聖蘭神になる
承から真那華が聖蘭に謁見をしたいという連中がいる事を聖蘭に告げると、聖蘭は訳が分からなくなっていた。
「なんか、相手はウチらが獣人と呼んでた奴等で本来はスロープ族っていうみたいなんだけど、そいつらが【魔狼憑依】を得た者を神として崇めてるらしいよー」
「もっと意味が分からない事になってるんだけど!!」
聖蘭は理解が出来ない程に困惑し頭を抱えている。
「まぁ、確かに聖蘭は時折獣めいた事を平然とやるから、あながち間違ってはいないかもしれないね」
潤からしてみると最前線に真っ先に突っ込み銃撃戦を繰り広げ、潤や真那華から見ても考えもしない回避方法を取る為、獣めいていると思っている。
「ただ、そのスロープという種族はダンジョンの外だと獣の姿になっちゃうんだって」
「つまり、これからは沢山の獣を引き連れて学校や管理局に来るんだね」
真那華の言った事に潤は素早く反応する。
「・・・・・・想像したら凄く面白いんだけど」
「私としたら、そうなると凄く困るんだけど・・・・・・」
真那華は聖蘭が動物を引き連れてる光景を想像し笑いを堪えており、聖蘭にとっては迷惑な話であった。
「でも、聖蘭ちゃんは動物は好きでしょ」
「まぁ、好きだけど限度というものがあるわ」
真那華の言う通り聖蘭は確かに動物、特に犬が好きだが、飼ったら兄にどういう扱いを受けるか分からない為、飼えなかった。
「でも、動物の状態でも【隠密】と【遁術】が使えるらしいよ」
「【遁術】?」
潤は聞いた事のないスキルだった。
「光を遮る事で姿を消せるスロープ固有のスキルらしいね」
「あー、その組み合わせは確かに厄介だね。お姉ちゃん達が苦戦するのも納得かも・・・・・・でも、敵対してたんだよね」
潤は真那華の説明で燐達が、苦戦した理由が分かったのと同時に敵対してたスロープ族が友好的になった理由が分からなかった。
「ウチもそれは分からないけど、たぶん聖蘭ちゃんが関係してるのは間違いなさそう」
「やっぱり、それしかなさそうだよね。なんたって、そのスロープにとって聖蘭は神様だもんね」
真那華の意見には賛同すると同時に聖蘭を神様いじりをする。
「正確には私じゃなくて【魔狼憑依】を神格化されてるだけだからね」
「それと、そのスキルデフォで【遁術】も備わってるらしいよ」
聖蘭が必死に否定する中、真那華は承が言っていたとんでもないスキルの一部の力を告げた。
「え?それってつまり聖蘭って光を遮るところなら姿を消せたってこと?」
「消せるけど【隠密】はデフォで備わってないから、出来るのは透明化だけだね。それでも、聖蘭ちゃんが使うとどうなるか分からないところがあるけど・・・・・・」
真那華は聖蘭がスキルの一部を本来の用途を逸脱した使い方をするので、どうなるか分かったもんじゃないのだ。
「【軽業】は本来なら回避スキルなんだよね」
「何言ってるの?空中での攻撃を可能にするから攻撃スキルよ」
聖蘭にとって【軽業】は空中での攻撃と回避しながら攻撃できるため、誰が何と言おうと攻撃スキルなのである。
「SNS見たけど、それできる【軽業】持ってるガンナーいないの分かってる?それを可能にしてるのってたぶん、【魔狼憑依】の影響だよね!」
「うん、ウチもそれに関しては潤ちゃんと同意見かな。通常の【軽業】にしては、明らかに動きが人間離れしてるからね。あとさ、たまに相手の動き見えてたりするでしょ」
真那華は、聖蘭が時々攻撃をギリギリ回避したと同時に撃ちぬく光景を目にしていた。
「ああ、真那華が動作感知とか言ってた奴ね。あの龍との戦いの後から偶に見えるようになったのよね。そうは言っても成功するのが五割くらいだけどね」
真那華と聖蘭は鍛治炉を作るためのミスリルを取りにダンジョンに潜った時に、聖蘭は相手の動きが見えてないと出来ない動きを時々していた為、真那華は違和感を感じていた。
「たぶん、その動作感知【魔狼憑依】の影響が入ってるっぽいんだよね。本来はこんな早く体得出来るものじゃないんだよ」
真那華は自分と承の実体験から比較している為、こんな短い期間で体得出来る技術ではない事は実証済みであった。
かく言う真那華も成功率は四割程であった。
つまり、聖蘭は二回に一回は動作感知を成功させてる事になっているのである。
「やっぱり、あの龍との戦いで聖蘭ちゃんはだいぶ力を付けたんだね。潤ちゃんは盾がない間は筋トレばかりでダンジョン潜らなかったから、よく分からないけど、その盾を試す時に分かるよね」
潤は龍を倒した後、盾がないためダンジョンに潜れなかったのである。
潤はメイスだけでも、戦えない訳ではないが、盾こそ自分の型である守護者の魂であるというこだわりがあるため、盾が出来るまでは筋トレと授業で行われる真那華と聖蘭との模擬戦で我慢している。
そもそも、潤とまともに模擬戦出来るのはこの二人しかいない為、週に一回あるクラス合同訓練が楽しみで仕方ないのである。
その圧倒的な戦力は、真那華と聖蘭以外の相手はメイスすら振らず、盾のみの前進で全てを制圧してしまう。
龍のブレスを防いでからというもの全ての攻撃が軽く感じてしまうのである。
クラスメイト達も潤が龍のブレスを二度も受け切った事を知っている為、潤のメイスより先に盾に警戒しメイスを持ってる方向から攻めようとするのである。
潤を知る者からすると盾は身を守る装備ではなく、全ての攻撃を弾き飛ばす武器なのである。
「僕も早くダンジョンに潜りたくてうずうずしてたんだよね」
潤がそう言うと禍津玄龍は、潤の頭の上で頷いている。
「ハハ、そうか君も同じ気持ちなんだね」
そもそも、代行者は力を示すと同時に摂理の化身たる龍を狩る事を目的として生み出されてるので、その龍を好敵手とする潤を認め懐いてるのである。
「なんだかんだで仲良く出来そうだね」
「僕が盾になって欲しい時には盾になってくれるみたいだし、悪くはないかな。でも、僕の頭で寝るのはやめて欲しいんだけどね」
潤は盾になれれば問題なく、『緑鬼』の性能で禍津の力を知ってるので、それ以上の権能の力を持つ禍津玄龍は間違いなく強い盾だという確信があった。
実は禍津玄龍は、潤の頭の上で寝ているのではなく潤に最適化する為に、記憶を除いているのである。
「それで、承さんいつ帰って来るの?」
「兄ぃはスキル使えばすぐにでも帰って来れるけど、管理局への報告がスロープ族が原因で難航してるみたいだね。そりゃあ、異世界の住人との交流な訳だからそうなるよねって感じ」
聖蘭は承がいつ帰って来るか知ることで、スロープ族が来てもいいように心の準備をできる期間を知りたかった。
「でも、そのスロープ族っていうのに会えば少なくとも、その【魔狼憑依】という謎スキルがどういったものか分かるんじゃない?」
潤は聖蘭が【魔狼憑依】を使いこなせるようになればA級も遠くないと考えている。
「それはそうかもしれないけど、流石に神扱いはないんじゃない?」
「でも、既にガンナー達には救世主や神様扱いされていたよね」
潤は聖蘭が死にスキルである【射撃術】を使えるようにし、【射撃術】を用いた型が生まれた為、その系統の型を使う者にとって救世主や神様扱いをSNS内でされていることを知っている。
「アレはもう諦めてるのよね。まさか、こんな事になるなんて思ってないわ。私は私のように【射撃術】で苦しむ人を助けたかっただけだったのよ」
聖蘭は、自分と同じように【射撃術】で苦しむ人の助けになればと思いやった行動が、その苦しんだ人達から救世主や神様扱いされるのは想定外だったのだ。
だから、それを逆に利用し長男の手柄にする事で政治家である義兄に恩を売りつつ自分は、救世主や神様扱いから免れると思ったが、それでも聖蘭を救世主や神様扱いする者が多いのである。
そして、どういう訳か聖蘭の配信のチャンネルがないためか、最近ダンジョン配信を開始した義父の登録者が一気に増えたのである。
聖蘭の周りでは、本人が知り得ぬ事が繰り広げられているのであった。
「聖蘭はその辺は謙虚だよね。常に速攻で攻撃をしかけてる人と同じだとは思えないくらいの謙虚さだよ」
「聖蘭ちゃんは、職人気質なだけで目立ちたい訳ではないからねー。戦闘に関しては、ウチがいる事によって全て丸投げ出来るからあんな感じになってる所があるんだよ」
真那華は珍しく聖蘭のフォローをする。
「あぁ、それってつまり真那華を信頼してるから速攻を仕掛けられるって事だったんだね」
「それは否定出来ない事実だけど、本人の前で言うとなんか癪ね」
聖蘭の速攻突撃は真那華への全面的な信頼から成り立っている為、本人は否定出来ないのだ。
聖蘭の速攻は、真那華の頭脳を全面的に信頼しているから可能になっているのである。
「意外でしょ。ウチが聖蘭ちゃんに合わせてるんだよ」
「普段の二人を見てると想像出来ないんだよね」
潤も初の模擬戦の時は先に仕掛けるのは、真那華だと思っていた。
しかし、実態はその逆で真那華の方が合わせているのである。
それは、真那華が魔法剣士という遠近どちらも戦える型だからこそ、それを可能にしている。
「合わせるのは難しくはないんだけど、ウチが想定してない動きされる時が一番困るかな」
その真那華の想定していない動きとは、人間では真似できない動きをされた時である。
「アレを出来ることが猟犬を扱う絶対条件らしいからね」
潤はSNSで見た事をそのまま伝える。
「僕の守護者は少なくとも龍のブレスを一回は耐える事が、絶対条件になってたのを見た時は、とうとう僕の型も本人以外再現不可能になったかと思ったね」
潤は聖蘭のとこを見た時に偶々目に入ったのが、その守護者も魔法剣士と猟犬同様に本人以外再現不可の投稿を目撃した時は思わず吹き出してしまった。
「龍でアレなら竜のブレスは余裕で耐えれるんだよねー」
「やっぱり、違うもんなの?」
潤は竜については知らないので違いが分からないのである。
「全然違うね。竜のブレスですら、ウチも兄ぃもそもそも防げるものという考えは無かったし、予備動作見て回避に専念するか、撃たれる前に倒すかのどちらかだったかな」
真那華からしても、極級の魔法なら余裕で対抗出来るが、予備動作に入られたら発動に間に合わないので、避ける事に専念するしかなくなるのであった。
「その上位種のブレスを耐えれるなら、間違いなく耐えられるよね」
真那華は潤なら防げるという確信があったからこそ潤に全力で防ぐ事を指示出来たのである。
「確かにそれなら私達とお揃いで再現は本人以外は出来ないわね。私のは少し納得いかないんだけど・・・・・・」
聖蘭は自分の型は誰でも真似出来ると思っており、納得いってない。
「そういえば、非公式ではあるけど各ポジションの高校生潜行者のランキングがネット上に掲載されていたね」
潤はネット上ではあるが、その年の高校生潜行者の各ポジションの実力をランキング付けするサイトが存在する事を最近知った。
「何それ!面白そう!」
真那華は当然ながら興味を持ち、スマホを取り出しそのサイトを開いたのであった。




