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クソガキダンジョン奔走記  作者: 酒粕小僧
チームD-アニマルズ結成

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バフ系アイドルはご立腹

 先遣隊が戻らない原因を解明し、もし生存していたら先遣隊を保護し帰還を優先しその後、先遣隊に代わりダンジョン内の調査を行い、可能ならばボスを討伐する。


 これが今回、急遽組まれた即席パーティの任務の内容だった。


 そのパーティのメンバーは新幹線で東京まで移動していた。


「へぇ、あの時の優男もいるんだ。あの怪物・・・・・・『禍津』を倒した腕前を拝見させてもらうよ」


 パーティのアタッカーである殲滅者(エクスターミネーター)の黒鉄燐が承の存在に気付く。


「まったく、燐は病み上がりなんですから無理はしないで下さいよ。」


 パーティのサポート兼ヒーラーの救護者(レスキュー)の須藤佳奈は病み上がりの燐を嗜める。


「お手柔らかにして欲しいんだが、もう一人は既に現地入りだったな」


 パーティのサポートの荷物持ち(キャリー)の承は空間を開き荷物のチェックをしている。


「一つ気になったんだけど、なんでこの人荷物持ちなの?強いんじゃないの?」


「あんた、守秘義務の書類書いたの忘れてないか?」


『禍津』を倒したのは確かに承ではあるが、S級でも倒せなかった怪物をC級が倒したらS級の立場が揺らぎかねないので、その場で承をS級にする案も出たが、流石にそこまで特別扱いすると他のA級に示しが付かない為、昇級はA級に止め承の名前を出さず曖昧にして忘れてもらおうという事になったが、SNSや掲示板では噂が一人歩きしている状態になっている。


 だから、その場にいた全員が守秘義務に関する書類を書かされ、燐も同様に書いているのである。


「別にやってもいいんだが、俺が原因で管理局に迷惑をかけるのは、俺の本意じゃないからな」


 承は本当にパーティが危なくなったら使うつもりだが、自分が原因で管理局に迷惑をかけたくないのである。


「ふーん、なら僕も君の手を煩わせないように努力しよう。でも、これで借りは返せるとは思ってないから、なんたって君は僕にとっての命の恩人だからね」


「そういえば、【分身】を失ったと言ってましたが大丈夫なんですか?」


 燐は須藤に大まかな事情を話してるので【分身】を失った事は知っている。


「それ以上に使い勝手のいいスキルに変化したから問題ないよ」


「スキルが変化?」


「うん、僕もこんな事初めてでさ」


(確か、承さんの妹が話してたのもスキルの変化について話してた気がしますが・・・承さんが反応しないという事は違うかもしれませんね)


(俺がいう事でもないし、知らない方がいいならその方がいい)


 承は真那華ほど、口は軽くないので思わず言ってしまう事はないのだ。


「それで、先に東京に行ってるのって、誰だっけ?」


「燐は興味のない事は本当に聞いてませんよね。カナカナチャンネルで有名なバフ系アイドル配信者こと源奏ですよ」


 カナカナチャンネルの配信者源奏はバフ系の固有スキル【応援(エール)】を扱うチアガールの型であるヒーラーである。


 源奏は【応援(エール)】を扱うがそれ以外は回復しか出来ないので役割がヒーラーになっている。


 源奏は番組の収録の為、東京にいたのでそのまま八王子で落ち合う事となった。


「ああ、だからジョージさん、あんなに恨めしそうな視線を俺に送っていたんだな」


 ジョージこと管理局雑務課課長の南場穣治はカナカナチャンネルのカナカナちゃんの熱狂的なファンである。


 そなためか、前日からジョージの恨めしそうな目が承に向けられていた。


 ジョージは遅くとも前日の時点でパーティメンバーを知った為、カナカナちゃんに会える承を恨めしそうに見ていたのだ。


「南場課長は管理局内では、知らない人がいないくらいのカナカナファンですからね」


「悪い人ではないんだが、カナカナちゃんが絡むとな。本当、困った人だ。サインは持ってるのは確認してるから、何とかジョージさんが喜びそうなものを貰えないか、そのカナカナちゃんという奴に相談しよう。真那華には、甘いお菓子でも買っていくか」


 承はジョージに何かカナカナちゃんにまつわるものをお土産にすれば機嫌が直ると思っている。


「僕も潤ちゃんにお土産買って行きたいけど、潤ちゃんお菓子とか食べないから何買えばいいか分からないんだよね」


 潤はお菓子やジュース、ジャンクフード、脂っこいものは基本的に食べないので、食べ物に絞るとほとんど限定されてしまう。


「もう仕事終わった気でいませんか?油断は禁物ですからね!」


 須藤は既にお土産の話をしてる二人を注意して、約二時間東京に到着、中央線に乗り換え八王子駅まで、駅前まで出ると東京の管理局員と一緒にツインテールのピンク髪の少女が腰掛けていた。


 彼女こそジョージを沼へと引き摺り込んだバフ系アイドル配信者カナカナちゃんこと、源奏である。


「長旅お疲れ様ー。奏がカナカナチャンネルで配信者やってる源奏だよ」


 元気一杯に三人を出迎えたのはカナカナちゃんこと源奏である。


「僕は・・・・・・」


「黒鉄燐でしょ。知ってるよ。日本最強のS級だった人だよね」


「ッ!!」


 奏が過去形で話す理由は燐が敗れた『禍津』を倒した存在がいるからである。


 燐は痛い所を突かれて黙り込んでしまう。


「えっと、私は・・・・・・」


「須藤佳奈管理官でしょ。知ってるよ。新人の潜行者に負けたS級ってSNSで見たよ」


「うぐぅ・・・・・・」


 須藤も痛いところを突かれて黙り込んでしまう。


「えっと、あなたは・・・・・・?!」


 奏は承を一瞬見て驚く。


「・・・・・・えっ!?本当、誰!?有名な潜行者は逐一チェックしてるはずなんだけどあなた何級なの?」


 承は資格証を見せる。


「A級・・・・・・嘘でしょ!A級ならそれなりに実績があるから、顔と名前で分かるはずなんだけど」


 奏は慌ててスマホをいじりだす。


 ネット上には非公式でやっている国内でA級以上の資格証を持つ者の一覧が記載されてるサイトがある。


 奏はそれを開いたのだ。


「最近、A級になったばかりだからな」


 承の言ってる事は確かに事実だが、承の実績を知る者はあの時関わった管理官達と燐くらいしか事の顛末を知らないので、ネットの掲示板に乗ってはいないのである。


「それでも、A級になったきっかけくらいはあるはずでしょ。・・・・・・あなた、本当にA級?偽造してない?」


 流石の奏も偽造を疑うしかなかった。


「奏さん、いくらなんでもそれは失礼ですよ。奏さんがいくらやってもC級でB級になれなくて僻んでると思われてもいいんですか?」


「うぐぐぐ・・・・・・大丈夫だもん。この任務を完了出来ればすぐにでもB級になれるもん」


 須藤はここぞとばかりに反撃する。


「まぁ、ネットだって万能じゃないって事だね」


 燐も一緒になって反撃する。


「盛り上がってる所悪いんだが、自己紹介をさせてくれ」


「盛り上がってないから!」


 奏はムキになりツッコミをする。


「もう、本当にいい加減にして欲しい。一番ムカつくのはあのマナっていう配信者、なんなのアイツ、『グラフェンナーワル』のレイピアを抽選で配布という馬鹿げた企画に奏のリスナーもそっちに流れて行っちゃって、勢い任せのヤラせだろうと思ったけど、今度は百本に増えてる上に凄腕の鍛治職人の友人までいる。ふざけんじゃないわよ。奏なんてろくに友達もいないのに!SNSで愚痴ったら、「お前もやればいいじゃんwww」とか、「やらない癖に文句いうな」とか!ふざけんじゃないって!奏がヒーラーなの分かってんのかって!」


 奏は真那華への不満をグチグチと語る。


「でも、ファンはいるんだろ?アイドルなんだから」


 ジョージが熱狂的なのでファンはかなりいるんだろうと承は予想していた。


「そうね。奏は歌って踊ってバフもかけれるバフ系アイドルだから。・・・・・・でも、視聴者の性別と年齢層調べるとほとんど四十代以上の男性が大半をしめてるってどういう事って思うわけよ」


「俺の知り合いにもファンがいるが確かに四十代だな」


 承はジョージの事を話す。


「奏のファンだった若い子達はほとんど、マナとかいうメスガキに流れて行っちゃたんだ。どう見ても小学生だし。そもそもどうやって資格取ったし、もうアイツのせいで順風満帆だった奏の配信者ライフは音をたてて崩れ去ったわ」


 そう語る奏の声は段々と弱々しくなっていった。


「・・・・・・なんか、申し訳ないな」


「なんで、あなたが謝るの?」


「だってその、マナって奴さ。俺の妹なんだ」


「・・・・・・は?」


 奏の思考が一瞬フリーズした。


「はぁ!?・・・・・・本当にアイツのお兄さん!?」


「ああ、俺は宗像承、あいつの兄だ」


 ここでやっと承は自己紹介をする。


「あいつのお兄さんなら知ってるでしょ。あいつの弱点!」


「それを聞いてどうする気だ?」


「配信のネタにするのよ!奏をコケにしたツケは払ってもらわなくちゃ」


 単なるマナへの逆恨みで奏はおかしくなっていた。


「確か結構昔にモンブラン怖いと言っていたな」


(そのネタは・・・・・・流石に)


(今の若い子には分からないでしょうね)


 燐はギルドの仲間から聞かされていたので、その元ネタを知っており、須藤は祖父の影響で知っている。


「モンブランが怖いのね。フフ、いい事を聞いた。これでマナをギャフンと言わせられるわ」


(やっぱり、知らないよね。それ分かんないのに今どきギャフンとかは分かるんだ)


(実際に言う人いるんですかね)


 二人は奏に半ば呆れつつも反応を面白そうに見ていた。


 ダンジョンまで車で移動し、その中でも奏は真那華への不満をギャーギャー喚いていたのであった。


 市街地から少し離れた位置にあるこのダンジョンは誰も近付かないように交代で管理局員の警備が監視をしている。


 承達は早速、ダンジョンに入るとそこは森ではあるが日が少し差し込む薄暗いダンジョンで、近くには川も流れている。


「先遣隊が戻らないと言うからには、変わったダンジョンなのかと思ったけど案外普通だね」


 燐は辺りを見回すがおかしい所は何もなかった。


「燐、油断は禁物ですよ。」


 周囲を警戒する須藤は燐を注意する。


「それは前回で痛いくらいに学ばせてもらったよ」


 燐は『禍津』との件について話す。


「でもさ、流石にこれはおかしくないかな?」


 燐は何かの違和感に気付く。


「ふーん、奏には分からないかな」


 奏は一番後ろで気楽そうに返事をする。


「確かにこれはおかしいです。あまりにも静か過ぎます」


 燐と須藤が気付いたその違和感とは、他のダンジョンなら怪物ととっくに遭遇していてもおかしくない状況なのに、怪物が現れないどころか見当たらないのだ。


(・・・・・・この感じ、もしそうなら先遣隊が戻って来ないのも頷ける)


 承はこの状況に嫌というほど覚えがある。


「ちょっといいか」


 承が話そうとしたその時だった。


「「「!?」」」


 承達のパーティの周囲から全身毛で覆われた獣のような人型の怪物が現れたのだ。


 その刹那の一瞬で承と燐以外は全滅する奇襲が発生したのである。


「こいつらいつの間に」


 燐は人型の獣が持つ短剣をギリギリで受け止めていた。


「え?今、首が・・・」


 須藤は自分の首が斬られたビジョンが見えていた。


「・・・・・・」


 奏も死んだと思っていたが何故か助かった。


 二人の背後から迫って来た脅威が一瞬で消えたのだ。


 それは承が自分に襲いかかる獣を蹴りで塵にしながら、両手からミスリル球を人型の獣に放ったからだ。


 そして、燐に襲いかかって来た人型の獣も承が処分する。


「い、今の一瞬で何が起きたの?」


 燐も一瞬の出来事で何が起きたか分からなかった。


「話しは後だ。とりあえず早く撤退するぞ」


 承はその場に残るのは危険と判断し、撤退を提案する。


「ちょっと、勝手に決めないでよ!」


 この任務には昇級が掛かってる為、奏は反対する。


「いや、これは承君の判断が正しい。それに、助けてもらった恩人にその口の聞き方はないんじゃないかな?」


 燐は今の一瞬で承が二人を助けた事をギリギリ認識していた。


「そうですね。一旦この場を離れ何が起きたのか整理した後、作戦を立て直して入りましょう」


 須藤も二人の意見に賛成した。


「うぐぐ、分かったわよ」


 奏は納得出来ない様子ではあったが、多数決に従い撤退することにした。


 そして、管理局が用意した宿泊施設で話し合いが行われようとしていた。

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