セルフスキルはレアサーチ
『超重アダマンタイト』と『禍津』の素材で作ったメイスは素材を集めた翌日の放課後に管理局の工房エリアにて作られた。
「流石に今回は苦労したわ。ある意味、潤と筋トレやっといて正解だったかも」
聖蘭はたまに潤とトレーニングをしている。
「うーん、デザインは良いんだけど何で色が亀っぽくなってるの?」
潤が受け取ったのは全体的の色は深緑色をしているメイスというより真上から見ると六角の形をしている棍棒に近く柄と握り以外から細い針の様な棘が付いており、聖蘭曰く、作った直後に少し目を離したら生えてきたらしく、これは真那華も予想外だった。
「それは『禍津』素材の影響が思った以上に強かったからそうなっちゃったのよ」
「見た感じこの棘そこまで頑丈そうじゃないんだよねー。殴ったら相手に刺さって取れそう」
「たぶん取れても少しすればまた生えて来るわ。棘は相手に刺さったままって中々エグい武器よこれ。名前は『緑鬼』としたわ」
聖蘭は武器の見た目とイメージで名前を付けている。
「武器の名前って作ってる時に浮かんで来るのかい」
「いや、見た感じのイメージが大きいわ。だって、棘の感じが鬼っぽいし、色が深緑だからね」
「聖蘭ちゃんは自分の武器以外の名前は案外適当だから気にしなくていいよ」
「うん、僕は『緑鬼』と呼ぶ事にするよ」
潤は『緑鬼』を持ち上げる。
「うん、重さもちょうどいい。後は実戦で使えるかだね」
「それなら、既に決まってるかな」
「え?どこへ行くの?」
潤と聖蘭の二人は真那華から何処へ行くのかは聞いていない。
「『枯れ鉱山』の隠し通路だよ。ちなみにチーム初の配信かな」
真那華はあの『マイナースケルトン』に教えてもらった隠し通路は配信する予定だった。
「隠し通路はともかく配信は聞いてないんだけど」
「うん、言ってないからね」
「僕も配信はやった事ないからなぁ。緊張しちゃいそうだよ」
「緊張するのは最初だけだから大丈夫。怪物と戦えばそれどころじゃなくなるから」
真那華は配信の事は二人に黙っていた。
「でも聖蘭ちゃん、そうはいうけどこの前はノリノリだったよね。宣伝までしてたし」
「宣伝じゃなく注意喚起ね。あの場で説明すれば少なくとも見てた人は手を出すのが困難な武器って分かるでしょ。偶にいるのよ。素材足らなくて作れないのに変な要望言ってくるお客さんがね」
聖蘭は既に何度か要求する素材が注目と合わず何度か断っており、辟易している。
「まぁ、いいわ。真那華の配信で私に来る無茶な注目を少しでも減らせるように利用してやるから」
「聖蘭ちゃんに武器を作って欲しくてお客さんが県外からたくさん来てるって聞いてるよ」
「ああ、だから第二、第四の土曜日の管理局って人が多いんだ」
「現状、【錬成鍛治】が出来るのは私だけだからね。勘弁して欲しいわ」
聖蘭の鍛治能力は既に日本中には知れ渡っており、海外に広がるのもそう遠くないのである。
「『ホワイトサンダー』を配布した影響もあるかもねー」
「それは間違いないわ。アレが配布されてから更にお客さん増えてる気がするもの」
真那華の配信で配布された『グラフェンナーワル』のレイピアこと『ホワイトサンダー』は聖蘭の【錬成鍛治】によって生み出されたレイピアで剣でありながら電気の光線を撃てるということで一気に有名になり、それを作った職人を求めてやって来る客が増えたのだ。
「葵さんも欲しがってたよね。あのレイピアの槍版を」
「アレ一本作るのに少なくとも『グラフェンナーワル』十体は倒さないといけないからね」
「世間では害獣扱いなのよね。あのレアエネミーのツノ、真那華の影響で値段高騰してるの知ってる?」
聖蘭はたまにレア素材の相場を見ているが、明らかに『グラフェンナーワル』のツノが『ホワイトサンダー』を配布する前と比べかなり値段が高騰しており、既に桁がおかしい事になっている。
「『グラフェンナーワル』は害悪過ぎて誰も狩りたがらないからね」
「実は聖蘭ちゃんなら瞬殺できちゃうんだよね」
「そうね。あんな簡単にお小遣いを稼げるとは・・・・・・あ」
「ほらーやっぱり、コッソリとダンジョン行ってたー」
聖蘭は自ら墓穴を掘り、真那華につっこまれる。
「うわ!このツノ一本で約三万もするの!!」
潤は気になり、『グラフェンナーワル』のツノの相場を調べていた。
「しかも、最高純度でひゃ、百万!?」
潤は驚きのあまり声が裏返った。
「それはたぶん、精錬出来る【錬金術】を持つ人が少ないというのもあるわね」
聖蘭は『グラフェンナーワル』の精錬は出来るがそれでも経験を積んでいないと出来ないくらいの難易度はある。
そもそも、『対滅玉』の難易度がおかしいため、それに向けて練習を重ねた聖蘭だから出来る訳なのだ。
「潤、百万で驚いてたらこの先、身が持たないわよ。よくよく考えてみなさい。それ『禍津』の素材使ってる事を忘れてるでしょ。『禍津』の素材って市場には出回ってないから、値段付けられないのよ。それを分かってる?」
「・・・・・・」
潤はそれを考えると表情が少しずつ青ざめていく。
「うん、雑務課のチームルームに戻って筋トレをしよう。そうしよう。はは・・・・・・ははは・・・・・・・・・・・・」
潤は筋トレをして現実逃避をするためチームルームに向かった。
「まぁ、最初はああなるわよね。私もあんな感じだったもの」
聖蘭にとって『龍脊椎』が正にそれだったが、後から考えてみたら『対滅玉』の方がもっとやばいものだと気付いたが潤とは違い、開き直る事にした。
それによって怪物がドロップする素材がレアかそうでないかという感じになり、価値観をぶっ壊された事で産まれた、レア素材に飢えた悲しき獣それが猟犬聖蘭である。
「潤ちゃんはそういう意味では純粋だよね。聖蘭ちゃんが飢えた野獣に堕ちるなんて出会った当初は思わなかったよ」
「飢えた野獣じゃないから!」
実際、聖蘭がこんな事になって一番困惑したのは真那華だった。
「だって、たまに小声で「レア素材の気配を感じるわ」とか怖い事言い出したら、本当にレア素材落とす怪物出て来るし。やってる事、筋肉と意思疎通する潤ちゃんと変わらないからね」
真那華はたまに口にする聖蘭の一人言に若干の恐怖を感じている。
「やめてよぉ、今度は「レア素材の声が聞こえる」とか「レア素材が私を呼んでいる」とか言い出さないでねッ!」
「え?真那華には聞こえないの?」
「既に手遅れだったよー!」
聖蘭は既にレア素材の魅力に取り憑かれてしまっていた。
「それで、聞きたいんだけど。あの『禍津』の素材、使ってて問題とかなさそうだった?」
「・・・・・・出来たメイスに棘が生えてきた事以外はないわね。どうして?」
「権能の力が人間にどういう影響を与えるか分からないからね。うーん、素材自体に問題なさそうなら大丈夫かな。権能の力といってもあの結晶と違って影響を与えていただけの素材なだけだからね」
真那華は大丈夫なのは分かっていたが、不安だった。
何故なら真那華は権能については知らない事だらけだからである。
「それならいいんだけどね。それで、真那華、承さんはどうなの」
「兄ぃの方はだいぶ苦戦してるみたいだねー」
「承さんがいるのに?」
「兄ぃだけならいいけど、いくら兄ぃでも数人のフォローは流石に厳しいよ」
真那華は承一人なら問題ないと信じている。
「ウチと兄ぃが囚われたダンジョンの話しをザックリしたでしょ」
「まぁ、かなり省略させられてたけど聞いてたわね」
「ウチらがいたダンジョンって六つの怪物の種族が争ってたんだよねー」
真那華は当時の話しを始める。
「ダンジョンに囚われてやっと戦う術を身に付けたと思った時だったかなー。あいつ等があらわれたのは」
「あいつ等?」
「ウチと兄ぃは獣人と呼んでいた奴等と鳥人と呼んでた奴等が争っていたんだけどね」
真那華はそこで真那華は悔しそうに呟く。
「それを見てウチと兄ぃは絶望したよね」
「どうして?」
「ちょっとだけスキルが使える程度で勝てるような相手じゃないからだよ。はっきり言って今の聖蘭ちゃんでもせいぜい相討ちに持って行ければいいところかな。奴等のスキルの成長度は極限に迫る程だからねぇ」
「でも、そんな奴がいるって聞いた事ないけど・・・・・・」
「いたらいたで今頃、管理局は大混乱じゃないかな」
「それもそうね」
真那華は当然、承が獣人と戦っている事は知っているが黙っている。
それは、承がまだ管理局に獣人の事を報告出来ないからだ。
獣人の存在は説明出来ても証拠がなければ存在する事にはならないのである。
その為には、獣人の死体を持ち帰る必要があり、その為には承以外で獣人を倒さなければならないのだ。
(管理局って、こういうとこお堅いよねー、まぁ、いい加減な事してたスキル研究局よりはいいけど・・・・・・ま、御役所仕事はこんなもんなのかな)
「ねぇ、もしかして承さんが苦戦してる相手って」
察しのいい聖蘭は承が何の相手をしているのか予想が付いた。
「やっぱり、分かっちゃうかな。でも、苦戦するのは兄ぃじゃないかなー。でも、アイツら程特訓するのにちょうどいい相手はいないのも事実なんだよねー」
「特訓?」
「アイツらはその変の怪物と違って人間と同じような知能があるからねぇ。それにスキルの理解度がここの人達とは段違いなんだよね。はっきり言ってS級ですら厳しいと思うよぉ」
真那華は、S級の実力があってやっと戦える程度だと思っており、倒せるかはまた別問題とも思っている。
そもそも、スキルへの理解度の差が一番大きいのと獣人や鳥人はスキルなしでも高い戦闘能力を持っており、スキルへの理解が浅くまともに育ててないスキルで敵うほど甘い相手ではないのだ。
「あ、これ秘密にしてねぇ。たぶん、兄ぃが帰って来る頃には分かるだろうけど・・・」
「まったく、言えるわけないじゃない。こんなとんでもないこと」
聖蘭はこの情報は混乱を招く事を予想しているので迂闊に言える訳がなかった。
匿名の猿2:マナ様のSNS見たか?
匿名の猿1:タンクが加入したと言ってた奴か?
匿名の猿4:マナ様の事だから、セイラちゃんみたいなとんでもない人連れて来たりして
匿名の猿3:そもそも、あの二人について来られる時点でヤバいとは思うが?
匿名の猿4:それもそうだな。
匿名の猿1:次の配信は『枯れ鉱山』ってあそこD級じゃなかった?
匿名の猿3:そうそう、D級なのもそうだけど取れる素材がしょぼいのと何に使うんだよって感じのかなり重たい鉱石が採れる程度のダンジョンだな。
匿名の猿4:ボスも見掛け倒しだからな。
匿名の猿3:ダンジョンボスの面汚しとも言われてるくらいだ。なんならあそこに出る『ボンバーヘッド』の方が強いとも言われてるな。
匿名の猿1:確かに危険度はボスよりは上だ。でも、どうして今更『枯れ鉱山』なんだ?
匿名の猿2:分からないか?マナ様だぞ!!わざわざここを選ぶという事は何か意味があるはず!
匿名の猿4:まさか、ボスをレアエネミーにする条件が分かったとか?
匿名の猿2:お前達の様な察しの悪い猿でも理解できたようだな。
匿名の猿1:なんだろう。お前に言われるとなんか腹立つな。
匿名の猿3:分かったところで大したボスじゃないってだってD級ダンジョンだぞ。高く見積もってもC級クラスが関の山、既にC級以上の実力者二人いるんだぞ。初見でも楽勝だろ。
匿名の猿4:確か今まで誰も見つける事が出来なかったんだろ?他の配信者でやってるところを見たが全員がお手上げだったのに本当に出来るのか?。
匿名の猿2:マナ様とその辺の猿以下と一緒にするな。
匿名の猿1:こいつこんなだったっけ?
匿名の猿4:マナ様に忠実な猿に堕ちたからな。
匿名の猿3:でも、実際さ。マナ様が出来なかったらもう誰も出来ない気がしないれ
匿名の猿1:確かに
匿名の猿4:認めたくないけどその通りなんだよな。
匿名の猿2:それが必然というものだ。




