未知なる素材
真那華が手を振りながら『ストーンヘッド』と『ボンバーヘッド』を引き連れてやって来た。
「お待たせー、聖蘭ちゃん、潤ちゃん」
「お待たせじゃないわよ!!こんなに引き連れてくるとは思ってなかったわよ!」
「流石にこの数は想定外だよね」
聖蘭は真那華の予想外の行動にツッコミをし、潤は半ば呆れている。
「流石にここまで残るとは思ってなかったよ。でも、いなくなるよりマシだね」
真那華は隠し通路のある壁を途中まで駆け上がり右の床へ跳び着地すると壁に激突した『ボンバーヘッド』が爆発し玉突き事故のように『ストーンヘッド』と『ボンバーヘッド』が次々とぶつかり連鎖的な爆発が発生する。
『玉突き事故じゃん』
『今、普通に途中までだが、壁を駆け上がって行かなかったか?』
『身軽なだけあって凄い動きが出来たんだろう』
『確かに重いとどうしても出来ない動きだよな』
リスナー達は前回の件があるので身長には決して触れないようにした。
「え?本当に空いてる!?」
ずっと嘘だと疑っていた潤は驚いていた。
そこには『マイナースケルトン』の情報の通り、穴が空いており隠し通路が存在した。
『マジで空いてるじゃん!』
『誰だよデマとか言った奴』
『お前だよwww』
『いや、流石に難しいというか危険過ぎるだろ!』
隠し通路が本当にあった事にリスナー達は驚きコメント欄が沸いている。
「さて、この先はウチらにとってもお猿さん達にとっても完全初見、どうなってるかは見てのお楽しみって奴だね」
「早速、早速入りましょう」
冷静な真那華と引き換えに何故か、聖蘭は興奮している。
「あのさ、聖蘭ちゃん、はしたないからもう少し落ち着きなよ」
『セイラちゃんがマナ様に注意受けるなんて珍しいな』
『穴が空いた瞬間からそわそわしてたぞ』
『何かを嗅ぎ取ったのか?』
『まさか、犬じゃあるまいし』
「聖蘭ちゃんのこの反応を見るにレアな素材がありそうだね」
真那華は聖蘭の反応でレア素材の存在を確認する。
『え?そういうスキルあったっけ?』
『レアをサーチするスキルってなかったはずだよ。それに近いので【鑑定】はあるけどアレは直接見ないと分からないんじゃなかったか』
『まさか、セイラちゃんにそんなスキルが?』
「・・・・・・スキルだったら、どれだけ良かったか。本当に嗅ぎ分けてんだよね。レア素材をスキルも無しで直感だけで」
真那華は呆れながらリスナーに答える。
『え?』
『本当に犬じゃん!』
『セルフスキルじゃん!』
「だからさ、聖蘭ちゃんの目を見るとさ、その怪物がレアを落とすかすぐ分かるんだよね。落とさない怪物だと冷たい目をしてるから」
真那華は聖蘭がレア素材の魅力に魅了された悲しき獣だという事をリスナーに話す。
「そ、そんな事ないから!潤、違うわよね」
「い、いや、たまに目つきが怖い時あったけどそういう事だったんだね」
潤も聖蘭が怪物をレア素材かそうでないかで見てるのを真那華の発言で確信してしまった。
『唯一の味方だと思ってたジュンちゃんがまさかの裏切り』
『正直、セイラちゃんが一番まともだと思ってたのに』
『いや、度々おかしい所はあったと思うがな』
『もう、ジュンちゃんが最後の砦なのか』
「あー、潤は筋肉と意思疎通できる筋肉一筋の筋トレオタクよ」
「え?聖蘭には聞こえないのかい?まだまだ、トレーニングが足りないんじゃないかな?いずれ聞こえて来るよ。イジメ抜いた筋肉達の歓喜の声が」
「聞こえなくていいわよ」
聖蘭は【魔狼憑依】を使いこなすためには身体能力を上げる必要がある為、たまに潤と一緒に筋トレしている。
『そうだね、僕も言いたくは無かったけど潤ちゃんは筋肉が絡むと異常性が増すんだよね』
潤の姉である燐も潤の異常とも言える筋肉への執着には呆れている。
「え?でもお父さんは筋肉は全てを解決するって言ってたし、実際に解決出来てたし」
それは潤のパワーとフィジカルが常人を超えてるために出来た事なのである。
『全ての元凶は僕達のお父さんなんだよね。僕達のお父さんは潤と同じでタンクやってたからさ。お父さん以上にスキルにも身体にも恵まれていたんだけど潤が将来苦労しないようにって育てたらこうなってたんだよ』
燐は両親を尊敬はしているが潤がこうなった事に対しては父親に文句を言ってやりたかったくらいだったが、【分身】から解放された後の墓参りでやっと言えなかった文句が言えたのである。
「さて、聖蘭ちゃんは既に待ちきれないみたいだし、先に進むよ」
真那華はリスナー達の会話を中断して先に進むと道中で浮いてる物体を確認する。
「何これ?」
「宙に浮いてるけど鉱石ね」
真那華も見た事ない物体だったが、聖蘭はその見た目で鉱石だと気付いた。
「鉱石って普通、地面に埋まってるよね。なんで浮いてるの?」
潤は当然、疑問を感じた。
「・・・・・・ちょっと待って、少し考えるから」
真那華は【感知】を利用し鉱石を確認する。
「あー、成程ね。これ超重鉱石と逆の性質を持ってる鉱石だよ」
真那華はこの鉱石がどういう物か見抜く。
『逆の性質?』
『軽いって事か?でも、軽くても浮きはしないだろ』
『超重鉱石は重いだけの鉱石だからな』
「うんうん、超重鉱石について何も分かってないね。アレは重力・・・正確には引力かな。引力の影響が大きい鉱石だから重くなってるけど、これは逆、重力に反発する斥力が働いてるんだよね。だから、鉱石が浮いてる。これ中々面白いもの作れそうだよ。聖蘭ちゃん」
「どういうこと?」
「超重鉱石とこの鉱石、便宜上『反重鉱石』と言おうかな。この二つを合成すれば重力を制御する物質が作れそうなんだよね」
(これで、重力制御はともかくこの素材でようやく潤ちゃんに頼まれてた盾が作れる目処がたったかな)
真那華はとんでもない事を言い出すと同時に潤に頼まれてた盾を作れる目処が付いたので安心していた。
「重力制御・・・真那華、またぶっ飛んだ事考えてない?」
「聖蘭凄いね。真那華の考えてる事分かるんだ」
「いや、真那華が楽しそうな時って大概ろくでもないぶっ飛んだ事を考えてる時なのよ。覚えておいた方がいいわ」
聖蘭は真那華が楽しそうにしている時は自分達の想像を上回るぶっ飛んだ事を言い出す時だと知っている。
『一体今度は何が飛び出すんだ』
『重力制御とか凄い事言ってなかった?』
『聖蘭ちゃんはかなり怖い事言ってるが?』
『でも、マナ様が楽しそうな時は確かにろくでもない事考えてそうなのは確かなんだよな』
リスナー達は真那華が何を考えているか、楽しみな者や恐怖を感じている。
「うん、空は飛べないけど、浮遊ユニット作れるね。今度はこれを抽選で配布しよう」
「ほら、やっぱりろくでもない事考えてた!」
「浮遊ユニット?」
真那華と同じく【錬金術】を使え、【錬成鍛治】で素材によく触れる機会が多い聖蘭は真那華がこれくらいはやってのけると理解していたが、潤は意味すら分かっていなかった。
「しかも、今配布って言わなかった?」
「うん、言ったよー。だって、こんな面白そうなもの独り占めってつまらなくない?皆で楽しさを共有した方が楽しいじゃん」
真那華は楽しそうなことは、独り占めして楽しむより皆で共有して楽しみたいのだ。
『やはり、マナ様は最高だ』
『アンタについてきて良かったと心のそこから思うよ』
『カナカナちゃんから寝返って良かったよ』
『寝返ったのかよwww』
『まぁ、あの子は確かにアイドルとしては可愛いが、潜行者として見たらマナ様の方が圧倒的に面白いんだよな』
『それ、本人が一番気にしてるんだから言ってやるなよ』
リスナーの中にはダンジョン配信を求めカナカナちゃんからマナへ寝返ったリスナーも存在する。
『え?それ、僕も貰えるの?欲しいんだけど』
『師匠は抽選って言ってたが?俺?もちろん応募するが?』
『え?この二人が欲しがるという事は結構強いのか?ただの浮ける玩具としか思えなかったんだが』
『いや、よく考えてみろよ。敵に吹っ飛ばされてもすぐに復帰できる便利アイテムだろうが』
『使いようによっては攻撃にも使えるしな。最近、増えて来たガンナー達ならアクロバティックな射撃が出来るようになるだろ』
『そういや、ダンジョン内でも使える銃弾が作れるようになったから、最近ガンナーが増えて来てるんだっけ』
『その分、セイラちゃんの負担が増えてるらしいがな。買える弾にも個数制限がかけられてるからな』
『買える場所が管理局だけだしな』
『増えてはいるが弾数が追いつかないのが現状なんだよ』
「そうね。流石に数が多いから銃弾の型を作って大量に作れるようにはなったけどそれでも足りないのよね。どうにかしたいわ」
聖蘭はミスリル製の型を使う事で銃弾の弾を一気に作る事を可能にしたが、それでも生産が追いついていないのだ。
「【錬金術】で複製できれば解決するけど?」
真那華はむしろ、どうしてそうしなかったのか疑問だった。
「え?【錬金術】ってそんな事も出来たの?」
「うん、そのミスリル弾くらいの複製ならそこまで難しくないから他の【錬金術】使える人に任せてもいいんじゃないかな」
「なんで!教えてくれなかったのよ!」
「いや、【錬成鍛治】を鍛えるためにあえてやってるのかと思ってたからねぇ。まさか、知らなかったとは思わなかったんだよ」
ミスリルの銃弾は【錬成鍛治】で作る必要があるが、後は【錬金術】の複製でいくらでも生産出来たのだ。
『まさかの事実』
『そう考えると【錬金術】って便利なスキルだったんだな』
『つまり、弾さえ作れば後は【錬金術】を使える奴に任せれば量産できるのか』
『というか、マナ様の【錬金術】に対する知識が凄すぎるんだよな。複製って聞いた事ないもん』
「確かに複製は【錬金術】の応用技の一つだけど精錬と合成をそれなりに使えるなら、そこまで難しくはないかな。難易度は複製したいものにもよるけどね。ミスリル弾くらいの単純な作りなら難しくはないから素材さえあれば量産は可能だよ」
真那華は【錬金術】を当たり前のように使いこなす為、複製が応用技というのが抜けているのである。
「え?つまり素材さえあれば分解と再構築を覚えなくてもその場で弾を作れたの」
「うん、そうなるね。でも、分解と再構築ができれば元の素材に戻せる応用技である還元が使えるようになるよ」
「そんな事も出来るの!」
「でも、あまり使わないけどね」
「僕はもう訳が分からないよ」
聖蘭はよく使うので真那華の言ってる事は分かるが、持っていない潤にはさっぱり分からない事なのである。
『て、事は【射撃術】と【錬金術】を持ってる奴は弾と素材さえあれば簡単にその場で弾を補給出来るという訳か』
『ミスリルなんてダンジョン行けば大抵のダンジョンにはあるからな。え?【射撃術】と【錬金術】の組み合わせって最高の組み合わせだったんじゃないか?』
『そのどちらも今まで産廃だったんだよな』
『そう考えるとガンナーにとってセイラちゃんって』
『神じゃん!!』
『神が降臨した!』
『むしろ、ガンナーの生みの親とも言えるな』
『ガンナーにとっては聖母セイラ様か』
『これで、さらにガンナーが増えるな』
「なんか凄い事になってるよ」
「聖蘭ちゃんが聖母だってさ」
「聖母じゃなくて、猟犬だから・・・あ、違う」
ここで聖蘭はうっかり口を滑らせる。
「認めたね」
「うん、確かに認めたね」
「違うから、猟犬じゃないから!」
なんだかんだ言いつつ猟犬と呼ばれるのが満更でも無かった事が明らかになった。
「それで、その浮遊ユニットは他に何の素材が必要なの?」
「やっぱり、最高純度の蓄電結晶かな。アレは電気という形で魔力を保存できる結晶だから、こういう装置には必要不可欠になるんだよね」
真那華にとって蓄電結晶はこういう魔力を使う装置には必要だと考えている。
「それと、高純度以上の風結晶かな。これがないとその場に浮くだけの機能になっちゃうからね」
「分かったわ。それは当然・・・」
「ウチが用意するに決まってるよね」
「まったく、そのユニットは当然私の分もあるんでしょ?」
「え?当たり前じゃん。このチームの中で一番使いこなせるのってたぶん人間やめてる聖蘭ちゃんくらいでしょ」
「やめてないから!」
聖蘭は【軽業】と【魔狼憑依】を得てから真那華ですら出来ない空中での動きをするので浮遊ユニットとの相性が一番良いと真那華は考えている。
『聖蘭ちゃん人間やめてたんだ』
『いや、あの訳の分からない銃撃してる時点で人間やめてると思うがな』
『確かにあの銃撃だけ訳が分からないんだよな』
『マナ様はやってる事が出鱈目なだけでまだ分かるけど』
「ああ、やっぱり、あの銃撃って僕以外じゃ見えてないんだ。僕でもギリギリ見える程に早いからね。アレは・・・・・・」
聖蘭の【閃光撃ち】は常人を超えた動体視力を持つ潤ですらギリギリ認識出来るくらい早いので、常人ではもはや認識出来ないのだ。
「いや、アレが見えてる時点で貴女も人間やめてるからね」
「違うよ。潤ちゃんは人間を超越してるだけだけど聖蘭ちゃんの動きは人間やめてるんだよね。いくら潤ちゃんでも空中であんな動きはしないよ!」
「【軽業】使ってるだけだからね」
「うん、それは分かるんだけど空中で凄い姿勢で反撃してるじゃん。既にかなり使いこなしてるよね!二段ジャンプってゲームの中でしか出来ないと思っていたよ!」
真那華は聖蘭が空中で更に上昇して攻撃を回避し反撃している瞬間を見ているのだ。
「僕もその瞬間見たけどやっぱり気のせいじゃ無かったんだ」
「たぶんこれが【軽業】を成長させた影響なのかもね。それにこれは回避スキルじゃなくて私にとっては反撃出来るから攻撃スキルよ」
聖蘭の銃と【射撃術】が【軽業】での空中反撃を可能にしてしまった結果、人間をやめた動きが出来るようになってしまったのである。
「あのさ、真那華・・・・・・よくよく考えるとさっきの追いかけっこ聖蘭でも出来たんじゃない?」
「うん、ウチも今になって気付いたよ。ウチより適任だったって」
潤はフィジカルとパワーはこのパーティでトップだが、スピードだけは【魔狼憑依】の影響で聖蘭がトップなのだ。
『そんな人間離れした動き出来るの?』
『【軽業】って空中回避しか出来ないけど、銃だからそれが可能なのか』
『いや、出来るかもしれないけど実際やらないよ』
『【軽業】ってそこまで多用するスキルでもないからな』
『【軽業】を攻撃スキルという奴初めて聞いたぞ』
『これは猟犬だから出来るんだろうな』
『猟犬はマナ様の魔法剣士とは別の意味で再現不可能の型とも言われてるからな』
『なんで?マナ様よりは簡単そうじゃない?』
『まず、最低限背後からくる敵を振り返らず撃ち抜くクラスの【感知】と【射撃術】が出来ないといけない事、そして狙った獲物は必ず狩るという殺意と覚悟、そして野生に備わる勘の良さがないと無理だ』
猟犬は、聖蘭自身は簡単に再現出来る型だと思っているが、猟犬は何がなんでも獲物を狩るという不屈と殺意が必要な上、本能的な勘の良さ、そしてイカれて無ければ出来ない型というのが周りの認識である。
「でも、結構進んだけど敵がでないね」
「いやー、もうちょい進んだとかにいるねー・・・・・・ん?ちょっと待って」
「どうしたの?」
「・・・・・・なんで、こんな所に劣等竜がいるのかなぁ」
「嘘でしょ!!」
「B級指定の怪物じゃないか!!」
二人は当然その怪物は知っていたが、D級ダンジョンにB級指定の怪物がいるのは完全に想定外だった。




