親の顔より見たボス戦
真那華は『ボルテックロブスタ』を探して、既に『グラフェンナーワル』を5体狩っており、配布されるレイピアは4本は確定した。
「分かってはいたけど、本当にでないね。『グラフェンナーワル』もそこまで強くなくてテンション萎え萎え~」
『【劫火衝裂刃】が強過ぎるだけ』
『あの真上の泡を蒸発させてるからね』
『剣聖の話では雷の攻撃を当てると強化されるらしいよ』
「へぇ、それは初見面白そう。やってみよっか♪」
真那華にとって『グラフェンナーワル』は既に余裕の相手なので試してみても全然問題なかった。
「さあさあ、このボス部屋の扉ももう見慣れて来たよねー♪」
『親の顔より見た扉』
『親の顔もっと見てもろて』
真那華はボス部屋に入ると真上に『グラフェンナーワル』が居る。心なしかまた来やがったという雰囲気を出してる気もしなくはない。
「魔法を見せてあげる【サンダーストライク】」
真那華の放つ雷撃が『グラフェンナーワル』に命中すると『グラフェンナーワル』が発光しツノに雷を纏っている。
『今の中級魔法?上級じゃなくて?』
『でかい口叩く割にはしょぼい魔法使うんだな』
「確かに上級、極級になると威力は確かにあるね。でもねー、ソロで魔力を溜めてる時間ある?そればっかり使うのってパーティメンバーに甘えてるって事だから少し自重した方が良いよ。それとも実戦経験が浅いのかなー。頭弱々で可哀想」
『言ったら倍で言い返されてて草』
『まぁ、自分はタンクだけどこれは正論だわ』
『経験が浅い『潜行者』程上級や極級が強いと思いこんでるところがあるが、実際は初級、中級の方が使い勝手はいい。この嬢ちゃんはその辺はよく分かっとる』
『ベテランの『潜行者』!?』
突然やって来たベテランの『潜行者』にコメント欄がざわつく。
『既に引退した『潜行者』だから気にする事はない。引退してダンジョン配信の視聴が趣味な単なるお節介よ。でも、嬢ちゃん程の実力なら上級魔法も難なく使えたんじゃないかい?』
「さぁ、どうだろうねぇ、それは買い被りって奴かなー」
真那華にしては珍しく煽りもしなければ調子に乗ってない。
『えっ?この反応、マジで出来たんじゃ』
『確かに、今までの言動からして調子に乗ったり煽ったりしてないからガチで出来た可能性が』
『え?じゃあ、なんで中級魔法にしたんだ?』
真那華が今までと違う反応をした為、本当は出来た事を疑われてしまった。
「検証が目的だから、上級魔法で倒しちゃったら駄目じゃない?そんな事も分からないなんてやっぱり猿なのかな~」
『くっ、そういえばそんな事言ってたな』
『あの【劫火衝裂刃】を見た後だと本当にやりかねないからな』
「それにしても、泡は変わらないみたいだねぇ」
『グラフェンナーワル』のツノは帯電しているがそれくらいで泡は変わらず、宙に舞う氷の剣で破壊出来ている。
「さて、泡から出したら何か変わるかな【劫火衝裂刃】」
真那華は巨大な泡から『グラフェンナーワル』を引きずりだすと『グラフェンナーワル』は電撃を周囲に放つ。
「あー、アレ完全に暴走してるね」
『暴走?』
「簡単な話、力をコントロールしきれず意識を失いながら暴れる事だよ。動きが読みにくくなるからウチの知る限り一番面倒くさい状態、実際に能力が上がるから強化と間違えても仕方ないかもね」
真那華はダンジョンに囚われてる時に何度か暴走した怪物と出くわしており、中には暴走状態の方が厄介な怪物がいた。
『それって、最近発見された情報じゃなかったか?』
『えっ?一瞬でそれを見破れるってもしかして他にも戦った事が』
「ん?まぁ、ウチって天才だからそんなの初見で分かるんだよね」
当然、嘘である。
しかし、下手な事を言うと混乱を招くので自分のキャラクター性を武器に誤魔化す事にした。
『確かにコレは天才』
「まぁ、アレは確かに厄介なのは分かるけど、それはウチ以外だった場合の話なんだけどねぇ」
真那華の氷の【従魔剣】で『グラフェンナーワル』を真上から串刺しにし斬り裂く。
『やっぱり、ずるいわ。あのスキル』
『そもそも、あの剣どうやって操作してんだ』
「頭で操作してるだけだよー。まぁ、ウチ以外が使おうとすると脳が焼き切れるからある意味では欠陥スキルかなぁ」
『あー、だから須藤管理官が使えなかったのか』
『やっぱり欠陥だろあの【模倣】とかいうスキル』
「うーん、アレは【模倣】が悪いというより。あのスキルを持て余してる事が悪いかなぁ。あの能力じゃ鍛え方分からないだろうし、成長の方向性を決めるのは難しいんじゃないかなぁ。まぁ、須藤ちゃんは嫌いだけどね」
真那華としての感想は【模倣】は使いようによってはとんでもない神スキルでそれを持て余してる状態は勿体ないと思ってる。
『え?スキルって成長するの?』
「ある程度鍛えると頭打ちになるけど、死線を超える事が出来ればスキルは成長するんだよ。そして、また頭打ちになったら死線を超える事でスキルが成長する。その繰り返し」
『え?確かにスキルには個人差があるだけだと習ったんだけど?』
「うーん、そいつ馬鹿なのかな?」
真那華はバッサリと切り捨てた。
『こいつスキル研究の教授をバッサリ切りやがった』
「確かに運動能力や得た魔力には個人差はあるけどスキルの差は成長度のみだね。練習だけだと絶対にどこかで頭打ちになるだけ、限界を超えるには自分より強い奴と戦うしかないんだよね。だから、本来は【剣術】と【魔術】なんて両立出来て当たり前のはずなんだけどなぁ」
『そうか、そのどちらも頭打ちになるまで鍛えれば』
『死線を限界を超えられれば一気に成長させられる』
『でも、効率が悪い事には変わりなくない?』
『確かにそうなんだよな』
「もしかして【四属性魔術】のスキルを言ってるならそのスキルはクソスキルだから名前に騙されるのは学習能力のない猿ぐらいかなー」
真那華は自分も実際に持っていたので【四属性魔術】がいかに産廃か理解している。
『いやいや、四属性使えるのは破格の神スキルでしょ。スキル研究の有名な教授が推奨してたくらいだからね』
「頭悪いのかな?」
『こいつは多方面に喧嘩を売るな』
「さっきスキルの成長の話をしたけどその上で【四属性魔術】コイツはクソ、下手すると時間を無駄にしかねない成長上の大きな欠陥があるんだよね。そもそも名前が罠」
『名前が罠ってまさか』
『いやいや、そんな』
真那華の発言で察しのいいリスナーは何となく気付いた。
「今の説明で察しがついた猿は少なくとも、スキル研究の教授なんて猿以下よりは賢い猿ね」
『猿には変わりないんだよなぁ』
『どういう事?』
流石に察しているリスナーもいる一方、察していないリスナーもいる。
「【四属性魔術】には成長度とは別に属性ごとの成長度があって火なら水、風なら土の相反する属性は互いに潰し合う特性があるからコレが厄介。この仕様がこのスキルを産廃にしてる原因の一つ」
『つまりどういう事?』
『要するに火と同時に水は育成出来ないし、風と同時に土は育成出来ないという事だ』
『何それ!完全に詐欺レベルの騙しじゃん』
「そっ、つまり火属性を育ててる時に水を育てると火属性の成長にマイナス補正が入る感じかなぁ。そして、もう一つ厄介な所が各属性の育成のリセット」
『なんだろう、凄く嫌な予感が』
「一つの属性の限界を突破すると他の属性の成長度がリセットされるコレがいかにクソか分かる?」
『そういう事かその仕様があるからそもそも【四属性魔術】で複数の属性を強くしようとすると効率が落ちるのか』
「そして、コレが一番致命的で、どれか一つでも一回でも限界突破しちゃうとそれ以外の属性は限界突破させる事が出来なくなる」
『え、それってつまり実際は一つの属性しか強く使えないって事?』
『あー、でもその説明かなり腑に落ちるかも俺は水以外の魔法の威力がクソだから』
『俺もそうだ』
次々と賛同のコメントがコメント欄に溢れる。
「つまり、限界突破をしちゃうとそれ以外の属性の育成は時間の無駄だから、効率が悪いってなっちゃうね」
『俺達の時間・・・・・・』
『これ、魔法使いの型の『潜行者』は抗議入れてもいいレベルだろ』
「むしろ、【光魔術】、【闇魔術】、【幻魔術】、【星魔術】は一つなのにそれだけ四つなのは疑問に思うべきだよねぇ」
『そもそも、なんでスキル研究の権威ですら分からない事が分かるんだ?』
当然、そんな疑問が来るのは当たり前である。
「それはウチのスキルに自分のスキル限定だけどスキルを解析出来るスキルがあるんだよね。それがなかったらウチも魔法剣士は諦めてたかもねぇ」
それは真那華の固有スキル【技能研究】の副産物であり、解析のみが能力ではなく、彼女の中で最もチートなのがこのスキルであった。
『自分限定というのが引っかかるけど解析スキルってありそうだけど聞いた事ないな』
当然ながら、【解析】は存在するが固有スキルかつ珍しいスキルなので国が秘匿して隠してるだけだが、日本にはそのスキルを持ってる者がいない、そもそも【解析】は致命的な欠点があり自分の持つスキルしか解析出来ないのだ。
『でも、マナ様はその欠点が見えないけど何をやった?』
「あー、それはちょっとした裏技があってね。【闘気】に属性を纏わせてるだけなんだよね」
『どういう事?』
「【闘気】に属性を混ぜると【闘気】の成長度に依存するんだよね。さっきから放ってる【劫火衝裂刃】が一つの例かな」
そこで、リスナーは理解した。
『全ての属性を使いこなすには【闘気】と【四属性魔術】があれば可能という訳か!』
『そもそも【闘気】に【四属性魔術】の属性部分を混ぜるなんて発想誰が思いつくよ』
『それってつまり、その二つのスキルがあれば【闘気】のスキルに依存するから【闘気】だけ育てれば良いって事じゃないか?』
「うんうん、だから【闘気】と魔術スキルの属性部分を併用させるのは可能だけど、幻と星はどうなるかはウチでも分からないから、やるなら自己責任でね⭐︎」
この真那華の発言はすぐに切り抜かれ拡散されてしまい。
ダンジョン研究所、スキル研究局に多くの抗議が送られた。
『でも、スキルが成長可能なのは分かったけど性能に差があるのはなんなの?』
「それねぇ、個人差といえば話が早いんだけど成長の過程で本人に合わせてスキルが最適化するの。それは本人の無意識下で行われる調整だから使い勝手は本人にしか分からないのが難点かなぁ。でも、スキルによっては方向性はある程度調整可能な物も存在するからね。一番良い例が【感知】だね。コレが最も個性が出やすいスキルかな」
『【感知】って奇襲を避ける以外に使い道なくない』
「このスキルの有用性を理解出来ないのは、猿以下かなぁ」
リスナーのほとんどはこの【感知】のスキルを奇襲避けとしか活用しきれていないのだ。
「この【感知】育成の幅が凄く広くて広範囲を感知出来たり、魔力の流れを感知できたり、相手の攻撃の起こりを読む事などなどが出来る神スキルなのに」
『それって、戦闘特化型にする事も可能?』
「うん、でもそれをするとほぼ戦闘以外使い道がなくなっちゃうんだよね」
『あー、やっぱりその辺でバランス取らないといけないんだ』
「まぁ、方向性を決めたからといっても必ず自分の思い通りにはならないんだけどね」
真那華はスキルの個性の方向性はある程度しか決められない事を知っているため、あらかじめ注意しておく。
「でも、一番は無理をしない事だね。死んでしまったら元も子もないから、逃げる事も時には必要だよ」
真那華はらしくなく真面目な雰囲気で話す。
「まぁ、ウチぐらい天才で最強になるとちょっとくらいの無茶ならなんとかなっちゃうんだけどね♪」
『真面目な事言うと思ったらwww』
『流石に自画自賛が過ぎる』
「とりあえず、スキルがいい加減に伝わってる事には怒りを覚えるべきだよ。下手すりゃ命に関わる問題だからね」
『それはまさしく遺憾の意を伝えるべき』
真那華はスキルについてこの世界の認識が改めて遅れていると思った。




