大人を舐めるなクソガキが
真那華は学業優秀、運動神経抜群の天才児であり、両親はすぐに真那華を褒め甘やかした結果、このようなクソガキが爆誕した。
「まったく、ここまでお猿さんだと説明も苦労しそうだね。ウチって天才だけど教えるのはちーとばかし苦手なんだよね。猿に言語教えろって言っても無理な話じゃん。それと同じ認知だと思って聞いて欲しいなー」
真那華は天才ではあるが、性格にかなり難がある天才だ。
天才故に凡人の気持ちが分からないのである。
「北条さん、やはりこいつはここで大人に対する口の聞き方を教育すべきです」
須藤は我慢出来ずに立ち上がる。
「落ち着くんだ。真那華だったか、君も煽らないでくれないか」
北条は須藤を止めつつ真那華の煽りを止める。
「仕方ないなー、ではでは、説明するけど、スキルって使えば使うほど成長するのは当然の認知だと思っていい?」
その真那華の発言に承以外の二人は何言ってんのという顔をしている。
「そこからかー、スキルが成長するなんて初歩の初歩なんだけど旧石器時代の人類くらいの認知の差があるんだけど大丈夫?」
一々、発言に棘があるのはそこまでスキルの認知度が低いからショックを受けてることも大きい。
「じゃあじゃあ、同じスキルでも能力に差異を感じた事は?」
「確かにそれはあるな。てっきり個人差だと今まで片付けていたが」
真那華の質問に北条が答える。
「うんうん、ここでやっと猿から類人猿に近付いて来たかな」
「なんで、貴方の妹は煽らずにはいられないの?」
須藤は兄である承に質問するが承は答えない。
「スキルは鍛えれば強くはなるけどどこかで頭打ちになる事は?」
「確かに鍛えていたが鍛えた成果を感じなくなる時があるが、ある時からまた成果を感じるようになった時が何回かあるな」
「それってそうなる前に命の危機に関わる限界を出すような相手と戦ったりしてない?」
「・・・・・・確かに言われてみればそうだ。考えた事も無かったな」
「それがスキルの成長で一定の経験で頭打ちになるけど限界を破るような戦闘を行うと頭打ちになっていたスキルが成長して一段階強くなるの。それは理解した?」
「お、おう」
「これで類人猿から旧石器時代の人類に近付いたってとこかなぁ」
真那華は説明するが煽る事は忘れない。
「でも、それを何度も繰り返すとどこかでそのスキルが使用者に最適化される。一番分かりやすいのは【感知】かな。兄ぃの【感知】の範囲はそこまで広くないけどウチは結構広範囲を感知出来るよ。スキルの効果に個人差が出てくるのは成長の過程で持ち主に最適化していくからなんだよね。だから同じスキルでも多少の違いが出るのはそういう事があるからかな」
真那華の話はこの後話すことの前提として話した。
「それじゃあ、次は統合スキルと極限スキルについて説明するけど原始人について来れるかな?」
「統合?極限?名前からして嫌な予感しかしないんだが」
名前からして、北条は嫌な予感しかしない。
「統合スキルはその名の通りスキルが統合され一つになるスキル、普通に取得するのはまず不可能で統合されるスキルが一定レベルまで成長してる事がまず前提で統合が可能なスキルを同時に何度も発動し成功すると統合されるけど確率は渋々~。一つに統合される事でスキルとしての能力は多少変化するけどその能力は正に破格と言ってもいいよね。それと同等かそれ以上の力を持つのが極限スキル、先程話したスキルの限界を何度も突破させて限界すら超えられない程の成長を遂げたスキルが極限スキルだよ。一生のうちに一つでも極限にできればいい方だからね。実際見たなら分かるけど兄ぃはさっき話した全てを極限スキルにしてるの」
「えっ?」
北条は意味が分からなかった。
極限スキルは人が生涯をかけて一つ多くて二つ手に入れる事が可能なレベルでその性能は一つでも破格、それを三つ以上も持ってるのは訳が分からなかった。
真那華の統合スキルが発現したのは偶然の産物で【剣術】、【四属性魔術】、【光魔術】を同時に無理矢理何度も扱っていた結果【光魔剣術】に統合され、魔剣士としての型が可能となった。
「兄ぃはこんなだけど実は凄いんだよ。ウチの自慢の兄ぃなんだから」
何だかんだ言いつつ真那華はブラコンなのである。
「まさか、50年経ってもこの程度の理解度なんて、そりゃあのダンジョンの怪物に後れを取るくらい弱々な訳だね。それともー、ウチが強すぎるだけかなー」
「もう、我慢なりません。決闘です。決闘を申し込みます。もちろん受けますよね。あそこまで舐め腐ったんですから。クソガキが大人を舐めるんじゃねえええ」
須藤は興奮気味に真那華に決闘を申し込む。
「まったく、沸点低すぎない?自分の実力を客観視できないようじゃダンジョンでは早死にするよ」
須藤は時期こそ違うものの『ウォーリアウッドゴーレム』を討伐したパーティの一人であり、今も二人いる現役のSランク『潜行者』の一人である。
「いいのか?」
「流石にああなったら止められん。討伐隊としてのプライドもあるだろうから。仕方ない、演習場を確保するか」
北条が第二演習場を確保すると須藤が決闘する事を聞きつけた暇な局員や『潜行者』がギャラリーに集まって来る。
それもそのはずで須藤こと須藤佳奈は『ウォーリアウッドゴーレム』の討伐の経験をした後、第二層のボス討伐に貢献した『潜行者』であり、かなりの有名人が決闘となるとギャラリーが集まって来るのは当然といえば当然だ。
ルールは魔法ありの武器ありによる模擬戦であった。
「へえ、模擬戦用は刃が無いゴム製なんだねぇ。ウチに一撃与える事が出来たら貴女の勝ちにしてあげようか?」
「本当に舐め腐ってくれますね。絶対に後悔させてあげます。その提案飲みましょう。貴女が私に負けたら今後一切管理局に舐めた態度を取らない事。いいですね」
須藤はどうしても真那華を分からせてやりたい
ようだった。
「じゃあ、ウチが勝ったら、猿以下の分際で逆らって申し訳ありませんでした。真那華様って謝りながら土下座ね」
「分かりました。受けて立ちましょう」
この時、須藤にとって絶対に負けられない戦いとなった。
模擬戦はすぐに用意され、すぐに始まった。
「俺の知る限り、須藤はトップレベルの『潜行者』である事は間違い無いが流石に相手が悪いと俺は思ってるんだ。それが彼女の成長に繋がるならそれもいいと思う」
「胸を借りたかったと?」
「君の妹に借りる胸があるとでも」
真那華は低身長かつ幼児体型を気にしており、その話題に触れようものなら鬼の形相で怒り散らすのだ。
「それ、妹の目の前で言ったら間違いなく殺されるな」
その発言は妹にとっての逆鱗だと承は理解している。
「さて、始まるぞ」
北条が模擬戦が開始される事を告げるとやはりというか先に動いたのは真那華だった。
「お手並みはっいけーん⭐︎」
真那華は剣を薙ぐと、須藤は剣で防ぐ。
「舐めるなと言ってます。でも、私の固有スキルを見たら何も言えなくなりますよ」
「貴女の【剣術】スキルを【模倣】します」
須藤佳奈の持つ固有スキル【模倣】は対象のスキル一つを模倣するというもので、一つまでしか模倣できないが使いようによっては強いスキルである。
しかし、須藤はそれが甘い考えだと即座に気付くことになる。
「【模倣】出来ない!?」
「ふーん、【模倣】ね。おそらく、そのスキルの発動条件はスキルの名前とそのスキルを実際に見ること。試験のモニターで見ていたんだろうけど、とんだ失策だねー」
(この一瞬で私の【模倣】の条件がバレた!)
真那華はその一瞬で須藤のスキル【模倣】を分析してしまう。
「面白いスキルだけど、タネが分かったらつまらないね。そんな簡単に自分から手の内を晒すと思ったなら残念おあいにくさま~⭐︎」
真那華の煽りは止まる事を知らない。
「そんな事を言ってられるのも今のうちですよ。見ていたのはそれだけではありません【模倣】、【従魔剣】」
須藤の周りに四本の朱色の剣が舞う。
「あー、それをコピーしちゃうかー、悪い事は言わないからやめた方がいいよ。凡人が扱えるような代物じゃないから」
「舐めるなと言ってます。これくらい!?うぅ・・・・・・」
須藤が頭を抑えて苦しみ、浮いた剣が荒ぶっている。
(何コレ、剣を操作しようとすると頭が・・・)
「まったく言わんこっちゃないね。そのスキルは操作する本数が増えれば増えるほど脳への負荷が大きい、ある意味欠陥スキルだから止めたのに、ウチですら三本が限界だからね」
「ハァハァ、今三本といいました?試験では四本操ってましたよね!」
確かに真那華は試験で四本の【従魔剣】を操っていたのである。
「確かに三本が限界だったけど、ウチのスキルで可能にしちゃった♡」
真那華は可愛く言っているがやってる事はまったく可愛くなかった。
「ウチのスキル【外付けの頭脳】は脳で行う演算処理を魔力で出来た外付けの脳で行う事が出来るんだよねー♪。まぁ、それさえも使いこなせるのは天才であるウチしかいないってこーと」
真那華は【技能研究】のスキルで【高速演算】と魔力の一部と引き換えに【外付けの頭脳】を生み出し【従魔剣】を操作する時の脳への負荷を軽減した。
「いかれてます、いかれてますよ。あなた達・・・・・・」
実際に【空間支配】を会得した承は元より真那華も別な意味でいかれている。
「さて、また振り出しに戻っちゃったねー。ねぇ、降参?降参しないの?」
「仕方ありません。別に【模倣】が私の全てではありません」
「そう、それならウチも見せちゃおっかなー、最強の一端を【縮地】」
一瞬でギャラリー達は何が起きたか分からなかった。
気付いたら、須藤が演習場の壁に激突している。
目で追える速さではない、それは正に光速のごとき速さだった。
反応するより速い速度の攻撃はかなり極めた【感知】でなければ防ぐのすら難しい。
「ギリギリ止めたねー、やるじゃん」
須藤はギリギリで真那華の斬撃を受け止めたが、その威力は受け止めきれなかった。
(【感知】で反応出来なかったら防げなかった。腹が立ちますが強過ぎますね)
須藤は今の一撃で勝てない事を理解した。
「降参です。私の負けを認め・・・・・・」
「違うでしょ。猿以下の頭じゃ覚えてないかな?土下座してーどうするんだっけ?」
真那華は例の罰ゲームを須藤に実行させようと煽る。
「く、屈辱、猿以下の分際で逆らって申し訳ありませんでした」
須藤は屈辱で顔を歪めながら真那華に土下座する。
「真那華様は?」
「くぅっ、一体どこまで私を辱めれば・・・・・・」
「まぁ、これくらいで勘弁してあげよ。コレに懲りたら喧嘩を売る相手くらい選ばないとねー⭐︎やっぱりウチって天才で最強だよね♪」
真那華は須藤を煽り倒すとその一部始終を見て撮影していたギャラリー達が訳の分からない小娘にS級が負けた動画をSNSにアップしていた。
そして、その動画は真那華の伝説と波乱の幕開けとなったのだった。




