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クソガキダンジョン奔走記  作者: 酒粕小僧
チームD-アニマルズ結成

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バフ系アイドルを焚き付けろ

 真那華は怪物の仕掛けて来る奇襲を回避しながら狩っていく。


「はっきり言ってこれくらいは序の口かな」


『ここのダンジョンパーティで周囲確認しながら、今までやって来たんだが?』


『今まではパーティで進むのが正攻法だったよな』


 真那華は怪物が出現すると同時に倒しているのでリスナーには何が起きてるか分からない。


「うーん、やっぱりC級ダンジョンだとこんなもんなのかなー」


 真那華はあまりの手応えの無さに落胆している。


『マナ様の実力だとC級が退屈なのは分かるけど』


『B級に上がるには実績が必要だから』


『C級までの昇級と比べると簡単には上がらないからな』


 真那華は実力に関してはC級以上はとっくに突破しているが実績がない事が足枷になり、昇級出来ないのである。


『カナカナちゃんはC級だけど、ヒーラーとしてはB級なんだよなぁ』


「確かヒーラーやサポーターは管理局の調査に同行できるから実績つきやすいんだったかな。管理局でもヒーラーとサポーターの手を借りたい程、数が少ないんだね」


『そもそも、国内のアタッカーが多すぎるんだわ。タンクも少ない方だが、ヒーラー、サポーターは少な過ぎてどこのギルドも募集してるくらいだ』


 日本国内全体の潜行者のポジション割合は51%がアタッカーが占めており27パーセントがタンク、13パーセントがサポーター残りの9パーセントがヒーラーとなっており、日本国内は圧倒的にサポーターとヒーラーが不足している為、C級以上に限り特例として同行を許可されてる任務が存在する。


 その特例というのが管理局の調査任務への同行というダンジョン内の調査である。


 管理局の主な調査の内容はダンジョンから怪物が溢れるいわゆオーバーフロウが発生しないか確認する為の調査である。


 管理局内にも数人サポーターやヒーラーを抱えているが、それでも数が足りなくなる事がある為、サポーター及びヒーラーに限り募集がかかっている。


 時々、稀に調査以外の任務がある時もあるが多くても年内に三回くらいしかなく、今回の八王子の任務もそのうちの一つである。


 そういう理由からもサポーターとヒーラーは実績は得やすい要因になっている。


 むしろ、アタッカーは既に数が飽和していてそういう機会がなかなかないのである。


『そういえば、管理局で『深淵の樹海』三層の調査募集してなかったか?』


『してるがA級以上が条件だろ。そのせいでなかなか人集まらないって聞いた』


『A級ってそんなに少ないの?』


『少なくはあるけど、集まらないほどの人数では無い。A級のほとんどは二層初攻略時の凄惨さを目の当たりにしてるからさ、それに『禍津』が出てきたのも影響して更に集まらなくなってるな』


『二層攻略で引退した人多かったからな』


 リスナー達は『深淵の樹海』の二層攻略について話していた。


「だいたい話しは聞いてるんだけど二層は何がやばかったのかな?」


 真那華は『深淵の樹海』一層をボス以外は単身で突破しているが、その次の層に何があるのか分からないのである。


『少なくとも一人は火属性が得意な魔法使いは必須』


『弱点ヶ所突かないとまともに効いているのかすら、分からない』


『物理で斬ったり殴ったりする程度で倒れてもすぐに起き上がってくる程にタフ』


『弱点ヶ所を弱点属性で攻撃するのが一番効果的と言われてる』


『前衛が時間を稼いで、魔法使いが貫通力の高い火属性上級魔法【フレイムランス】で倒すのが正攻法らしい』


「という事は三層になるとその正攻法すらもまともに効くか怪しくなるね」


 真那華は権能の影響を受けた怪物がどうなるのかは知っている。


 知っている為に今の限界が二層だという事を理解した。


『マナ様から見てもやっぱりそう思う?』


「うん、だって怪物に与えてる権能の力って層が増える度に増大するからね。でも、まだ耐久力が高いだけだから良いよ。そこに自動回復が加わったらどうなるか」


『深淵に樹海』の一層と二層は確かに耐久力は高いが一部を除き自動回復は持っていない、持っていないというより微弱過ぎて意味を成して無いのだ。


『それダンジョン研究所の所長が懸念していた事だよね』


 ダンジョン研究所は調査で得た結果を元に研究をしている所であり、日夜ダンジョンと怪物の研究を行っている。


『マナ様、スキルだけじゃなくダンジョンや怪物にも詳しいの?』


「残念なざら、その辺は専門外なんだよね。だって怪物は倒せれば良いだけだし。知ってても取れる素材か食べたら美味いか不味いかくらいかな」


『この言い方『ボルテックロブスタ』以外も食べてるな』


 真那華が詳しいのはスキルや戦い方で怪物は基本的に注意するべき怪物しか覚えて無いのである。


 むしろ、そっち方面に詳しいのは意外にも真那華ではなく承なのだ。


 その頃、承は一人で【感知】の特訓に苦戦してる奏の指導をしていた。


「無理無理ー、最低でも半日も保たせるなんて無理ー、一時間でやっとなんだよ!分かる!?これを一ヶ月後に出来るようになんてなる訳ないじゃん」


 奏は【感知】の常時発動をしてるが、何度やっても一時間くらいしか保たずに泣き言を言っている。


「出来なきゃ死ぬ。それだけだ」


「ムッキー、さっきからそればっかじゃん!コツとか無いの?コツとか?」


「無いな。何度もやる。それだけだ」


 奏は承にコツを聞くが、話にならないのである。


 何故なら承はこの方法で【感知】の常時発動を覚えたからだ。


 しかも、承は【武術】と【闘気】と並行して鍛えていたので、それに比べれば楽だと思っている。


 承も別のやり方を知らないわけではないが、それは真那華のやり方で効率は上がる代わりにリスクは高くなる方法をやっていたが、それでも一日は維持できるようになるまでは今奏がやってる方法でやっていた。


「本当に簡単に言ってくれるから腹立つー、奏もうやめたー」


「そうか、分かった。それならやり方を変えよう」


 承はこのやる気のないヒーラーを焚き付ける方法が何となく分かっていた。


「な、なんだ、やっぱりあるんじゃない。教えなさいって」


「三日」


「はい?」


 承の言った意味が奏には分からなかった。


「なんの日数か分かるか?」


「・・・・・・あなたが【感知】の半日常時発動が出来るようになった期間?」


「俺でも二週間はかかってるな」


「じゃあ何の日数なのよ!」


 奏は何の日数か分からず苛立っている。


「あんたが敵視する俺の妹・・・配信ではマナだったな。マナが半日常時発動できるようになった期間だ。ちなみに一週間で寝ている間も24時間常時発動出来るようになってるからな。まぁ、俺の妹は天才だからな。凡人の俺とあんたと違ってな」


 真那華が天才なのを承は疑った事はない。


 だからと言って自分を卑下した事もない。


 何故なら、真那華にとって承は凡人では無いからである。


 真那華にとって承は理不尽が服着て歩いてるような存在である。


 しかし、奏にとってそれは配信者としてのプライドが許さなかった。


「・・・・・・マナが、三日で会得出来た事が奏に出来ない訳無いじゃん。奏がマナなんかより優秀なところをお兄さんであるあなたに教えてあげる」


 奏はマナの名前を出した事にムキになりやっとやる気になるのだった。


「遅くても半月で使えるようになっていては欲しいんだがな」


「安心しなさい。この奏ちゃんなら半月と言わず一週間でマスターしてやるから」


(ここまでチョロいと少々心配にもなるがやる気になってくれるならそれでいい)


 承は奏が真那華の愚痴をギャーギャー騒いでいたので、真那華をネタに焚き付けられると考え、この手を使った。


(ただの索敵感知じゃ一ヶ月どう頑張っても、獣人の【隠密】を【感知】するのは不可能だ。だが、俺と燐さん以外は魔法が使える。魔力感知、こっちならまだ間に合う)


 獣人が扱う【隠密】は成長度がかなり高く一ヶ月程度の特訓ではどう考えても間に合わないのは、承が一番分かっていた。


 しかし、須藤と奏は魔法を扱える為、魔力感知を体得出来る可能性があり、承はこっちに賭けたのである。


(須藤さんは既に半日は保つようになっていたな。そういや、真那華に負けた後に鍛え直したと言っていたか)


 須藤は真那華との決闘に敗北後、書類仕事で鈍った腕と勘を取り戻す為にA級ダンジョンで特訓をしていたと話していた事を承は思い出す。


(やっぱり、現状で一番問題点があるとしたら奏だな。所持してるスキルを聞くのはマナー違反だが、やむを得ないか)


 承が奏の所持スキルを聞き出すか悩んでいる時だった。


「お兄さんの持ってるスキルって何?あの獣人・・・だっけ?あの怪物を一瞬で消すなんてエグいスキル聞いたこと無いんだけど、奏の持ってるスキル教えるから教えてくれない?」


 奏の方から聞いてきたのである。


「他言無用で頼むぞ」


「分かってるってば」


「俺の持ってるスキルは【闘気】、【武術】、【感知】、【空間操作】だ。普通だろ?」


 承は嘘は付いてない。


 何故なら、これ全て承が元々持っていたスキルだからだ。


 ただ、その全てが『極限スキル』になっているというだけの話しである。


「あのさ、お兄さん。奏の事馬鹿にしてる?流石にそのスキルは全部知ってるしあんな馬鹿げた威力も出ない事も知ってる。正直に話す気ないでしょ」


 奏はその全てのスキルは当然知っていたので、馬鹿にされたと思って苛立っている。


「あんた、【感知】についてろくに知らなかっただろ?他のスキルにもあんたの知らない事があると何故想像すら出来ない。俺のスキルはかなり鍛えたからああなっただけだ」


「た、確かに【感知】は知らなかった。というより今はもう解体されたスキル研究局がいい加減な事ばかり言ってたから」


 スキル研究局が日本に与えた影響は大きく、その爪痕がいまだに残っている。


「まさか、そのどれかを鍛えるとあの馬鹿げた攻撃が出来るという事ね」


「まぁ、そういう事になるな」


 承は【闘気】の『極限スキル』【神気】をミスリル球に纏わせて放ってるだけである。


【神気】は【神気】でしか防げないという効果を持ち、それ以外では防げない上に加減が難しい程の馬鹿げた威力がある。


「流石にそれは教えてくれないか」


「そればかりはな。さぁ、俺は答えた次はあんたの番だろ?」


「分かってるから!。奏のスキルは【感知】、【聖気】、【投擲術】、【幻魔術】、【回復魔術】、【増幅(ブースト)】そして、固有スキルの【応援(エール)】だよ」


「ん?【増幅(ブースト)】を持ってるのか」


「持ってるけど、これゴミカスだよ。これのせいで奏かなり燃費悪いし」


【増幅(ブースト)】はスキルの威力や性能、効果上昇の効果をもたらす代わりに消費する魔力が増えるもしくは精神的負荷が多くなるというスキルである。


「だからか」


「何が?」


「あんたの場合、【増幅(ブースト)】の影響で【感知】の常時発動でかかる負荷が多いんだ。でも、何かしらの上昇効果があるはずなんだが」


「それの比較が難しいというのも【増幅(ブースト)】の嫌な所なんだよね」


「今気付いたが【増幅(ブースト)】をオフに出来ないのか?」


「!!」


 奏は承の発言に何故か驚く。


「それよ!それ!いつもスキル使う時に必ずつける癖があるから今回もそれをやってしまってたよ」


「それでもう一度【感知】を常時発動してくれ」


「ああ、体感で分かるけど、全然違う。これなら三日とかからず出来ちゃいそう」


「ああ、なるほど。そういう事か・・・」


「どうしたのよ」


「たぶん、【増幅(ブースト)】はあんたが思ってるほど使えないスキルではないという事だな」


 承は【増幅(ブースト)】のもう一つの効果に気付いた。


「そのスキル、スキルの成長度も増幅してる可能性がある」


「・・・・・・言われてみればそうかも、スキル研究局が所有者が少ない産廃扱いしてたから、全然気にしてなかった」


【増幅(ブースト)】は所有者は少ないが一般的なスキルである。


「また、スキル研究局か」


 承はスキル研究局の残した罪はかなり重いものだと考える。


「それなら、【増幅(ブースト)】は使ったままで特訓した方がいいかもね」


「そうだな。でも、本番の時は切るのを忘れるなよ」


「はーーい」


 承は一抹の不安を覚えながら、自分の特訓を始める。

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