第6話 誰も信じない
あんな言い方をされては、
村井さんはもちろん、
誰だって続くはずがない。
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あの人を、
指導者にしてはいけない。
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そう思った私は、
師長に相談することにした。
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「師長、相沢さんのことで相談があります」
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「なんだい」
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師長は椅子を指した。
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「立っているのもなんだから、座りなさい」
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「失礼します」
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私は椅子に座った。
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「実は、村井さんが休職したのは、相沢さんの過度な指導が原因だと思っています」
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「うん」
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「このままだと、私もあの人の指導では続けていく自信がありません」
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師長は少し考えるように黙った。
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「なるほど」
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「それで、神谷君はどうしたいんだい?」
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「えっ……」
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言葉に詰まる。
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「どうしたいと言われても……」
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「相沢さんに、もう少し指導の仕方を考えてもらえたらと……」
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「それで、相沢さんは変わるのかな」
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私は答えられなかった。
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師長は、静かな声で続けた。
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「もちろん、話はできる」
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「新人には厳しすぎるから、もう少し柔らかく指導してほしいとね」
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「でも、相沢さんは信念を持ってやっていると思うんだ」
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「多少厳しくても、患者に危険が及ばないように」
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「間違った看護をしないように」
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「そのために必死なんだと思う」
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私は何も言えなかった。
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「相沢さんが来てから、この病棟の患者トラブルは半分以下になった」
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「それは評価しなければいけない」
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「今回、村井さんへの指導が厳しかったことは、白石さんから聞いている」
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「でもね、医療の現場は優しいだけではやっていけないんだよ」
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「相沢さんみたいに、リーダーシップを取れる人間も必要なんだ」
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私は思わず言った。
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「それなら、白石さんがいます」
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師長は少し笑った。
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「そうだね」
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「白石さんなら、病棟をまとめることはできるかもしれない」
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「でも、病院全体を動かすには限界がある」
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「それは、経験した人にしか分からないかもしれない」
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「とにかく、指導については相沢さんに話しておく」
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「でも、仕事上のミスがない以上、この件で大きく動くことはできない」
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「……分かりました」
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「指導の件だけでも、お願いします」
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それだけ言って、
私は師長室を出た。
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ダメだ。
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師長は完全に相沢側だった。
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何を言っても、
変わることはない。
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他の職員も、
相沢を信頼している。
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何かあれば、
まず相沢に聞く。
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それが当たり前になっていた。
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これから、
どうしたらいいんだろう。
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そのときだった。
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詰所の奥から、
視線を感じた。
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相沢が、
こちらを見ていた。
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何も言わない。
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ただ、
笑っていた。
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「誰にも信じてもらえないとき、人は一番苦しくなります。」




