2.おかしい相棒
「じゃあ改めて自己紹介するけど私の名前はエイラ。これからよろしくね」
店から出るとさっきまでいたビジネスマンを初めとした魑魅魍魎とでも言いたい自称天使たちは気がつくとどっかに行っており俺とこのエイラだけが残されていた。
「だからな、俺はそんな試練なんて受けたくないんだよ。やりたければ他の誰かに頼め」
「そんな、陽介さん私に『辛いことも多いだろうけれど俺と一緒に頑張ろうぜ』って言ってくれたじゃない」
言ってねぇよ。
それどころか俺の名前もまだ言ってないのに何で知ってんだ。
こいつら今までつけ回してたストーカーかなんかじゃないのかと思ってしまうこの俺、三上陽介(二十一歳・大学生・彼女なし)である。
しかし本当に気味が悪い。
とっとと退散すべきであるな。
となればどのタイミングで全力ダッシュをかませば逃げられるかを考えよう。
こいつの足の速さはわからんが俺も少しは走る自信がある。
いい具合に不意を突けば逃げられるか。
そもそも走ってどこに行くべきか。
家に逃げるべきか、それとも適当にストーカー容疑でもでっち上げて交番にでも駆け込むべきか。
そんなことを思っているとエイラがスカートのポケットから何か取り出した。
……ボタンの付いた箱?
そうとしか思えないよくわからないものが彼女の手の上に乗っていた。
「ねえ、押してみて」
これを押せと?
よくわからないが目の前のボタンを押してみた。
押した直後、俺の背後から襲いかかってきた熱風と轟音。
爆発音だ。聞けば分かる。
嫌な予感がして振り返ると路肩に止めてあった車の一台が爆発して炎上していた。
黒い煙と炎が車から出ている。
どうやら中に人はいなかったようだが……。
しかし周りにいた通行人も爆発音を聞きつけて集まってはパニックになっている。
「いやー、派手に吹っ飛びましたね」
お前の仕業かぁぁぁぁぁ!
「こんな押しにくいボタンもさらっと押してくれるなんて。陽介も結構怖いもの知らずだよね」
こいつ最悪だ!
つまり俺も共犯だと言いたいんだな、そうなんだな!
「でさー、もう一つボタンがあるんだけどこれも押してみる?」
誰が押すか!
「まあそうだよね。これ押したら陽介の家が大変なことになっちゃうもんね」
最低の脅迫ありがとう。
つまりどうしてもその試練を受けろと言うんだなお前は。
「そういうこと、そんなことでよろしく」
何も言う気にならんわ。
もうどうにでもなれってちきしょう。
と、そんなやりとりをしているうちに車の爆発を聞きつけた人がだんだんと集まってきた。
さすがにここに留まっているのはよろしくないか。
「そうだね、じゃあ早速試練受けにいこうか」
こうして炎上する車と野次馬を後目に俺たちはその場を後にするのであった。
ていうか本当だったら後にしたらまずいよな。
まあ多分証拠は残ってないし。(外道)




