ダンジョン資源は無限じゃない
真那華が配信した翌日、潤の装備を作るのに必要な素材、『超重鉱石』を取りに『枯れ鉱山』に真那華一行は踏み込んだ。
「ねぇ、本当にここってスケルトン出るの?どう見ても坑道だよね!」
潤は来て早々、スケルトンに怯えている。
「とはいっても、ここ廃坑なんだよねー」
「スケルトンは墓場以外だと廃墟とか廃都とかのダンジョンには普通にいるみたいだから怖がってたらキリないわよ」
真那華と聖蘭は特に気にしていなかった。
「でも、『超重鉱石』回収したら帰るんだよね」
「見つかればの話しだねー。でも、ネットの情報だと奥の方に行かないと見つからないらしいし、そこまで行ったらボス倒した方が帰りは速いんだよねー」
「もし、出たらもちろん真那華が先陣を切ってくれるんよね」
「あなた、自分のポジション分かってる?」
潤のあまりのビビりっぷりに聖蘭はかなり呆れている。
「真那華、確か私の『フェンリル』なら物理耐性系も関係ないんだっけ」
「うん、そういう要望だったでしょ」
「ここまで使い勝手がいいと苦労した甲斐があったわ。本当、大変だった。」
「そうだね。頑張ったね。『対滅玉』の製作は大変だったよ。本当に」
聖蘭と真那華は遠い目をしている。
「僕は二人の話にはついていけないよ」
「知らない方が幸せなこともあるのよ。でも、あなたも私が昴さんの魔填銃を作ってるの見てたわよね」
「見てたけど、僕にはちんぷんかんぷんだったよ。でも、昴さんも分かってなさそうな顔してたから少し安心したね」
あの場には真那華、潤、昴、葵が聖蘭の作業を見守っていた。
「だってあのタイプの銃を作れるのは世界は分からないけど、国内だと聖蘭ちゃんただ一人だからねぇ。必須素材で使う『龍脊椎』が伝説級の素材だから聖蘭ちゃんは助かってるんだよね」
潤と昴は何をしているのか分からない顔をしていたが意外にも葵は理解していた。
「本当、魔填銃は一つ作るのにも手間がかかるからやりたくないのよ。それであの後、葵さんに『グラフェンナーワル』と『ミーティアライト』、『蓄電結晶』を使ったランスを製作して欲しいと頼まれたけど」
「『グラフェンナーワル』のレイピア『ホワイトサンダー』を自慢していたギルドメンバーがいたから、それの槍版が欲しくなったと言ってたね。でも、それやるとタンクの葵ちゃんが主砲になっちゃうよー」
「『ホワイトサンダー』の時点でコメント荒れてたのは見たから知ってるわ。話し戻すけど、素材は魔填銃を手に入れて上機嫌の昴さんが試し撃ちついでに葵さんと一緒に行くらしいわ」
『ホワイトサンダー』は魔力が溜まるとビームを撃てる為、魔法使い泣かせと言われたが、前線維持のタンクまでそれをやり出したら魔法使いの立つ背がなくなるのだ。
「でも、スバスバにはたぶん相性は良いんだよね」
「スバスバ?」
「真那華が付けた昴さんのあだ名よ。まぁ、本人は恩人の妹だから構わないとか言ってたけど・・・」
潤は昴のあだ名を知らなかった為、聖蘭が呆れながら教えた。
「そういえば、昴さんと何か取引してたみたいだけど、何を要求したの?昴さんの様子からして昴さんには得のある事は分かったけど」
「ん?『魔鉱洞窟』を探索させて欲しいって頼んだだけだよ。『魔鉱洞窟』に起きてる異変を解決するついでにね」
「そこって、『バルムンク』が独占してるダンジョンじゃない!ん?今、異変って言った?」
聖蘭はまさか『バルムンク』が保有してるダンジョンの探索許可をもらった事に驚いたと同時に異変という嫌なワードがあった事に気付いた。
「うん、兄ぃからは聞いてたけど。この異変はスバスバが悪いというより前に管理してたとこが悪いね。リスクよりも利益を優先した管理をしていたという事が嫌でも分かったよ。ダンジョンというものをまるで分かってない管理をしてたね。そのツケをスバスバが払ってる感じであまりにも可哀想だから、なんとかしてあげたいと思ったんだよねーなんかスバスバって見た感じ苦労多くて幸薄そうじゃん」
「えっ!?そんな話し聞いた事ないけど?」
一般的には『魔鉱洞窟』は『バルムンク』が独占しており、一定量しか市場に出回らないよう独占していると言われている。
「そうだよね。馬鹿正直に言った方が混乱を招くだろうしね。スバスバも悩んだと思うよ。だって、こんな地雷というのも可愛いくらいのものを押し付けられて困らない方がおかしいからね」
真那華にとって『魔鉱洞窟』から吹き出すダンジョン由来の毒は流石に地雷というにはあまりにも可愛い過ぎるのだ。
「でも、その原因を真那華なら取り除けるから昴さんは頼んだんでしょ」
「そうだよ。他の人達は出来なくてもウチは出来るからね」
「そもそも、ダンジョンで起こる異変ってオーバーフロウくらいじゃないの?」
聖蘭のような一般からしてみればダンジョンの異変と言ったらオーバーフロウしかない。
「オーバーフロウの原因って何か知ってる?」
「確かダンジョン内部の魔力の活性化だったかしら、だからダンジョン内の怪物を狩ったり、資源を回収して抑えるんじゃなかった」
「そうそう、流石聖蘭ちゃん。学年成績二位だけの事はあるねぇ」
「一位のあなたに言われても馬鹿にされてるようにしか聞こえないわよ!」
聖蘭より真那華の方が成績が良いので授業態度などの注意で何も言えなくなっているのである。
「うんうん、それじゃあ。聖蘭ちゃん、それが逆転するとどうなるか分かる?」
「え?そんな事、起こるの?」
「起こるから言ってるんだよぉ。というより正に発生してるんだけどね」
「それって、まさか・・・」
それこそが正に『魔鉱洞窟』なのである。
「うん、『魔鉱洞窟』のことだよぅ。ダンジョンの資源は無限だとか言われてるけど、正確にはダンジョンコアが保有する魔力量が莫大だからそう言ってるだけなんだよね。さっきのオーバーフロウの話しになるけどより正確にはこのダンジョンコアが活性化するとダンジョン内部も活性化するからオーバーフロウが発生するんだよね。で、今回はその逆といえば分かるかなぁ」
ダンジョンコアとはダンジョンの資源を自然生成させたり、怪物を生み出す大元である
「それって、ダンジョンコアが空っぽって事だよね」
「うん、潤ちゃんも分かって偉いねー」
「なんだろう、真那華にそれを言われると馬鹿にされてる気がするよ」
潤は真那華に褒められても素直に喜べなかった。
「ダンジョンコアはいわばダンジョンの心臓だからねー。ダンジョンコアは怪物の死骸とかを魔力に変換して循環させたり、ダンジョンコアが魔力を自然回復させてるんだけど、ダンジョンコアの自然回復すらも追いつかない程の魔力の消費。そうなるとダンジョンコアはどうなると思う?」
「機能を失ってるんなら、ダンジョンコアを破壊した時と同じでダンジョンが崩壊するんじゃないの?」
聖蘭は学校で習って来た知識で答えを導き出す。
「うん、流石にこれは学校では教えられないよね。だって、これ教えちゃったら今までダンジョン資源で得した人達が大損する話しだからね」
「え!?違うの?」
「僕も聖蘭と同じ考えだった」
「・・・・・・うーん、でもこれは二人には考えて欲しいから今すぐには答えは教えられないかなぁ」
「えっ!?ここまで引っ張って!」
「勿体ぶらないでよ」
真那華は答えを知ってるからこそ二人には考えて欲しかった。
知ってるからこそ、『魔鉱洞窟』がこういう状況になってるのか分かるのだ。
人の欲に底がないようにそこに激毒が潜んでいても誰も触れなければ広まる事はないのである。
それこそが『魔鉱洞窟』である。
ちなみに聖蘭には黙っていたが、配信許可も実は得ていたのである。
「うん、だってこれって自業自得だからね。日本はたぶんここだけだと思うけど世界規模となるとどうなる事やら。むしろ、この程度で済んでるのを日本国民はスバスバに感謝すべきだねぇ。たぶん、資源を得る量に制限かけてるのが効いてるのかな」
実際のところ真那華の予想通り、国によっては村や街単位で謎の奇病が流行っており、その場所に共通してるのが、国が管理する資源が豊富なダンジョンが存在する場所なのである。
「まったく、承さんなら教えてくれそうだから、そっちに聞くからいいわ」
「うーん、兄ぃはウチより話してくれないと思うなぁ。だって、ウチにすら権能については教えてくれないんだよ!この前の動画で権能の眷族の倒し方が分かったんだから!兄ぃはウチより隠し事多いんだからウチが教えない事を兄ぃが教える訳ないじゃん」
真那華は承が隠し事をしている事は知っているが聞いても教えてくれないか、はぐらかされるかのどちらかなので、自分の意思で話すまで我慢してると同時に真那華は承より口が軽いのは自覚している。
「そりゃあ、アレだけ強けりゃ。秘密の一つや二つ持ってそうだけどね」
「確かに承さんはあなたより口は固そうね」
潤はあの圧倒的理不尽な強さには何か秘密があると思っており、聖蘭は承の人となりを知ってるので察する事ができた。
「兄ぃは『魔鉱洞窟』に関しては難色を示してたからね。まぁ、分からなくもないけどね」
「むしろ、承さんなら進んでやりそうだけど?」
聖蘭は承が放っておくとは思えなかった。
「聖蘭ちゃんは、兄ぃの事を分かってないなー、兄ぃはウチが『魔鉱洞窟』を戻した前例を作る事を心配してるんだよ。本来ならダンジョンコアを破壊すれば済む話しだからね」
真那華からしてもダンジョンコアを破壊するのが一番楽な解決方法だと考えているが、それをすると貴重な資源が豊富なダンジョンを一つ失う事になるのだ。
「どうして、前例を作る事が問題なんだい」
潤はその理由が疑問だった。
「うーん、それ言うとさっき聖蘭ちゃんと潤ちゃんに出した問いの答えになっちゃうんだよね」
真那華は二人に出した問いに答える気はなかった。
「さてさて、話してたらやっと敵さんのお出ましだよ」
三人が話していると目の前に現れたのは、『ストーンワーム』と呼ばれる岩でできた大きなミミズみたいな怪物が出てくる。
「まったく、話の腰を折ってくれたね」
『ストーンワーム』の体当たりを潤が受け止める。
「その責任を取ってもらおうかしら」
潤が盾で弾いて『ストーンワーム』が怯んだ瞬間に聖蘭が飛び出し『フェンリル』から消滅弾が連射される。
「うんうん、いい連携だねー。これはウチいらないかなぁ」
「その割に剣抜いてるのはどうしてだい?」
すでに抜剣してる真那華に潤は指摘する。
「ちょっとした冗談だって、ウチも戦いたいよ」
真那華は『ストーンワーム』に接近する。
「【岩砕斬】」
真那華は『ストーンワーム』の胴体を両断するが頭の部分がまだ生きている。
「潤ちゃん、後は任せた!」
「うん、【クラッシュスイング】」
潤はメイスを振りかぶり、『ストーンワーム』の頭部を叩き潰す。
『ストーンワーム』はそれでも暴れ岩を撒き散らすとそれを聖蘭が全て撃ち落とし、『ストーンワーム』は動かなくなった。




