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クソガキダンジョン奔走記  作者: 酒粕小僧
チームD-アニマルズ結成

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生命と再生の権能

 真那華と潤は潤の盾が出来上がるのを待っていた。


「・・・・・・真那華、あの結晶なんだけど」


 聖蘭(セイラ)は深刻な顔で真那華に告げる。


「聖蘭(セイラ)ちゃん、どうしたの?」


「いや、実際に見てもらった方が早いわ。潤も見てくれない」


 聖蘭(セイラ)は完成したものを二人に見せる。


「え?何これ?まさか、失敗!?」


 潤は訳が分からない為、動揺している。


「私もこんなことは初めて何だけど【錬成鍛治】は失敗すると【錬金術】と同じように失敗すると消えるのよ。でも、これ消えてないのよね。最後にあの結晶を使うまでは順調だったんだけど・・・・・・」


【錬成鍛治】は失敗すると【鍛治職人】と違い素材が全て消えてしまうのである為、今の状況は分からなかった。


「落ち着いて、聖蘭(セイラ)ちゃん。ある程度は何かが起こるとは思ってたけどまさか、盾が生き物になっちゃうなんてね」


 真那華達の目の前には深緑に金の光沢が見える甲羅を持つ、亀と龍を合わせたような生き物がいた。


「これは亀なの?龍なの?」


 そういう疑問を抱く潤の頭の上に何故かこの亀だか龍だか分からない生き物は空中に浮きながら乗っかる。


「流石、『生命と再生』の権能の力だけはあるね。生命の力は生命力を強くして耐久力を上げるものかと思ったけど、突き詰めていけばそうなるよね。たぶん、素材に使われてるものを特徴とした生命体になったんだろうけど、玄武甲と龍の素材の影響が強くて亀っぽい龍になってるかな」


 真那華はその盾となるはずだった生命体を見て冷静に分析している。


「こいつ、僕の頭の上で寝始めたんだけど・・・・・・」


 亀っぽい龍は、潤の頭の上が安心したのか寝始めていた。


「少なくとも頭は守れそうなサイズだよね」


「盾というよりヘルメットに近いわね」


 真那華と聖蘭(セイラ)は潤の様子を見て頭を守る分には申し分ないと思っていた。


「ヘルメットじゃなくて、僕は盾が欲しいんだい!」


 潤が盾を強く念じた時、亀のような龍は巨大な円形の盾に変化した。


「・・・・・・え?」


 潤は突然の盾への変化に理解が追いつかなかった。


「これ権能の力の影響で生きた盾を作っちゃったみたいだねー。やっぱり、『緑鬼(オーガ)』に使った素材とは力が与える影響が断然違うよ」


 真那華は亀っぽい龍の変化を見て、その力の絶大さを知った。


「もしかすると性能自体も変わっちゃったかもしれないから、試験しに行った方が良さそうね」


 聖蘭(セイラ)はこの盾が、真那華と聖蘭(セイラ)が予想した通りの性能になってるとは思えなかった。


「そもそも、ウチらがいるのに真っ直ぐ潤ちゃんの頭の上に行ったよね」


「確かに私達に目もくれず、真っ直ぐ頭の上に行ったわね」


「・・・・・・僕を止まり木みたいに扱うのやめてくれないかな。でも、持った感じで分かるよ。この重さはちょうどいいね。どういう訳か僕に凄く馴染んだ盾で凄いけど確かに試してみるのは必要だね」


 潤は盾の性能テストに関しては聖蘭(セイラ)に賛成だった。


「でも、こいつ羽もないのに飛んでたよね」


「たぶん、斥力で浮いてるんだと思うよ」


「あー、あのダンジョンに浮いていた鉱石の影響か」


 潤は亀のような龍が羽すらない事が不思議だったが真那華の説明で納得する。


「でも、これどうすればさっきの姿に戻るんだろう。戻れと言えば良いのかな?」


 そういうと盾は亀っぽい龍は元の姿に戻り、潤の頭の上に戻る。


「だから、なんで僕の頭の上!?」


「で、その盾というかペットの名前はどうするの?流石にないと不便よ」


 聖蘭(セイラ)は名前がない事が名称を言う時に不便なので名前を付けて欲しかった。


「玄武と龍の要素が強いのと禍津の力も秘めてるから『禍津玄龍』かな」


「いいじゃん。分かりやすくてさ」


 潤が付けた名前はこの生き物の特徴を完全に捉えている為、真那華は賛成する。


「まるで親亀の甲羅の上に乗る子亀ね」


 聖蘭(セイラ)は普段の仕返しに、潤を亀扱いする。


「僕は自分の筋肉以外は、亀扱いされたく無いんだけど、でも本当になんで僕の頭に止まるんだろう?」


「居心地が良さそうだったからじゃない?」


「確かに私達の中で一番身長が高いからちょうど良かったんじゃない?」


「君達って、本当に好き勝手言ってくれるよね。でも、盾になる事に免じてこれで許してあげるよ」


 禍津玄龍が潤を選んだ理由は、三人の中で最も『生命と再生』の代行者を扱うに相応しい力量と能力、そして禍津玄龍が認めるとある資質を持っていたからという理由は、この三人は知らなかった。


「それで、どこのダンジョンで性能確認するんだい?」


「配信も兼ねてB級ダンジョン、『氷霜洞窟』なんてどう?暑くなって来たから、涼しいダンジョンに行きたいよ」


 潤の盾の性能テストは、夏が近付き暑くなって来ているので、真那華は寒いダンジョンで涼みたかった。


「そこって、青森に無かった?」


「寒いダンジョンは青森と北海道に集中してるみたいなんだよね。それに次の休みは三連休だからちょうどいいじゃん」


 聖蘭(セイラ)はそのダンジョンが青森にある事を理解しており、真那華としてはちょっとした小旅行気分である。


 一般の学生では、なかなか出来ない贅沢であるが、ここの三人はダンジョン攻略するだけでそれくらいは余裕で出来るほどに稼ぐので金銭に余裕がある。


 しかし、その目的は結局のところダンジョン攻略なのでやってる事は普段と変わらないのと、チームを組んでるとそれが部活と同じように活動してると認められるのである。


「B級ダンジョンかー、まさかこんな早くに挑めるなんて夢みたいだよ」


 潤はまさかこんなに早くA級に昇級出来るとは思わなかった。


「龍のブレス二発も防ぎきってる時点でおかしいことやってるからね。ウチも真向勝負しても一発しか迎え撃たないよ。それに、盾が壊れなければそれ以上もいけたでしょ」


 真那華から見ても潤のタンクとしての実力は並外れたものを感じており、承、真那華と続き、次に龍と遭遇できたら、本当に倒してしまうかもしれないと思っている。


「出来ても今の僕では三発が限界かな。あんなに強い怪物は初めてで心が躍るってあのことを言うんだね」


 潤は龍を相手にし、自分の全力を振るえる相手を見つけた事に喜びを感じていた。


「たぶん、この面子で一番の龍特効って潤なのよね。龍には権能の力が有効だと分かっているから」


「ウチもそれは二人の話を聞いてて初めて気付いたんだよねー。本当、龍と権能については何も知らないんだなって思いしらされたよ。あの後、兄ぃに聞いたらやっぱり知ってたんだよね」


 承は龍と権能については、真那華以上に知っている為、その事は当然知っていた。


「それと同時に言ったんだよね。ウチらが使うスキルも何かしらの権能の力だって、だからその力を極限まで鍛えあげ覚醒させた極限スキルには権能の力も覚醒するから龍の有効打になると言ってた」


 真那華が一番驚いたのはスキルですら権能が与えた力である事で、承がそれに疑問を抱いたのが、あの龍と戦った事であった。


「真那華のお兄ちゃんって、なんで知ってから教えるんだろう」


「ウチもそれは分からないかなー。でも、今回の話しを聞いて全く教えない気はない事は分かったよ。兄ぃはウチが全てを解き明かすのを待ってるんだろうねー。本当、兄ぃの癖に生意気ー」


 真那華は承がスキルについて話した辺りで全く話さない訳ではない事を理解した上で、兄にマウントを取られてるのが複雑な心境だった。


「待って、もしかして龍のブレスを半ばくらって無事だったのって・・・・・・」


「たぶん、【剛鉄筋】の力だね。その極限スキルによってブレスの衝撃を抑えたんだよ。つまり、龍は結局のところ権能の力が天敵となってるわけなんだよねー」


 真那華は極限スキルが権能の力を秘めてる事を知り、龍は権能の力が弱点である事が事実となった。


「でも、私の『フェンリル』の銃撃は鱗のないところなら効いてたわよ」


「それはおそらく、龍が摂理に則った存在だから有効だった可能性があるかなー。前も言ったけどその属性はこの世に存在しないし、存在してはいけない属性なんだよね。摂理に反する属性だったから龍に有効だったんだよ。聖蘭(セイラ)ちゃんの場合は例外中の例外、ある意味では理外の力、それは権能と同じなんだよね」


 権能は理外の存在という事は真那華も知っており、フェンリルの持つ力は理外の力であり、権能と同質の力なのである。


「つまり、権能の力ではなく、性質が似てた事も有効だった要因になってたのね。私とんでもない武器使ってたのね。これは確かにこの武器に相応しい使い手にならないとA級にはなれそうにないわ」


 聖蘭(セイラ)はフェンリルの性能に改めて驚かされると同時に、その武器の性能に相応しい使い手になる事を改めて決意した。


「・・・・・・あ、お姉ちゃん達、任務終わったみたいだよ。皆、無事みたいで良かったよ」


 潤は燐から来たチャットの連絡を見て無事に任務を終えた事を知った。


「当たり前じゃん、ウチの兄ぃがいるんだよ。どんな怪物が現れても負けないんだからねー」


「真那華ってお兄ちゃんの事大好きだよね」


「今頃、気付いたの?なんだかんだ言ってるけど真那華は生粋のブラコンなのよ」


 真那華の態度があまりにも嬉しそうだったので、潤はブラコンだという事に気付いたが、聖蘭(セイラ)は前もって知っていたのと流石に話とか聞いてれば気付くはずだが、それでも気付いてなかった潤にツッコミをしていた。


「そ、そんな事ないよ。ウチがいなくて兄ぃが寂しがってないか心配してるだけだよ」


「その返しが完全な答えになってるのよね」


「寂しいのは、真那華の方なんだね」


 真那華が反応した事で聖蘭(セイラ)と潤は寂しがってるのが、真那華の方だと気付く。


「もう、そんなんじゃないから!・・・・・・あ、兄ぃからだ!」


 真那華は嬉しそうに承からの電話に出る。


「やっぱり、なんだかんだでブラコンなのよね」


「まぁ、真那華のお兄ちゃんって、自分で得たレア素材すらポンポンと真那華に渡してる辺りかなり真那華には甘いみたいだからね」


 聖蘭(セイラ)と潤から見たらその光景が微笑ましくもあった。


「そうね。そう思うとなんか腹が立って来たんだけど・・・・・・」


「聖蘭(セイラ)が腹を立てる理由が何となく分かったけど、それは真那華は悪くないよね。それに結果的にそれを加工してるのは聖蘭(セイラ)だよ」


 聖蘭(セイラ)が腹を立ててる理由がレア素材に食い付いてる事だと容易に分かったが、それは聖蘭(セイラ)が真那華に頼んだ結果そうなってる事もあるので、それに腹を立てるのはおかしいと潤は思っている。


「・・・・・・それで、承さんと何を話したの?」


「なんか、聖蘭(セイラ)ちゃんと謁見を賜りたいという連中がいるみたいなんだよねー」


「え?」


 聖蘭(セイラ)は何のことか、意味が分からなかった。


「謁見って聖蘭(セイラ)ってそんな偉かったの?四大家なのは知ってるけどさ」


「いや、私は継ぐ気ないんだけど、なんでお義父さんじゃなくて私なのかが凄く疑問なのよ」


 潤の質問に対して、一番疑問を抱いてるのは聖蘭(セイラ)なのであった。

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