第二・第四土曜の伝説
真那華は学校が始まり忙しかったので配信が出来なかったので久々の配信をした。
「みんな、おっひさー、SNSは更新してたんだけど、学校が始まってバタバタしてて投稿遅くなってごめんねー」
『『グラフェンナーワル』は?』
『抽選の件どうなった』
『俺達を弄んだんだな!』
『もう戻って来ないと思った』
コメント欄は失踪の心配より、剣の抽選配布の心配ばかりのコメントで溢れた。
「みんな、『グラフェンナーワル』好きなんだねぇ。ウチ嫉妬しちゃうなぁ♡でも安心して、この通りお詫びに『グラフェンナーワル』の精錬済みのツノ百本用意したからさ」
真那華は百本のツノの束をリスナーに見せる。
『百本!?!?』
『え?増えてない!?』
『しかも、精錬って事はもっと狩っとる!!』
『待って、『グラフェンナーワル』のツノってこんな純白だったか?』
あまりの予想外の展開にリスナー達は困惑を通り越して混乱している。
「良い質問だね。素材によっては純度が上がれば上がる程、素材の色が変わるものがあるんだよぉ♪」
『今、調べたら十本くらい使ってやっと白くなるらしい』
『おい、さっき『グラフェンナーワル』のツノ何本って言ってた』
『百って、少なくとも千は狩ってるううう!!』
『このクソガキ、いきなりぶっ込んで来やがったな』
『クソ、分かってた。このクソガキは俺達の期待を裏切らないって分かっていたのに、まだマナ様への理解度が足りないらしい』
『このクソガキを侮った自分が恥ずかしい』
コメント欄は驚く者、後悔する者、喜ぶ者で溢れた。
「それでね。このツノでレイピアをとある凄腕の職人さんに作ってもらう事にしたから待ってて欲しいな⭐︎」
真那華はウィンクする。
『凄腕の職人ってまさか、管理局工房エリアに第二、第四の土曜に現れるという伝説の』
『え!?そんな凄腕に作ってもらえるの!?』
『俺、噂程度しか知らないんだけどそんなに凄いのか?』
『凄いなんてもんじゃない。別次元だ』
コメントは凄腕の鍛治職人の話題で溢れる。
「という訳で本人の登場でーす」
「まったく、出てあげるとは言ったけど紹介適当じゃない!?」
真那華の動画に凄腕鍛治職人こと東城寺聖蘭が登場する。
聖蘭は試験を受けに行ったが今までの試験官が龍次に買収された不正が明らかになったためクビになり元々、合格の判定だったので試験は形式的なものとなり、その腕を見込まれD級で合格している。
「は、初めまして、マナの友人の鍛治職人セイラよ。今回は、マナとD級ダンジョン『石蜘蛛洞窟』を攻略するわ」
聖蘭はテンパりながらも挨拶を済ませる。
『え!?マジで本人!?』
『作業中はゴーグルして髪束ねてバンダナしてるから分からないな』
『でも、声はそうっぽいんだよな』
『そもそもマナ様の友達ということは学生さんみたいだね』
『この前、新調した槍以前と比べだいぶ使いやすいです』
「うんうん、掴みはバッチリ。凄腕鍛治職人セイラちゃんは大人気みたいだね♪でも、今回はダンジョン探索兼素材回収、目的は『膠灰蜘蛛』のセメントとミスリルだね。あれば耐火粘土も欲しいよね」
真那華は明らかに防具で使わない素材を羅列する。
ちなみに真那華の言ってるセメントとは正確には『粘膠灰』というダンジョン産のセメントであり、ダンジョンの砂や砂利があればダンジョン産のモルタルやコンクリートも作れる。。
『素材が武器とか防具で使う素材じゃないんだが』
『何を作る気だ!』
『ピザ釜でも作る気か!』
「惜しい、正解はーーーどぞ」
「鍛治炉よ。ハンマーだけじゃなく鍛治炉もダンジョン素材に変えたらどうなるか実験したいから即席のものを作るために必要ってところね」
真那華が答えを聖蘭にパスし答えを言う。
『ダンジョン素材の鍛治炉だと!』
『そもそもダンジョン素材に変えて意味あるのか?』
『そういや、セイラちゃんのハンマーの素材がこの前、工房エリアで見た時、ミーティアライト製だった気が』
「情報が遅いわね。今はドラゴライトよ」
聖蘭はハンマーを映しながら答える。
『ドラゴライト・・・・・・だと!?』
『ドラゴライトをハンマーに勿体ねー!!』
『マジかよ!正気か!』
あまりの希少素材をハンマーに使ってリスナー達は動揺している。
「私のスキルは【鍛治職人】のスキルと違って、素材にあった道具じゃないと失敗しやすくなるみたいなの。でも、これでようやく『グラフェンナーワル』の剣を打てるようになったわ」
四大家会議の結果【錬成鍛治】については情報を一部秘匿する事となって多くは語れないのでこういう説明になっている。
『今の話しで鍛治炉の話しが理解出来た』
『強い武器を作るには道具も新調しないといけないのか』
『俺達の『グラフェンナーワル』の為にありがとう』
『何度も言うが『グラフェンナーワル』は害悪エネミーなんだが』
「皆んなも喜んでるようだし早速狩りに行こう。ちなみに今回ウチはよほど危なくならない限り実況に回るよー」
「ちょっ不穏な事言わないで!」
『フラグを立てて草』
『フラグでしかない』
「大丈夫、セイラちゃんは猟犬だから獲物がいれば簡単に狩り尽くすでしょ」
「猟犬じゃないから!」
聖蘭がツッコミをすると後ろから『膠灰蜘蛛』が襲いかかる寸前、『フェンリル』で振り向かず撃ち抜く。
『えっ!?』
「本当、油断も隙もないわ。【感知】やっぱ神スキルね」
コメント欄が一瞬止まった。
『ノールックで撃ち抜きやがった。カッケー』
『いや、それにしても何だよ今の銃撃は!』
『光弾撃ってたぞ!』
『ダンジョンで銃が使えるようになったって本当だったんだ』
コメントが流れる中、次々『膠灰蜘蛛』が聖蘭と真那華に襲いかかるが近付く前に倒されている。
『何だよアレ、近付くことすらさせてもらえないって』
『よく見ると全て頭撃ち抜いて仕留めてるんだが』
『というか後ろから襲って来ても振り向きもしないんだな』
『たぶん、【感知】を使って全て撃ち抜いてるんだ。神スキルとか言ってたし』
『はぁ!?銃と滅茶苦茶相性いいじゃん』
「また、腕上げたねー。ウチに黙ってダンジョン潜ってるでしょ」
「さぁ、それはどうかしらね。それに、今まで襲って来たのってまだ幼虫でしょ。取るに足らないわ。本命は成虫でしょ」
「お、話しをしてれば」
目の前に今まで襲いかかって来た幼虫の『膠灰蜘蛛』より遥かに大きい成虫の『膠灰蜘蛛』がいた。
「やっと、セメントが出て来たわ」
『発言が既にマナ様の友達』
『マナ様も怪物を素材扱いだからなぁ』
『もう素材になるのが確定してる言い方なんだよ』
「手はいりそう?」
「いらないわ。ここのボスまで温存してなさい」
「みんな、ここから猟犬の本領が発揮されるよぅ」
「だから、猟犬じゃない!」
聖蘭がツッコミを入れるとほぼ同時に『膠灰蜘蛛』はセメント球を撃って来るが、聖蘭に撃ち抜かれる。
「人が喋ってんでしょうが!セメントの分際で調子に乗ってんじゃないわ!」
『この人、第二、第四の土曜日に管理局工房エリアに現れる凄腕の鍛治職人と同一人物なんだよね。』
『銃握ると性格が変わるんだよ』
『目つきが完全に狩人なんだよな』
『マナ様が猟犬って言うの分かる気がする』
聖蘭と『膠灰蜘蛛』は互いに撃ち合っている。
「これをされると時間の無駄ね【万物貫通】」
その一撃は『膠灰蜘蛛』が放つセメント弾と一緒に『膠灰蜘蛛』の胴体ごと貫く。
これが『フェンリル』の二つ目の機能、『万物貫通』、消滅の光線が届く射程の直線上にある物質を全て貫通する光線を放つ機能である。
その一撃で『膠灰蜘蛛』は倒れる。
『はぁ!?』
『あの銃強過ぎじゃね』
『流石に何か制限があるはずじゃなきゃ強過ぎる』
「今のモードの制限?一発撃つと十秒くらいは撃てなくなるのとエネルギーの消耗が多いくらいかしら」
聖蘭はここである嘘をついている。撃てなくなるのは『万物貫通』のモードであって通常モードは普通に撃てる。
『それでも、強過ぎるだろ』
『その銃って何を撃ってるの?』
「魔力の弾ね。だから、銃弾みたいに弾を交換しなくてもいいから楽だけど魔力切れたら回復しないと使えなくなるかな。まぁ、ダンジョン内は魔力で満ちてるからそうそう切れる事はないけど」
聖蘭は無属性の事は当然隠しながら話す。
無属性は本来あってはならない属性だからである。
「あ、ちなみにこれと同じようなタイプの銃は作れるけど素材は自前で用意してね。必須素材が大変だから」
聖蘭は魔填銃のオーダーがなるべく来ないように製造する上の警告をしておこうと思った。
『それって何なの?』
「最高純度の『蓄電結晶』、『魔龍玉』、高純度以上の『星核』これだけは外せない素材だから作って欲しい人は頑張って」
『それマジで言ってる!?』
『『蓄電結晶』と『星核』は分かるけど『魔龍玉』って何?』
『それだけ分からんのだが』
「『龍脊椎』と高純度以上のミスリル等の魔鉱を【錬金術】の合成で作れる素材ね」
聖蘭はこのタイプの銃を作るのがいかに難しいか教える為にあえて教えている。
「セイラちゃん、意外とノリノリでウチも嬉しいけどウチのチャンネルで宣伝しないでね」
「注意喚起だから!!」
聖蘭は自分でこれらの素材をやりたくないから注意喚起していたのだ。
『マナ様、今の事実ですか?』
『マナ様ならワンチャン』
『『龍脊椎』について調べたら伝説級の代物だった件』
「うん、それは事実だし『龍脊椎』が確実に欲しいなら龍を倒すしかないかなぁ。龍の死骸を探して見つけるのはそれこそ伝説級だからね」
マナはリスナー達に厳しい現実を突きつける。
『え?』
『まさか、龍と戦った事あるの?』
『マナ様の友達が持ってる銃が答えになってない?』
「まさか、あるわけないじゃない。竜じゃなく龍だよ。かなり運が良かっただけだよぅ」
真那華は実際に龍に挑んだ事があるが、そもそも自然現象の化身である龍相手に勝負にすらならないのだ。
何故なら物理にしても魔法にしても攻撃が効いてる気がしないのである。
龍にダメージを与えるには【闘気】の極限スキル【神気】での攻撃もしくは、極限スキルを使った攻撃しか効果がない。
それを知ってるのは、承が真那華が喧嘩を売った龍を【神気】を使って倒してしまったからである。
その時、運良く消滅せずに済んだのが聖蘭の『フェンリル』に使った『龍脊椎』である。
真那華は何とか誤魔化しつつ、聖蘭と先に進む。
『マナ様は強いのは知ってるけど、セイラちゃんもヤバくない?』
『そもそも、獲物を狩ってる時の目つきがヤバい。完全に狩る側の目』
『これで、D級?実績がないにしろA級クラスの実力はあるだろ』
『そもそも、『膠灰蜘蛛』って強いの?』
『強いというよりウザい部類、セイラちゃんが全ての『膠灰蜘蛛』とセメント球を全て撃ち抜いてるから分からないだろうけど、アイツらセメント球で相手の動きを奪って集団で襲ってくるんだ』
『実際、一匹一匹は弱いけど集まって来られるからウザいんだ。それとキモいし』
『でも、セイラちゃんがサーチアンドデストロイの猟犬だからそれが分からなくなってるだけ、銃があるから、いや、セイラちゃん達だから出来る芸当』
既にリスナー達にセイラは猟犬という認識が浸透してきている。
「チームのエンブレムに猟犬のモチーフ入れないとね」
「私が猟犬なら、貴女は猿ね」
「うん、いいよ。お猿さん可愛いし」
二人はチームのエンブレムの構想の話しをする。
『マナ様がお猿さん好きで俺達も嬉しい』
『そういえば、潜行者を育成してる学校はダンジョン攻略の部活は作れないからチームで管理してるんだっけ?』
『え?なんで、部活作れないの?』
『昔は部活だったんだよ。でも、ダンジョン攻略の部活が乱立したから、今の形を取ったらしい』
『でも、チームって潜行者資格持ってるメンバーが最低三人は必要だったはず』
「そうだよー、でもウチのお眼鏡にかなうのがセイラちゃんを除くと一人しかいなくてさ、目を付けてるんだけどなかなか捕まらなくて」
真那華は何度か隣のクラスに行ってるが、まったく会えていない。
「だから、この話しは一旦保留かなぁ」
真那華と聖蘭はボス部屋の前まで辿りついた。
「みんな、待ちに待ったボス戦だよー」
『ここのダンジョンのボスがレアエネミーで出る条件ってなんだっけ?』
『蜘蛛の卵を十個以上破壊だった気が』
『まぁ、セイラちゃんは向かって来る敵は迎撃してただけだから天井にある卵なんて』
リスナー達にはセイラが蜘蛛の卵を破壊してるようには見えなかった。
「じゃあ、ボスに挑戦するよー」
二人がボス部屋に入ると真上に『膠灰蜘蛛』の成虫を更に大きくし更に醜悪な見た目の『女王膠灰蜘蛛』が蠢いていた。
『え?』
『なんでだよ!』
『卵は破壊してないはずだろ?』
『何となく分かったかも』
『あ、俺も』
『どういう事だ?』
『マナ様、やけに静かじゃなかったか?』
『ま、まさか!?』
リスナー達はこのレアエネミーの元凶を察する。
「勘のいいお猿さんは大好きだよ。セメント取るならこっちの方が効率いいからついね。テヘペロ」
『こいつやりやがった!』
『テヘペロじゃねえ!!』
『やってる事が可愛くねーんだよ!』
『そんなヤバいのここのレアボス』
『ヤバいというより面倒』
『ボスを倒すまで『膠灰蜘蛛』の幼虫と成虫が無限沸きする面倒なボスだ。ボス単体ならそこまで強くない』
『だから、セメント集めに効率が良いって言ったのか!』
『素材回収する余裕ないだろ!』
「うんうん、みんな盛り上がって来たね。それじゃ、ボス攻略始めちゃおっか」
コメント欄が騒然とする中、真那華と聖蘭はボス戦を開始する。




