厄介な注文
真那華と聖蘭は『グランドスネーク』と対峙する。
「ねぇ、真那華話しには聞いてたけどコレは」
「うん、この怪物って鱗が重いせいなのか動きが結構鈍いらしいんだよねぇ」
「まぁ、一撃は重そうだけどあのスピードじゃ避けるのも簡単でしょうね」
「D級ダンジョンのボスだからねぇ。とはいえ、油断はしないけど」
真那華と聖蘭は『グランドスネーク』の動きが想像以上に遅いのでD級ダンジョンだったと改めて思い至る。
「この鱗も見た目程硬くはないみたいかなぁ。ただ土が乾燥して固まったくらいの硬さなんだよねぇ」
「私の攻撃当たる度に怯んでるんだけど」
「弾の威力が高いから仕方ないよね。だって、もし武器にランクついてたらその魔填銃はS級は付くくらいの能力はあるかなぁ。そりゃ、D級の怪物は怯む威力は出るよねー」
真那華は囚われたダンジョンにいた怪物の所持していた剣を戦利品として持っており、それを使っている。
『ホワイトサンダー』もあるが、真那華は配信で最初に使いたかったので今回は使ってない。
(聖蘭の銃、今回初めて見てたけど殺傷能力高過ぎて、対人の決闘には向かないって言ってるの僕に負けた言い訳かなと思ったけど想像以上にヤバいよ。威力は段違いだけどやってる事、真那華のお兄ちゃんと変わらないんだよね)
実際、承は素粒子レベルまでの分解だが、聖蘭は消滅であり、やってる事は似てるが実際は違うものである。
「このボス、真那華の攻撃でも怯んでるけど」
「ウチは鱗ごと胴体を斬ってるからねぇ。でも確かに見かけ倒しと言われても仕方ないくらい弱いかなぁ。素材も大したの落とさないのは聖蘭ちゃんの顔見れば分かるし」
「なんでよ!」
「ん?そりゃあ、目がイキイキしてないからねぇ」
「確かにコイツは大したドロップをしないのは知ってるわ。でも、そんな目で見てるつもりは一切ないから!本当よ!」
むしろ、弁明がそういう目で見てる証明になっていることに本人は気付かないので真那華はあえてツッコミをしなかった。
「まぁ、確かにレアは落とさないかもしれないけど、食べると美味しいかもしれないじゃん」
「また、馬鹿な事を・・・・・・」
聖蘭はダンジョンの怪物を食べる気にはなれないのである。
「潤ちゃーん、こいつ倒したら食べようよ。蛇だからきっとタンパク質だよ」
真那華は離れた所で待機してる潤に叫ぶ。
(タンパク質・・・・・・だと・・・・・・!)
「こら!真那華!潤に変なもの食べさせようとしないの!」
「えー、だって鱗が無くなればただのデカい蛇なんだよぅ。きっと焼けば食べられるよ」
真那華と聖蘭の一方的な攻撃で『グランドスネーク』は既にボロボロで虫の息である。
「うん、コレで終わりかな【ファイアスロアー】」
真那華は中級魔法で火炎放射を放つ。
「たぶんこのサイズならいい感じに焼けると思うんだよね」
『グランドスネーク』は既に火の熱さで暴れる体力すら既になかったのか、そのまま火に炙られ倒される。
「さてさて、焼き加減はどうかなぁ」
「どう見ても丸焦げなんだけど・・・」
『グランドスネーク』の表面は既に真っ黒く焦げている。
「でも、内側はちょうどいいよ♪」
真那華は表面を切って中身を確認すると同時に剣で切って食べる。
「うん、淡白な味だから少し塩気が欲しいけど食べられなくはないかなぁ。少し持って帰って晩御飯のおかずにしよー」
「本気で食べてるし。しかも晩御飯のおかずって・・・・・・」
真那華は食べられる量を切り分けビニール袋に詰めて鞄に仕舞ってる様子を聖蘭は呆れながら見ていると背後から潤がやってくる。
「本当に食べていいの?というか、食べて大丈夫なものなのかな?」
「大丈夫だよ。今、試食したし」
「じゃあ、大丈夫か」
「ちょっと待てーー!」
今、目の前で『グランドスネーク』を食べようとしている潤と食べるよう勧める真那華に聖蘭はツッコミを入れる。
「どうしたの?聖蘭ちゃん、大きな声出して?」
「そうだよ。目の前にタンパク質があるだけじゃないか」
「え?私がおかしいの?今ここで『グランドスネーク』を食べようとしてるあなた達じゃなくて?私なの?」
聖蘭は、あまりにも二人が自然に『グランドスネーク』を食べようとしているのでおかしいのは自分ではないかと錯覚し混乱した。
「なんというか、ササミみたいな味だね」
「だよねだよね。ゴマだれとか付けたら美味しそうだよね」
「僕はこのままでも全然いけるかな」
聖蘭が一人混乱していると二人は『グランドスネーク』を食べていた。
「いいね。ここのボス。僕一人でも倒せそうだし、食べたくなったらすぐ来れる場所だし」
「なんで、ファーストフード店みたいな感覚になってるのよ!」
「だって、美味しいし倒せば実質無料だよ」
「喜んでるみたいだけど、道中にスケルトンいるの忘れてない?」
「そうだったーーー!!」
潤は美味しい食べ物を発見し、喜んだが道中に『マイナースケルトン』がいる事実を聖蘭に突きつけられジレンマになっている。
「クソぅ・・・スケルトンめ、ここまで来て僕の邪魔をするか!」
「なんで、そこまで『グランドスネーク』にこだわるのかが分からないわ」
「そう言わずに、聖蘭ちゃんも食べてみなって。飛ぶよ」
真那華は聖蘭に焼けた『グランドスネーク』を渡す。
「ええ!私も食べるの?」
聖蘭はまさか自分まで食べるハメになるとは思わなかった。
「大丈夫、大丈夫、鳥肉苦手じゃなければ食べられる味だから」
「まさか、私まで食べることになるなんて」
聖蘭は渋々仕方なく、一切れだけ『グランドスネーク』を食す。
「どう?どう?」
「味はササミと白身魚を混ぜた感じの淡白さね。食べれなくはないけど最初の見た目を知ってるから抵抗の方が勝つのよ」
聖蘭は率直な意見を述べる。
「強いて言うなら。野菜と豆板醤と花椒を使った激辛ダレを混ぜて食べたい味ね」
「聖蘭ちゃんは激辛好きだよねー。ウチは全然駄目・・・」
「でもさ、よくよく考えたらこの怪物ってダンジョンコアの魔力で生成されてるんだよね。食べたら、魔力増えそうなものだけど」
潤はダンジョンコアの話しを思い出し、その答えに行き着く。
「ウチは結構食べてるけど、そんなに変わった気はしないんだよね。たぶん、増えても微々たる量だから分からないのかもしれないねー」
真那華は囚われていた時は毎日のように怪物を食べていた為、自覚はないが微々たる量でも積もれば山となるのである。
その結果、承と真那華は通常の人間が持つ魔力の倍以上はある。
真那華も承も魔力が増えてる事に気付かなかったのは増えた量が、微々たるもので感覚的に分からないのとスキルの成長に目が行ってたのもあり気付かなかったのだ。
そもそも、真那華も承も初期の魔力を憶えていないのである。
「でも、何はともわれダンジョンクリアー。後はメイスを作って、次は盾かな。盾はどんな感じのがいいのー」
「うーん、頑丈なのはもちろんだけど聖蘭ちゃんが持ってる『フェンリル』クラスの盾が欲しいな。メイスはこれから作るのでいいけど」
潤は真那華と聖蘭にかなりの無茶振りをする。
何故なら潤は知らないのである。
二人が『フェンリル』を作るのにどれだけ苦労したのかを・・・・・・
「えっと、前向きに検討しておこうかな」
「そうね。盾に使える素材も調べておかないと」
真那華と聖蘭は遠い目をしながら潤の要望に答える。
「出来そうならどんな感じになるか教えてね」
二人はこの期待を込めた眼差しを向けられなおさら断る事が出来なくなって仕舞った。
実際、『禍津』の結晶があるにはあるが、権能の力が使用者にどういう影響を与えるか分からないので、容易に使いたくはなかった。
『禍津』のそれ以外の素材は耐久性と回復力は確かに使った装備への影響は与えるが本人にはこれといった影響はない事は確認されているが、結晶については簡単に検証が出来ないのもあり、不安要素が多いのである。
「真那華、素材の検証はあなたに任せるわ。私はその素材を合成か精錬して盾を作れば良いだけでしょ」
「メイスなら『フェンリル』クラスは分かるけど、それを盾でやれというのは中々の無茶振りなの聖蘭ちゃんなら分かってるよね」
真那華は一緒に『フェンリル』を作った聖蘭ならその苦労は分かってくれると思っていた。
「いや、私の無茶振りはあなたが、簡単に解決しちゃったじゃない。ほら、それこそ天才の本領発揮でしょ」
「うーん、そう言われちゃうとやらざるを得ないんだよねー、一つ案はあるんだけど一つ解決出来ない問題があるんだよね。その素材が存在してれば解決するんだけど・・・・・・」
「また、『対滅玉』みたいな事はやめてよ」
聖蘭は『対滅玉』は二度とやりたくない作業である。
「うーん、今回は作業が厄介というか必須となる二つの素材が厄介な性質を持ってる事とウチが求めてる素材の有無によるかな。こうなったらとことん付き合ってもらうからね。聖蘭ちゃん」
「え?まさか、その厄介な素材を使うのを分かっていたから渋ってたの?」
聖蘭は嫌な予感がするので真那華に確認を取る。
「聖蘭ちゃん、ウチは優しいから大抵の事は許すよ。でもね・・・・・・ウチの事を出し抜けると思ってる甘ちゃんに容赦はしないかなぁ」
真那華が答えなかったのは聖蘭の事と素材の事があり渋っていたのだが、聖蘭が真那華を出し抜いて一抜けしようとしたので真那華は容赦をする事をやめた。
「真那華、ちなみにそれはどんな素材?」
「『誘引核』という素材でね。その名の通り怪物を引き寄せる効果があるよ」
「ん?それのどこが厄介なの?加工するのダンジョンの外よ」
「うん、知ってるよ。でも、この素材は最高純度にするまで臭いきついんだよね」
真那華は精錬の過程で臭いが移るので極力やりたく無いのだ。
「身体に付くと短くても三日は取れないから最悪だよぅ」
「え?まさか、そう意味で厄介って事?」
「当たり前じゃん。ウチは厄介な素材って言ったはずだよ。その臭いが良い香りならまだ良いんだけどねー。純度低いとくさやよりもヤバいんだよ」
真那華はその素材を囚われてる時に手にした事があるのでトラウトレベルでやりたくないのである。
「なんでそんな臭いものを採用するのよ」
「潤ちゃん【挑発】持ってないみたいだから擬似的な機能の一つとしてやってみようかなと思っただけかな。『誘引核』さえあればたぶん再現は可能だからね。それに最高純度だと臭い消えるし」
『誘引核』とは魔力で怪物を呼び寄せる食虫植物系の怪物が持ってるレア素材でその名の通り特殊な魔力を撒き散らし怪物を呼び寄せる効果があると真那華は期待しいる。
「で、もう一つが、『玄武甲』って奴ね。魔法に対して強い減衰作用がある事で有名だけど、鍛治職人さんたちは絶対に嫌がるんだよね」
「それが厄介な理由なのね」
「ダイヤモンドよりも硬いという理由と単純に『超重鉱石』ほどでは無いにしろ重いし、加工に向かないんだよね。まぁ、そこは腕の見せ所じゃない?」
「玄武って亀よね。そのままでも問題無い気が・・・・・・」
「聞こえてるんだけど、確かにデザインは気にしないけど流石にダサいのは嫌だよ」
「やっぱりダサいのは嫌なのね。分かったわ。ここは【錬成鍛治】の力を信じるしかないわね」
潤はそのままで行こうとした聖蘭を止める。
「それで、残りの一つが存在するかも分からない素材でしょ。ちなみに特徴って何なの?」
「それは見つけてからのお楽しみ。でも、あるとは思うんだよねぇ。『超重鉱石』みたいなのがあるからさ」
真那華は『超重鉱石』のような素材の存在と特性を知った事でこれとは似てるが別の性質の素材があってもおかしくないと考えていた。
「それさえあれば、潤ちゃんが欲する盾は作れるかなぁ」
真那華はそれでも『フェンリル』に届くのは難しいと思っており、『フェンリル』は聖蘭にとって最高傑作であると同時に真那華にとっても最高傑作なのである。
(うーん、やっぱり『対滅玉』クラスの素材がないと『フェンリル』と同等にはならなそうだよね。でも、『対滅玉』並の作業はもう勘弁かなー)
それと同等となると正に『対滅玉』と同等の苦労をしなければならないのは目に見えている。
しかし、何度も真那華や聖蘭が言ってるように二度とやりたくない作業なのであった。




