ様がエビと言ったんだ。エビに決まってるだろ』
『お前、さっきまでロボとか言ってなかったか?』
『本当に猿並みの脳なのかもしれないな』
『ところで、どうやって調理するんだ?』
当然、コメント欄はそういう疑問で溢れる。
「このサイズなら一部は持ち帰って後で食べられるねぇ。とりあえずエビといったら刺身と茹でエビにして素材の味を楽しもっかー」
『いや、刺身は分かるが茹ではどうする気だ?』
『なんだろう、俺分かっちゃった』
『まぁ、マナ様の言動見てればだいたい想像がつく』
『まったく分からんのだが』
『上にちょうど良い水の泡が浮いてるだろ。それが答えだ』
『ダンジョンギミックを鍋代わりにするのか』
「正解、正解、大正解、だんだんウチの事がわかってきたじゃん。理解の早い賢い猿は猿は猿でもオラウータンに格上げしてあげる」
真那華は自分の考えを理解できる者が現れて上機嫌だった。
『これは喜んでいいウキッ?』
『いいウキッ』
『ああ、自認猿が量産されて行く』
真那華は空中にある届きそうな泡を探して中から奇襲して来た怪物を倒した後、火の魔法で水を沸騰させ『ボルテックロブスタ』の切り身をお湯に通して茹でる。
「ハーイ、実食ターイム」
『凄く美味そう。美味そうなんだが、さっきの怪物なんだよなぁ』
『やめろ!考えないようにしてたんだから!』
「いっただきまーす」
真那華は最初に刺身を食す。
「うーん、プリプリした食感の中に少しコリコリした食感と濃厚な甘味とほのかな磯の香りが美味しいねぇ。レアエネミーな事を加味したら間違いなく高級食材でしょ。ああ、白米がないのが惜しまれるよー」
真那華は今度は茹でた『ボルテックロブスタ』を食す。
「これで茹で餃子のスープ作ったら滅茶苦茶美味しいだろうなぁ。後で作ろう」
真那華は美味しそうに食べ完食した。
『これは完全な飯テロ』
『もしかするとこのレアエネミーは素材の価値ではなく食用という意味でレアなのではないか?』
『そもそも、あの見た目で誰が食おうと思うんだ?この配信見てなかったらずっと機械だと思っていたぞ』
『俺、明日『水泡の湖』行って来るわ』
『そもそも出現確率0.05%のレアエネミーって忘れてない?』
『いや、まさか切り身にしたらこんなに美味そうだとは思わんやん』
『もしかして、俺達が知らないだけでダンジョンには美味しい食材が眠っているのか』
コメント欄は食べれそうな怪物の話題で盛り上がっていた。
「それじゃあ、最後の目的を果たしにいっくよー」
『え?目的は既に終わったんじゃ』
『いや、まだだ。アレが残っている』
『ああ、アレだな』
『一体アレって何?』
「まったく、空気が読めないお猿さんだね。欲しいんでしょ♡『グラフェンナーワル』♡」
『マナ様バンザーイ『グラフェンナーワル』バンザーイ』
『そのエネミークソ害獣なんだけどなぁ』
真那華は『グラフェンナーワル』を倒し配布されるレイピア9本が確定し、配信が終了した。
管理局で北条はとある事で鑑識課に呼ばれた。
鑑識課は素材を調べてレポートを研究機関に送る部署である。
「北条君さー、この素材何処で採ったと言ったっけ?」
「彩海先生には話すが、『深淵の樹海』一層ボスのレアエネミー『ウィザードウッドゴーレム』って奴だ」
その返答に彩海は頭を抱える。
「この宝玉を調べたら驚くべき事が分かってしまったの」
「驚くべき事?」
「北条君さ、もしかしてネットニュースがとんでもない事になってるの知らない?」
そのネットニュースとはダンジョン研究所とスキル研究局が猛抗議を受けているという事だった。
「・・・・・・早速、派手にやらかしてくれたなあ」
北条はその原因が真那華だと分かると頭を抱えるしかない。
「それで、この件とその素材はどういう関係なんだ?」
「正直、彼女の言い分は半信半疑だったんだけど、この宝玉のおかげでそのマナとかいう配信者の言ってる事が正しい事の裏打ちになってしまったのよ」
「というと?」
北条は意味が分からない。
「【四属性魔術】は産廃のクソという事がね」
「それとその宝玉はどういう関係が?」
「北条君さー、私の固有スキル【鑑定】がどういうものか分かるでしょ。見ただけでアイテムの名前と性質、効果が分かるの。その宝玉、正確な名前は『リセットエレメント』が【四属性魔術】の救済アイテムだったのよ」
彩海の発言で北条は言葉を失った。
「その効果は【四属性魔術】の初期化、育成をやり直せるアイテムで使う属性を選び直せる。このアイテムの存在が彼女の言ってる事の正しさを証明してしまうの。でも、スキル研究局の連中は絶対に認めようとしないわね。彼等にも面子ってものがあるもの」
「で、そのアイテムをどうしろと?」
北条は何となく嫌な予感がしたというより彩海の呼び出しは大抵ろくな事が無い。
「これがあれば少なくとも魔法使いタイプの『潜行者』は大人しくなるでしょ。スキル研究局に借りも作れるしね」
「だから何処で手に入れたか知りたかったのか?」
北条は彩海の狙いを察した。
「これがあるって事は倒せたんでしょ。それなら何回だって倒せるんじゃない?」
北条はこの彩海が苦手である。
自分は戦いに参加しない割に口だけは出して来る。
そして、一度結果を出せばもう一度出来るのは当たり前だと思っているのだ。
その一度出した結果にどれだけの血を流したのか考えたりしないのである。
「何度も言うようだが、戦いに参加しない貴女に現場の苦労が分かるのか?」
「分からないわ。それは北条君、貴方の仕事でしょ。私に戦闘スキルがない事を分かっていて言ってるなら私にも考えがあるけど?」
「俺に拒否権はないと?」
「拒否しても良いけどしたらしたで私と北条君の協力関係が終わるだけ」
「・・・・・・少し考える時間をくれ」
「いいけど、あまり時間はないからね」
彩海は含みのある笑みを浮かべ、北条はその場を立ち去った。
(・・・・・・女狐が、ん?電話か)
北条は部屋から出ると同時にスマホにかかってきた電話に出た。




